T.こどもの発達を考えるわけ
こどもに1mmの目もりを読むことを指導しようとする場合に、こどもの目が1mmの間隔のある2本の線を識別することができる程度に発育していなければ、どんなに指導に骨をおってみたところで、骨おり損に終わる。指導してみたいと思う事がらも、指導の方法もすべて、それを受け入れる側のこどもの発育の程度を基礎にして、その上に築かれなければ意味のないことになる。理科の指導や学習について考えるにあたって、第一に取り上げなければならない問題として、こどもの発達ということがある。まず、この問題のもつ意味について、もう少し考えてみよう。
1.こどもを理解するために
(1)こどものどんなことを理解するか
こどもは、その内にあるいろいろのものが密接な関連をもった全体として 発達していくものであるが、これを研究する場合には一応分析して考えてみることも必要である。ここでは、次のように分けて考えてみよう。
A.身体の発達を理解する
たとえば、筋肉は年齢が進むに従って、どのように発達していくものであるかがわかれば、年齢に応じて、実験や作業の適切なものを選ぶことができる。
また、持久力の発達の程度が理解できれば、継続的な実験観察は、どのくらいの期間が適当であるかを決めるのにも役だつ。このように、身体的の発達の程度を理解していることによって、無理のない指導をすることができる。
B.社会性の発達を理解する
たとえば、グループは、どのくらいの人数で、どのように扱ったらよいかを考える場合、集団的組織的な行動についての発達の程度を理解していることが必要であろう。
また、性的に違った行動が現れてくる時期や程度がわかれば、男女による興味や関心に応じて、適切な指導ができる。
C.情緒の発達を理解する
たとえば生物に対しての愛情がどのように発達するかがわかれば、どの年齢の時期に、どんなものをどんな方法で飼育するようにしむけたらよいかがわかる。
また、身体的な直接経験に興味をもつか、あるいは抽象的な思考に対して興味をもつかがわかれば、それに応じた指導ができる。
D.知的発達を理解する
たとえば、客観的に考察できる発達の程度とか、推論する能力や抽象作用の発達の程度など、知的の発達の程度を理解すれば、こどもの持っている能力をじゅうぶんに発揮させるこ
とができるし、こどもの能力以上のものを要求して、興味を失わせることもなくなる。
このように、こどもを理解することがもとになって、こどもの能力をいっそう伸ばし、理解を深め、好ましい科学的態度を養うことができるようになる。
(2)どうすれば、こどもを理解できるか
まず第一に、これまで研究された資料などにより、こどもの成長発達の一般的な傾向を、おおまかに知ることである。
こどもの心理的傾向を、身体的な発達の段階・社会的発達の段階・情緒的な発達の段階・知的な発達の段階に分けて、これらの各面から見て、年齢とともに、どのように発達していくのかのだいたいの傾向をつかむことが大切である。
次にだいたいの傾向をつかんだ上で、これに照らし合わせて、個人の発達を考え、受持ちのこどもひとりひとりについて観察を進めて、そのこどもの個性を理解することである。
それには、いろいろな評価の方法がとられるが、このひとりひとりの観察から得た事例の集積が、あるこどもの個性の理解に役立つのである。またそれによって、その学級の傾向もつかむことができるから、観察の集積をおろそかにしてはならない。
2.学習の効果をあげるために
学習の効果をあげるためには、こどもの意欲や興味の中心を知り、こどもの理解・能力・態度の範囲と程度を知ることが必要である。
(1)興味の中心を知る
興味が強く働いた場合には、学習の意欲もそれに伴うものである。こどもの興味は年齢とともに変わるものであるから、こどもの興味の発達を理解することによって、学習の時の興味の中心がどこにあるかを知る手がかりが得られる。
しかし、ここに注意しなければならないことは、こどもの興味の中心を知るには、教師がこどもと、日ごろ生活をともにして、その観察から得られたものほど大きなものはないということである。 こどもの興味の中心がよくつかめない場合は、教師とこどもが心隔てなく生活していない時に起こることが多い。
(2)学習の範囲と程度を知る
A.理解について
こどもの発達を考えることによって、こどもが現在もっている理解の程度と、到達しうる限度がだいたいわかる。
こどもがある事物現象に対して、現在どの程度に理解しているかがわかることによって、その理解を出発点として、さらにその理解を深める目標がたち、学習の効果があがるように指導を展開することができる。
B.能力について
こどもの能力の発達の程度を理解すれば、その能力を無理なく、じゅうぶんに使って、さらに伸ばすことができるし、能力以上を要求しない結果、こどもは満足感を味わい、学習の興味が長く続いて、学習の効果をあげることができる。
C.態度について
こどもが興味をもち、能力をじゅうぶん使って問題を解決していく過程には、いろいろな科学的な態度が芽ばえている。
この芽ばえを育てるには、この科学的態度が現われた時、それを見のがさないで捕え、それを伸ばしていくことが必要である。このためには、このためには、こどもの発達を理解していることが必要になってくる。
指導の目標(理解・能力・態度)をたてるにあたって、こどもや社会の要求を考慮することはもとより必要なことであるが、こどもの発達に応じてたてられなければならない。
一般的な目標がこうであるからといって、そのままそれをうのみにしたので
は、その学校や学級の指導目標が固定化されて、うまくいくはずがない。
3.効果のある指導法を選ぶために
およそ指導法は、その学級のこどもの経験の程度や、教師の経験の程度に応じて、最も効果のあるものが選ばれなければならないことはいうまでもない。ある学級の指導の方法がたいへんよかったからといって、自分の学級にそっくりそのまま適するとは限らない。
どのような学習活動なり、どのような指導方法なりが、学習の効果を上げるのに適しているかということは、日ごろから自分の受持つこどもの発達を研究しえおいてこそ、初めて判断がつくのである。
学習に対するこどもの興味を持続し、能力に応じた指導をするためには、次の諸点を考慮する必要がある。
(1)どのような学習活動を起させ、また経験させることが効果的か考える。
(2)どのような順序で指導していくことが効果的か考える。
(3)教師が学習を助ける場面と、程度を考える。
(4)どのような時に学習を個別的にしたほうが効果的か、グループにしたほうが効果的かを考える。
U.理科のプログラムに影響する小学校のこどもの発達
こどもの発達は、いろいろな面で常に理科のプログラムに影響を与えている。
次に、身体・社会・情緒・知能の各方面からこどもの発達をながめ、その中で、特に理科のプログラムに影響するものをあげてみる。
1.身体の発達について
A.低 学 年
(1)この期のこどもは元気がよく、活動性が強くて、すわって静かにしていられないで、動きまわり、はねまわる傾向が強い。それで、絵をかくことや、物を作ることなどのような作業的な学習を多く取り入れるとか、動作の多い遊びの形態をとるとかするのがよい。
(2)こどもは、ひとつの活動を長く続けることができないで、すぐあきてくる。それで、適当に休みの時を置いたり、すわったり、立ったりして、活動に変化を多くすることがたいせつである。
また、見ること、聞くこと、書くこと、話すことなど学習活動に変化をつけると、学習が長続きする。
(3)まだ筋肉の発達がじゅうぶんでなく、細かく筋肉を使う動作はできない。それで、筋肉をおおまかに使うように、絵を書く場合なら、できるだけ大判のものを使うとか、種まきをする場合なら、粒の大きなものを使うような心構えが必要である。
B.高 学 年
(1)活動が活発となり、非常に精力的になって、事故を起こしやすくなる。
おもしろいと思えばいつまでも続け、身の危険を忘れて断崖の花をとったり、高い木に登って虫を捕まえたりする。
目新しいものを非常に喜び、何事もやってみようという意欲に燃える。
(2)忍耐力が発達してきて、断続的な飼育栽培や測定も、やりとげられるようになる。
(3)体力や筋肉の運動が発達し、細かい運動もできるようになる。それで、顕微鏡を用いて極微の世界を研究したり、望遠鏡で天体を観測したり、薬品を適量用いたりするなど、しだいに精密な道具や機械・器具を扱えるようになる。
(3)数量的に見る能力
この能力の一部は比較観察の能力の中に見ることができる。草花の成長を数量的に見るという場合は,一つの事がらを時間的に,数量的に見るのであるが,二つの現象の関係を数量的に見る場合も出てくる。また一つの現象を分析して,二つの要素から数量的に考える場合もある。
単に,数量をはかっただけでは,数量的に見るということにはならない。必ずその変化の意味について考えることがあって,はじめて数量的に見るということになる。
低学年のこどもは,物を一つ,二つ,三つと数えることの意味を知っているが,物から離れた数を考えることができにくい。(これは幼少のこどもが数を無意味に唱えることとは別の意味である)
学年の進むにつれて,だんだん物から離れた数を考えることができるようになる。また,数の範囲も拡大する。
高学年では,数量的に処理したほうが現象をよりはっきりと正確につかむことができ,簡明に解釈を生み出すことができるというように導きたいものである。
(4)問題をつかむ能力
ある事態に対応して,そこに不調和や不合理や意欲に満たないものを感じた場合,その不調和や不合理や不満を調和のとれた状態,または合理化された状態,満足な状態に置こうとするところに問題がつかまれる。従って,不調和や不合理を見いだす能力,または意欲が盛んであることが,問題をつかむ能力の基になっている。
この中には,単なる疑問もあるが,日常の生活の合理化に気づいた場合には,問題をつかんで,その解決への意欲も盛んに働いてくる。
低学年のこどもは,よく考えないでその場その場でつかむ単純な問題が多い。
学年が進むにつれて,問題のつかみ方に筋道が見られるようになる。問題をつかむのには,教師の方向づけがたいせつな場合があるが,その方向づけによって,こどもは,自由な気持ちで問題をつかむようにしなければならない。教師の指導が強過ぎて,最後は教師がまとめるものであるというような印象を与えると,こどもたちは,自発的な活動をやめるようになる。
(5)結果を予想する能力
一つの問題を解決するときに,いろいろな経験や材料をもとにして,その見通しをつけるのが普通である。その見通しによって,はじめて次の仕事にとりかかれる。実証をするための実験などは,この結果を予想する能力があって,はじめて計画がたち,手順がうまくはこばれるのである。
低学年では,すでに直接経験したことと同じようなことなら,ある程度結果の予想ができるが,直接に経験しないことや縁の遠いものや抽象的なことになると予想ができにくい。
高学年では,すぐ結果がわからなくても,関連のある他の経験から,ある程度結果を予想することができる。
結果を予想するにあたって,筋道をたてて考えるのでなければ,単なる憶測に終わってしまうから,その予想が筋道をたてて与えられたものかどうかを,確かめていくようにしなければならない。
(6)企画する能力
実験や見学や製作などに直接現われる場合もあるが,広く生活全般にわたって,能率的に進めていこうとする時に必要になってくる。
企画するということは,ある程度筋道のたった考え方や,結果を予想する能力がなければできないことである。
低学年では,どんな遊びをしようか,たれと遊ぽうかなどと考えるところに,この能力の芽ばえが現われる。しかし,初めから終りまでよく考えて,順序だって企画をし,それに従って仕事をしていくことはできない。
高学年になると,みずから企画をし,その企画に従って仕事をすることができるようになる。しかし,ひとりの能力では完全な企画をすることは無理な場合が多く,話合い等によって,多くのこどもの知恵を集めて,はじめてまとまった企画ができることが多い。
この能力は,製作とか,見学とか,実験などの具体的な学習活動に即して,まず大胆に企画させるように導いて,はじめて高められていく。
しかし,その企画のしかたがよかったかどうかは,こどもと教師の協力による評価によって,確かめられ,しだいに高められていくのである。
(7)原理を応用する能力
問題を解決して,一つの結論を得たとする。この結論は一つの筋道であって,これをだれにもわかるように言い表わすと,だいたい法則のような表現になることが多い。その法則なり原理なりを,こどもが自分で日常生活や,次の問題解決の時に応用するのがこの能力である。
低学年のこどもは,事がらが簡単な場合,またはこどもが前に経験したと同じ場合でないと,原理を応用しにくい。
高学年になると,経験が豊富になるので,事がらが複雑な場合や,もとの経験と違った場合にも応用できるようになる。
原理を応用するというのは,こどもみずからが応用するかどうかということであるから,学習中,またはその他のこどもの生活の中で,もし気づかないで過ぎるような場合には,示唆を与えることも必要になってくるであろう。また,一つの仕事の結果が,どのような原理を応用して行ったかを考えさせることも必要である。
(8)事実から推論する能力
推論が,単なる憶測ではなく,事実に基いて行われることである。
そのもとには,事実をありのままに見る能力や,筋道の通った考え方をする能力が必要になる。
天体に関する学習になると,説明的な実験を基にして,それから推論するようなことも含めて考えられる。低学年では,実証する段階を省いて,推論で学習が終る場合もあろう。
1,2年では,分析する能力がじゅうぷんでなく,物事の見方も主観的であって,事実よりもむしろ両親や教師のいったことをもとにして,推論する傾向がある。
3,4年では,物事の因果関係を明らかにすることが,だんだんできるようになる。
5,6年になると,分析的に判断する能力が進み,客観的に物事を見るようになるので,複雑な現象の中から必要な事実を見ぬいて推論できるようになる。
(9)筋道のとおった考え方をする能力
この筋道のとおった考え方をする能力は,事実に基く推論や結果を予想するという能力よりも幅が広いといえる。
低学年では,こどもが経験した事実が少ない。経験した少数の事実から得た結論を,いろいろな場合に適用しようとする。そして,論理的な飛躍に気づかない場合が多い。
高学年になると経験が多くなり,分析的な判断が進んでくる。それで,しだいに筋道のとおった考え方ができるようになる。
この能力は,話合いの時によくわかり,また伸びていく。
(10)分析的に判断する能力
一つの事態を分析して,条件を確かめて判断することである。
低学年では,全体的直覚的に物事を見ることが多いから,分析的判断をすることが少ない。
高学年になると,全体的に見るだけでは満足しないで,深く究明しようとして,分析的判断をするようになる。たとえば,一つの現象について,時・場所・原因あるいは条件等を分けて考えるようになる。
問題解決にあたって,問題の分析からまずこの能力の必要さが考えられる。問題が適当に分析されることによって,それから後の仕事が楽にはこばれるようになる。また,研究作業や整理の場合にも,解釈のしかたが正しいかどうかを反省し,吟味する時にもこの能力が必要になってくる。
(11)総合的に判断する能力
いくつかの事実をまとめて推論し,一つの判断を下すことである。
低学年のこどもは,全体的に物事を判断するけれども,分析したものをふたたび総合して判断することはしない。
分析して判断する能力が進むにつれて,いろいろな実験の結果をまとめて一つの結論を出したり,いくつかの原因が同時にはたらいた場合,どうなるかを判断したりすることができるようになる。しかし,5,6年でもこの能力がよく発達しているとはいえない。
(12)普遍化する能力
いろいろな観察や実験から得られた一応の結論を,さらにいろいろな新しい経験に当てはめてみて,結論の正しいことを確かめ,また,ある時には結論を修正して,いっそう広い範囲の事実に当てはまる結論をみつけるようになる。
この能力は,たくさんの事実に当てはめてみた経験をとおして,どの場合にも当てはまるような原則を考え出すことである。
このような能力は,低学年でも簡単な場合には見られる。
高学年になり,事実から推論する能力や,分析的・総合的に判断する能力,筋道の通った考え方をする能力の進歩に伴って,この能力も進む。
こどもたちがある理解に達した時,その理解がどの範囲,あるいはどの程度に適用されるかどうかを考えたり,当てはめてみたりすることによって,普遍化の能力はさらに高められていく。
B.技術的能力
(1)資料・材料を集める能力
学習の初めにあたって,または学習の途中の研究やまとめにおいて,教科書や参考書によって道が開かれることがある。ところが,どういう教科書や参考書を選び,どのようにしてそれを手に入れたらよいかが解決されなければ,有効にこれらを活用することはできない。
また,ある実験を計画した時に,どれだけの器具や材料が必要であるかがわかっても,それらを適当に手に入れることができなければ,実験ができない。器具や材料のあり場所へ行って持ってきたり,ない場合には手近な場所で集める必要が起ったりする。
同じように,一つのの実験が終って,その解決が正しいかどうかは.確実な資料に基いて吟味する必要が起るであろうが,この時にも,それに適する資料を求めることができなければならない。
このように,資料や材料を集めることがうまくできると,問題の解決は楽になり,より正確になる。そして,学習活動は豊かに展開されるようになる。
資料・材料の内容として考えられるものには,自然物(観察の材料・飼育栽培の材料),製作材料(道具および材料),実験材料(器具および材料)などの材料や,絵・写真・スライド・映画のフィルム・図表・パンフレット・記録・新聞や雑誌の記事・地図・参考書などの資料がある。
低学年で集めることのできる資料・材料の種類は,おもに,画・写真・実物〈木の実・木の葉・石など)・おもちゃ・簡単な製作に必要な材料器具の範囲を出ない。それをさがす場所は,学級・校庭・野外・家庭(自分の持ち物)にだいたい限られる。どこにいけば,どのような資料や材料が得られるかというような経験をつむことがたいせつである。それによって,高学年になって自発的な集め方ができるようになる。
資料や材料を集める場合,とかく,ある目的によってある物を集めていることを忘れて,その場所や,その物に連関して別の活動を起しがちであるから注意を要する。
高学年になると,どんな資料が問題解決に役にたつかを考えて,資料を選び出すことができ始める。
集めることのできる資料・材料の種類は,低学年から発展して,新聞雑誌の記事・参考書・地図・統計などが集められるようになる。
集めてくる場所も,学校・家庭・野外などから,さらに図書館・博物館・工場その他社会施設などにまで広がる。
資料や材料を,めいめいで集める場合もあるが,やや困難と思われる場合には,グループで集めるとか,学級共同で集めるとかの示唆が必要である。
よく見かけることだが,おとな向きの本や統計などをおもしろくもなく,わかりもしないのに骨をおってうつしてくるような,役にたたない努力はやめなくてはならない。このようなことを避けるためには,こどもたちに適当と思われる参考書なり,統計なりをあらかじめ用意しておくほうがよい。必要な事がらを選び出すことができるようになる段階をいくつか考えて,次第に複雑なものから選び出せるようにしなければならない。
(2)整理整とんする能力
整理整とんするためには,同じ物や違った物を見分けて分類することや,次に使う便利さを考えて,位置や場所をくふうする必要が起ってくる。整とんは,次の仕事の準備である。
低学年では,整理整とんのできた後の美しさ,気持のよさを味わうことはできるが,それ以外の整理整とんの必要(たとえば,便利・清潔等〉を理解することはむずかしい。
また,整理整とんの計画をたてても,一時はするが長続きしない。
整理整とんする場合には,色・形・大ききによって,種類分けすることはある程度できる。たとえば,本・道具・積み木等を別々に集めたり,本を大きさの違いによって分けて並ペたり,葉を色や形によって分類したりすることができる。しかし,整理整とんは,正確にはできないし,また相当に時間がかかる。従って,その場その場にあたって,整理整とんするようにしむけることがたいせつである。
高学年になると.整理整とんの必要なことを考えることができるようになる。そして,次に使う時の便利さを考えて企画し,整理整とんするようになる。
分類をするような時も,ただ外観だけにとらわれることなく,本質・内容・使用の目的・使用上の便利さ等によって分けることができるようになる。しかし,常に整理整とんを進んでやる習慣は,なかなかできあがらない。日常の生活において,よく整理整とんしてあるかどうかは,態度に関することであるが,整理したり,整とんしたりすることそのことは,一つの技術的能力である。
しかし,この整理整とんする能力は,注意深く正確に行動する態度や,みずから進んで究明する態度が高まることによって。高まる場合もあり,また,うまく整理整とんすることによって,それらの態度も身についてくるということがいえるであろう。
(3)飼育・栽培する能力
低学年では,草花・野菜の種をまくことはできる。
苗の植込みのごく簡単なものはできるが,苗床から苗をとって植えかえる仕事はむずかしい。
いぬ・ねこ・うさぎ・ねずみ・にわとり等にえさや水をやることはできる。
かたつむり・きんぎょ・めだか・たにし等を飼うことができる程度である。
低学年のこどもにとって,動物や植物の世話を長期にわたり続けることはむずかしい。みずから進んでやるのは,芽の出たころ,花の咲くころ,子が生れたころ,新しく手に入れた当座等,特に興味をひく時期に限る。
従って,飼育・栽培している材料を教師が注意して見守り,こどもたちを育てると同じ気持で管理しておかないと,材料のねうちを半減してしまうことになる。
このようにして,特徴のはっきりした時期に,こどもの関心をこれらに向けるように導き,やがて,こどもたちの手だけでうまくできるように導くことが望ましい。
高学年では,世話の簡単なものについては,草花・野菜の種まきから,開花あるいは収穫するまですることができる。
苗床から苗をとり,植えかえることもしだいにできるようになってくる。
また,いぬ・ねこ・うさぎ・ねずみ・やぎ・にわとり等に食物を調製して与え,動物小屋のそうじ等をすることができるようになる。
虫・かえる等野生の小動物を継続して飼うこともできるようになる。
高学年になると,ある目的(たとえば実証)のために,特別の条件を設けて飼育栽培をする場合が起きてくる。このような場合は,やや長期にわたって世話をする必要が起るが,ひとりのこどもが,長期にわたってそれらを観察したり,世話をしたりすることは困難である。グループを作って観察したり世話したりするようにすれば,この困難を緩和することができる。それでも長くなると,グループの全員が世話を忘れてしまうようなことがある。グループごとの交代制は,これを助ける一つの方法である。
(4)械械・道具を使う能力
低学年では,移植ごてやはさみ等,筋肉をおおまかに使う道具の使用がきる。
簡単な操作による道具たとえば,温度計(2年以上〉・レンズ・磁石・自動ばかり(2年)・ますなどを使うことはできるが,てぎわが悪い。
ビーカー・シャーレーのような薄いガラス器具を使うと.必ずたれかがこわしたりする。これは,低学年でこのような器具を使うのは無理なことを表わしている。
簡単な道具を使う速さは,初めはのろいが,練習によって速くなる。
機械や道具を使う場合には危険を伴うことがある。 これは,あらかじめ気をつけてやらなければならない。初めて使う時に特に注意を要する。使い方については,はっきりと教えて使用したほうがよい場合が多い。
後からの反省では,わかりにくいことが多いから,使っているその場でふつごうを見いだし,指導することが効果的である。
高学年では,筋肉を細かく使ってする機械道具の使用もできるように、なる。たとえば,ピンセット・さおばかり・てんぴん・目もります・試験管・ビーカー・シャーレー等も使えるようになる。
また,やや複雑な操作による機械や道具,たとえば,顕微鏡・幻燈機・望遠鏡・湿度計・雨量計・小型なモーター・アルコールランプ等の使用もできるようになる。
どういう場合に,どのような機械や道具を使ったらよいかと改めて聞けば,わかっているこどもも,いざ仕事をする段になると,解剖ばさみで針金を切ってしまうような場合を見かける。このようなことをなくするには,初めの企画をしっかりたてさせ,必要な用具を整えさせておくことがたいせつである。
機械や道具の使い方の善悪は,その結果に,はっきりと出てくる。そのような場合は,その場でその技術を練習させることが望ましい。
(5)工作する能力
低学年では,風車・ささぶね・どんぐりごま等の簡単なもの,おおざっぱなものならば工作することができる。しかし,てぎわよく作ることはできない。
あきやすいから,長時間かかるものはやりとげられない。従って,大きさや材料に注意して,無理なくできるようなものを作らせるように導くことが望ましい。そして,完成の喜びを味えるように指導すべきである。
高学年では,琴・笛・機械の模型(風向計・日どけい・モーター・電信機等)・家の模型・写真機・望遠鏡・模型飛行機・船等,やや精密なもの複雑なものも作れるようになる。そして,時間のかかるものも,継続して作ることができるようになり,またてぎわよく作れるようになる。
個人製作のほかに,グループによる製作も,かなりうまく進めることができるようになる。
工作する場合,とかく危険が伴いがちであるから,じゅうぷん気をつけて,予防に努める必要がある。
(6)資料・材料を使う能力
資料や材料を集めることは,これらを使うためである。
適材を適所から適量選んで,目的にかなったように処理することを考えると,相当程度の高い能力であるということになる。
しかし,この一部は,前の工作する能力や,資料・材料を集める能力や,整理整とんする能力に含まれるものもある。
低学年では,紙・きぴがら・粘土・木の実・花など簡単な道具で扱える材料を使用することができる。
また,材料を色・形・硬さ等に応じて使いわけることはできるが,外から簡単に見分けられないそのものの性質に応じて,自分で使いわけることはむずかしい。
物を外見だけで見分ける程度であるから,薬品を使うことはできない。
資料を使いこなすことは,まだむずかしい。
工作材料などにおいて,この能力を高めていくことが有効である。
高学年では,木・金属・布など簡単に細工しにくい材料も,使用できるようになる。また,セロファンの湿り気に対する性質のように,外から見ただけでは簡単にわからない性質も考えに入れて,材料を使い分けることができるようになる。
取扱にあまり知識と技術を要しない材料なら,たいてい使うこどができるが,まだ,危険な薬品・材料等を取り扱うことはできない。小学校では,このような危険な薬品や材料を教師がこどもの前で使ってみせることも,なるペく避けたほうが安全である。
参考資料として,参考書や統計や記録などを,しだいに使うことができるようになる。しかし,これを使うのに困難を感じる場告がある。 何を求めようとしているのか,また,その資料の中のどれだけとればよいのか,それからどういうことが考えられるのかなどの指導を忘れてはならない。
こどもたちは,適材を使うことは,ある程度考えられるが,適量ということは,なかなか困難である。従って,学習中,または学習の終ったときなどに,よくこのことを反省して,しだいに物を適量使うように導くことがたいせつである。
(7)記録・図表を作る能力
低学年,特に1年のこどもは数だけの記録,または符号を使った記録からはじまり,だんだん単語を使った記録ができるようになる。たとえば,あさがお・かぼちゃの花の数,種をまいた日時,芽が出た日時,雨の日・晴の日の符号,動物の食べ物の名,比較した大小の記録などである。
2,3年になると,簡単な文章による記録ができるようになる。特に3年ごろになると,かぽちゃ・おたまじゃくしの絵日記など,絵と文によって,丹念に記録するようになる。
しかし,興味の持続する時間が短いから,長期にわたる記録はできない。
植物成長の絵やグラフ,かいこの成長の絵やグラフ等,図表を作る場合,おもに絵を用いることが多い。
3年になると,簡単な棒グラフを作ることができるようになる。低学年では,記録や図表を作ることに相当の努力を必要とするから,進んで図表を作る興味をもつまで,そのできばえについてほめるなど,奨励の方法をとることが望ましい。
また,興味の持続をはかるには,自分の作品を時々見せたり,友だちの作品を見たりする機会を多くすることが効果的である。
高学年になると,要点をとらえた適切なことばで,精密な記録ができるようになる。この中に,実物の写生図を加えることもできる。また,長期にわたる記録もしだいにできるようになる。
気象観測や,いねの一生などの記録では前の記録と比較して,それと違ってていることを記録することもできるようになる。
また,太陽の高さと影の長さ,一株のいねの茎の数と1本の穂についたもみの数などの二種の数の関係を示す図表も作ることができるようになる。
高学年では,記録の正確さや,どのような形式を用いて記録したほうが効果的であるかなどが問題になる。従って,これらを研究する機会(たとえば発表会など)を開いて,適切な表現のくふうをさせることが必要である。このとき行われる記録や質問によって,新しいくふうも生まれてくる。
2.態度の発達と適用
日常生活を科学的に処理できるためには、単に科学的な原理や方法を知っているだけではふじゅぶんで、科学的な態度や習慣が身についていて、はじめて実践できるようになる。ここでは、習慣・興味・態度・鑑賞を一括して態度に含めて、それらの発達の概略と指導上の留意点について述べよう。
しかし、これについての詳細は今後の研究に待たなければならないものが多いと思う。
(1)環境に興味をもつ態度
こどもたちは自然に放っておいても、身のまわりの事がらに興味をもつものである。しかし、新しい方面に興味をもたせること、また、より深く持続的な興味を起こさせることは、指導の力にまたなければならない。指導が成功したかどうかを何で評価するかという場合、実にこの興味のもち方が広くなったか、深くなったかで見ることができるとさえいえるほど、たいせつな要素になる。
A.興味をもつ環境の広がりについて
低学年では、自分の直接経験する範囲、たとえば家庭・学校・近所その他行ったことのある場所以外には出ない。
高学年では、直接経験する範囲を越えた所、たとえば日本・世界・宇宙等に及ぶようになる。
B.興味をもつ対象
自然環境と社会環境について、低学年でも高学年でも前者に対し後者よりも多く興味をもつ。しかし、高学年では、後者に対する興味の傾向がだんだんと高い率を示してくる。
低学年では、植物よりも動物に興味をもつ。
また、動物植物の生活に興味をもち、外から直接見えない内部的な構造・はたらき等に対しては、高学年になって、はじめて興味をもつようになる。
低学年では、自然物やおもちゃに興味をもち、学年が進むにつれて加工した物に興味が向く。
これらは、ごくおおまかな傾向であるが、より多くのものが興味をもつものを学習の対象として取り上げることもたいせつであるが、新しい方面に興味を感ずるように指導することを忘れてはならない。
(2)みずから進んで究明する態度
低学年では、その物事の名称などを好んで聞き、個々の物をなぜかと断片的に聞きたがるところに、この態度が芽ばえている。この芽ばえは発達して、動くおもちゃの動くしかけを自分で調べたり、動物や草木の生活を楽しんで、自分から観察したりするようになる。
高学年のすぐれたこどもでは、興味のある問題を持つと、聞いたり読んだりして、一応の解決ができても、さらに自分自身で研究したり、ためしてみたりして、納得のいくまで確かめようとする。
こどもたちが自主的に、みずから進んで究明しようとする態度をもつことは、教育全般を通じてたいせつなことであるが、これを伸ばすには、どこまでも、問題を自分たちの力で解決したという自覚をもたせるように心がけることが肝要である。そのためには、教師の助力は目だたないようにする苦心がいる。
いろいろな意見を述べたり、いろいろな解決を試みたりはするが、最後の断定は教師がするものだというような印象を与えるような結果にならないことがたいせつである。ほめることが、この態度を伸ばすのによいと一般にいわれていることを忘れてはならない。
(3) 協力する態度
低学年のこどもは自己本位で、他人と協力することは少ないが、砂遊びのように教材が豊富で、興味が同じ場合には、少ない人数の者と短い時間協力する。
高学年になると、観測・飼育栽培・製作・劇化・実験などに協力して仕事をしようとする傾向が著しくなってくる。
本来、こどもたちはひとりで遊ぶというよりも、グループで遊ぶことに楽しみを感ずるものである。
この本性をうまく指導したら、感情的にも、すべての人々と協力する態度が自然についてくるはずである。興味を同じくするものとか、利益を同じくするものの間だけの協力にとどまらないで、広く人々と協力する態度が身につくようにありたいものである。
(4)批判的な態度
低学年のこどもは主観的な態度の多いのが普通であるが、批判的な態度の芽ばえの見えるのは、次の点であろう。美醜・長短・明暗・形状など外から見てわかる物の性質、あるいは行為の結果。
高学年のこどもは、実験のしかたの適否や結論の正否、結論に達するまでの考え方など抽象的なことについても批判するようになる。
3,4年生のころになると、理の通らない理屈をふりまわし、批判のための批判に終わるような傾向をもつようになることがある。しかし、それが理の通らない理屈であるとわかるには、やはり期間が必要で、やがて、その期間が過ぎると、それが理屈であるかどうかを見分けることができるようになってくる。従って、理の通らない理屈が横行する時期には、ある程度押えつけないで、むしろそれなりにも意見が述べられることにたのもしさを見いだし、それがどれだけの事実や証拠をもとにしているかを問題にするようにしむけて、正しい批判的態度を伸ばしていくようにする注意がたいせつである。
(5)事実を尊重し、実証する態度
低学年のこどもは親・教師などのいったことを信頼する傾向があるが、これはすべてのことについてではない。少なくとも自分で経験したことについては、事実を尊重する態度が見られる。また友だちが、自分がすぐ信じられないことをいったときに、「それでは、やって見せてくれ」とか「その物を見せてくれ」とかいうことがよくある。これは実証する態度の現われである。
ある1年生の教室で「お月さまは昼間も見れる」とひとりのこどもがいい出した。すると,他のこどもが「お月様は夜だけしか出やしないよ」といっ
てきかない。はては,このことをきっかけとして,気の弱い前の子がべそをかきはじめた。この時,他のこどもが「それでは,昼間見えるか見えないか
見てみよう」と提案した。
これなどは,ごく簡単なことであるが,この態度の現われといってよかろう。
また,ある2年生が「消防自動車にも6輪車のがある」というと,ひとりの子が「そんなのはない」といいはってきかない。「しかし,ぽくはちゃんと見たんだ」という。そこで,どこで見たかが問題となり,その場所へ出かけていってみることになった。
この例は,実証する態度が何も理科の学習に限らないで,日常の生活態度として望ましい態度であることを示してくれる。
学年が進むにつれて,事実を尊重し,実証する態度が目だってくる。ことに討論の結果,意見が食い違ったような場合,または自分のしたことや考え
たことが,他のものと違っていると,それを確かめようとする態度が強く現われる。
また,資料や他人の話をうのみにしないで,その正確さを問題にするようになり,科学的方法に確信をもつ態度が芽ばえてくる。
(6)専門家の意見を尊ぶ態度
低学年のこどもは,両親や教師など年長者の話を尊重するが,これは自分の経験しないことについて専門家の意見を尊重する態度の現われと見られる。
学年が進み,自分のもつ問題が複雑になるにつれて専門的知識の必要を感じ,ますます専門家の意見を尊ぶようになる。
「隣のおじさんがこういった」とか「おとうさんがこういった」とかいうことでは,他のこどもは,もはや信用しなくなる。たとえ,両親や教師のいったことでも,それがどのくらい実証的であるかということを考えるようになってくる。
また,実験をしても,まちがった説明を引き起すことをしばしば経験する。
このような経験から,信用のおけるものは,専門に研究している人の意見だということがわかるようになって,専門家の意見や,専門の本(教科書)によって,自分たちの結論が正しいかどうかを吟味するようになる。
しかし,科学者の意見も,まだ仮説の域を脱しないもの,または対立しているものがあること,新しい理論によって,次々に変えられていくことがあることなどが理解されるにつれて,いっそう専門家の意見を尊ぶようになる。
(7)迷信や宣伝にとらわれない態度
この態度は,批判的な態度とまったく別な態度ではなく,むしろその特別なものと考えられる。迷信は人の判断の弱点に侵入するものであり,宣伝は判断をことに誤まらせるように行われる傾向がある。そのため,これらにとらわれないためには,特に鋭い批判力が必要になる。
低学年のこどもは,物珍らしい宣伝や注意を引くようなおもしろい迷信は,それが事実かどうかも確かめないで,興味をもってすぐ覚えてしまい,それにとらわれる傾向がある。
高学年になると事実を事実としてうけいれられるようになり,批判的な態度もできてくるので,宣伝や迷信にすぐにのせられないで,一応よく考えてみてから事実であるかどうかをみきわめるようになる。
このような態度がしだいに身につくようにするためには,学年が進むにしたがって,物事の説明として魔術とか魔力とかを用いないこと,自然力を説明するのに.擬人化するような方法を用いないこと,単なる憶測や推測で説明することをとりあげないこと,より多くの証拠を求めるようにすること,資料をうのみにしないで,その正確さを問題にすること,科学者の方法や結論に信頼を置くようにすること,などに注意して導くことがたいせつである。
(8)新しい考えをとり入れる態度
低学年のこどもは,友だちがやっていることのまねをする傾向がある。
学年が進むにつれて,人に聞いたり,本で読んだりして,いろいろ新しいことを取り入れるようになるが,一度ある事がらに納得がいくと,それを固執して新しい説明をうけ入れない場合も出てくる。
いままでにとれていた知識の調和こ,新しい内容をつけ加えたり,またはこれとまったく違うことが起ったりしたときも,確かな解釈によって,古い考えを改めて,新しい考え方をとり入れるようにしむけることがたいせつである。古い考え方を固執すると,そこには偏見的な態度が生れてくる。
自然現象の中には,科学者によって,じゅうぶんに説明されていたいことも多い。また今日,科学者によって説明されていることも,将来,訂正され,もっと進んだものになることもあろう。
この新しい考えをとり入れる態度は,日常の生活態度としてもたいせつなことで,この反対な態度として,がんめいということがいわれる。
(9)道理に従う態度
低学年のこどもは,自分の信じたことを固執し,守り通そうとする態度をもっている。しかし,この自分で信じたことは必ずしも道理とはいえないで,自分の利益に直接関係のあるものや,自分の感情に支配されているものが多い。それは,鋭い判断力がないため,正しい道理がつかめないことにもよるのであろう。
高学年になると,理性が発達してくるので,道理をみつけ,これに従う態度が強く現われてくる。自己の利害に反することでも,理屈が合っていれば,それに従うようになる。
(10)計画的に行動する態度
低学年のこどもは,その場その場で,単純な計画をたてる。2,3年のこどもは水車や風車をつくるのに,何をどういう順序で用意したらよいかぐらいは計画できる。
高学年になると,問題をもつとともに,見通しをつけて予定をたて,計画的に行動して解決しようとするようになる。たとえば,どうやってせっけんを作るかというような問題をもったとすれば,実験をしてみたり,工場を見学したりすればよいと,見通しをつけて実験や見学の予定をたて,計画をして,行動するようになる。
ある狭い範囲内での計画から進んで,広い範囲にわたって計画をたてるように導くと,それが,やがて,日常の生活態度におよび,常に計画的に行動するようになる。
(11)注意深く正確に行動する態度
この態度は,物事を失敗しないでやりとげたいと思う場合に強く現われてくる。
低学年のこどもが,コップにいっぱいはいった水を,実に細心の注意をしながら運ぷのを見ることがある。しかし,このような慎重な態度は,低学年のこどもでは,ことに個性によって大きな差がある。また,この態度はあっても,する仕事がこどもにとってむずかしすぎたり,長い時間を要するものであるときには,現われるはずはない。
高学年になるに従って,思考は細密になり,注意深く正確に行動することができるようになる。
この態度は,実験や観察の学習活動の場合に多く見うけられる。注意して熱したり,正確に温度をはかって記録したり,飼育栽培をできるだけ注意深く正確に行ったりするときに見られる。
(12)根気よく物事をやりとげる態度
この態度は,低学年では,こども自身が直接に強く必要と興味を感じる仕事をする場合に限られている。しかし,それも比較的短かい時間に限られ,一つの事に長時間,注意力を集中したり根気のいる仕事をしたりするときには,この態度がもち続けられない。
高学年になると,理知が発達して,仕事の完成の意味や喜びがわかってくる結果,問題解決の途中に興味の少ない仕事があった場合にも,なお根気よくやりとげようとする。
この態度は特に高学年に多く現われる傾向がある。
(13)余暇を利用する態度
低学年のこどもには,余暇と仕事の見分けがつかない。こどものしていることの全部がむしろ楽しい遊びである。従って,自分で余暇を利用しようとは考えない。
高学年になると,仕事と余暇の見分けがついてくる。労働や1日の決まった仕事はできるだけ早く片づけて余暇をつくり,これを利用することに喜びを感じるようになる。
これには,計画的に行動する態度が伴って,はじめて,よい余暇利用の態度となる。
(14)健康で安全に身を保つ習慣
低学年のこどもは,両親や教師のいったことを守って,理屈を考えないで健康安全に身を保つ方法を実行することが多い。しかし,この実行は,ひとりではなかなかできにくいことで,習慣にまでならないで終ることが多い。
それで指導者が常にくり返し注意し励まして,習慣を作るようにしなければならない。
高学年になると,なぜこうしなけれぱならないかというわけがわかって,みずから努めて,健康安全に身を保つ習慣ができる。
一般に,低学年では行動から行動へという導き方をとり,高学年になると,思考から行動へという導き方をとるようであるが,この二つの導き方がうまく調和がとれ,低学年でよい習慣がついていれば,高学年になって,さらに新しい、よい習慣を身につけることが楽になる。
(15)自然に親しむ態度・自然の美・調和や恵みを感得する態度
自然の環境はこどもに,美しさを感じたり,調和を見出したりするのに最もよい機会を与えている。
花・虫・魚・鳥・星・空・風等について,美しい色・美しい光・きれいな声・よい香など,数限りなくある自然の物や現象がこどもたちの美しい情緒を育てあげている。
このような環境の中にあって,まだ主客未分化な低学年のこどもたちは,然の物を友として遊んでいる。
高学年になると,自他の区別がはっきりできて,自然物を自然物としてみるようになる。この時,自然の美しさや調和を直接感じることのほか,自然の物や現象の間の関係を理解するようになり,理知を通じてもまた,いっそう自然に親しむ態度は深くなる。花と虫の関係,太陽の生物に対する恵み,天体の秩序正しい運行等を学習する場合によく現われる態度である。
(16)生命を尊び生物を愛育する態度
低学年のこどもがうさぎ・にわとり・きんぎょなどにえさをやることを好むのや,自分でまいた種が気こなってたまらなかったり,自分で飼育し,栽培しているものに理屈なしに強い愛着を感じたりするのはこの態度の現われである。この態度を養うには,この年ごろから,このような飼育・栽培を始めなければ,なかなか困難である。
高学年になると理知が進んでくるから,おとなの助けを借りなくても,自分の手ですすんで動植物の世話ができるようになる。また,げんごろうときんぎょとを一つの器に入れておいて,げんごろうがきんぎょをいじめると,きんぎょに同情して,別々に分けてやるようなことをする。
(17)科学を尊ぶ態度
低学年のこどもは,はっきり科学という認識をもってはいないが,自分で納得して得た知識を尊ぷ様子が見られる。(例,きんぎょを小さい器にたくさん入れると死ぬから,数少なく入れるなど)
高学年になると,読書力・理解力が進むために,科学者の発明発見の物語りを喜び,あるいは科学の人生に与えた貢献に感歎する態度が現われる。
(18)新しいものを作り出す態度
こどもは,低学年のころから独創力のたくましいものであって,木の葉を丸めてキャンディだと考えたり,たでのつぽみが赤いごはんになったりするように,おとなでは思いも及ばないくふうをする。また,新しい遊び方を考えつくこともある。これらは新しいものを作り出す態度の現われである。このようなくふうをすることは、こどもの遊びの生活の本来の姿であって、くふうすることに喜びを見いだしているのである。
高学年になると、生活に便利なもの・つごうのよいもの・役にたつもの等何か有益な目的をもって、新しいものをくふうしようとする態度が見られるようになる。
新しいものを作り出す態度は、原理を応用する能力が高まるに従って、進んだものを考えつくようになる。
(19)科学を日常生活に応用する態度
この態度は、科学的な原理を日常生活に応用するという意味である。科学的な方法を日常生活に応用するということは、いままでに述べた他の態度のいろいろなところに含まれる。
低学年のこどもでは、一度学習したことのある草花の世話のしかたや、重いものを運ぶ時に車を使うことなどを、日常生活に応用することが見うけられる程度である。
高学年になると、科学を日常生活に広く応用するようになる。特に、家庭生活の面で、腐りやすい物を涼しい所におくとか、さびやすい金物の面は、水気をよくふいて油を塗っておくなどの場合に、この態度が現われてくる。
3.理解の発達
こどもの理解の発達を調べるには,どんな事がらについて調べるかが問題になるでろう。
理科の理解の目標として本書にとりあげられているおのおののものについて,各学年のこどもがどのような発達を示すかを知ることができれば,理科教育上非常によい資料になると思う。わたくしたちの手で,この調査ができていないのは残念である。この欠点を補うために,理科に関して基本的な観念を10ほど選び出して,これについて,東京都内および近県の一二の小学校で調べた結果を次に述べることにする。わたくしたちは,これが完全なものであるとは考えていない。むしろ,これを出発点として,全国で広く深い研究が進められることを期待している。
理解の発達について,一応の結論をうるためには,なお広範囲にわたる幾多の調査が必要となるであろう。
この調査の結果は,だいたい次のような方法によって得られたものである。
(1)問題は文章によるほか,絵をたくさん準備しておいてこれを示すとか,実験をして見せるとかして,口で質問した。
(2)1年生に対しては,教師または6年生によって,個人的に質問し,口で答えたものを記録した。2年生以上は問題を与え,筆答させた。
(3)予備調査を除き,本調査をした人員は各学年1学級(40〜50名)である。
a.水についての理解
(1)低学年では,水の形は「丸くて長いもの」などと考えているこどもがある。これは,水道の水が円柱形に流れ出すのを見るこどもの直接体験からきているのであろう。多くのこどもは,わからないと答えている。この「わからない」のうちには「一定の形がつかめない」意味のものも含まれているかもしれない。
高学年では「器によって形が変り,特別な形をもっていない。少量の時には球になる」と考えている。
(2)手でさわった水の感じについては、低学年・高学年とも、「冷たい」と感じるに過ぎないのが大部分である。
(3)暖めた時にはどうなるか。
低学年では「熱くなる、お湯になる」と答え、高学年になると、その上に「水蒸気になる、蒸発してなくなる」と、いわゆる「水の状態の変化」を理解するようになる。
(4)用途については、低学年では「せんたく・のむ・ごはんをたく・花にやる・火事を消す」と、身近な現象に限られている。高学年になると「発電・農業」と用途が広がり、また、「のむ・ごはんをたく・花にやる」が「生きるため」と理解が深まる。
(5)所在については、低学年では「水道・川・海」であるが、高学年になると、その上に「地下・空中・生物の中」と理解が増し、かつ大いに組織的になる。
b.光と影についての理解
(1)影については、低学年・高学年ともに「光が来ないから」と考えている。影ができるのは、低学年では「太陽や電燈にあたるから」といって光源の有無に重きをおき、高学年では「光をさえぎるから」と光線を考えている。高学年のこどもが散光をどの程度に理解しているかは、この調べでは明らかにならなかったが、じゅうぶんには理解していないのではないかと思う。
(2)光を出すものについては、低学年・高学年ともに大部分のこどもは「燃える火・電気・月・太陽・ほたる」以上に出ない。
(3)光を鏡にあてるとどうなるかの問いに対しては、低学年は「光る、まぶしい」とこたえ、高学年では、その上に「反射する」と答えている。高学年では、このことばの理解が進んだものと考えられる。
(4)光をレンズにあてるとどうなるかの問いに対しての、低学年では「紙が燃える」ことを知っているものが一部であるが、高学年になると、大部分はこれを理解しており、さらに「像ができる、焦点に集まる」ことも知っている。
(5)暗い所で物が見えないわけについては、(1)で述べたのと同じく、低学年では「電気がないから太陽がないから」と光源の有無のみを考え、高学年では「光がないから」と光源と離れて光を考えている。
c.太陽についての理解
(1)動いているかに対して、低学年では一様に「動いている」と考えているが、5、6年では「動いていない」と答えている。
(2)形については、低学年・高学年を通じて「まるい」と考えている。5、6年になると「どろどろしている火をふき出している」などの知識が理解に加わる。
(3)「太陽の光にあたると、暖かいのはなぜか」の問に対して、低学年では「燃えているから」と答え、高学年では「熱があるから」と考えている。特に6学年では「熱がくるから」と考えているものが多くなる。
(4)太陽の恩恵について、低学年では「洗たく物がかわく」「明るくしてくれる」と考え、高学年では、その上に「ばいきんを殺す」「からだがじょうぶになる」が加わる。
d.月についての理解
(1)動いているかについては、全部「動いている」と考えている。
(2)形については、低学年では「丸い」と答え、高学年では、その上に「満ち欠け」の変化も理解している。
(3)色については、低学年では「黄色」と答え,高学年では「岩の色」「反射は黄色で、実際はわからない」など、遠くから見た場合の色と、実際の月の表面の色とを区別して考えている。
(4)月にうさぎはいるかの問に対して、1学年では、「いる」と答える者と、「いない」と答える者とが半しているが、2学年から上になると、「いる」と答える者が急に減る。
(5)月の影響については、低学年では「明るくする」と考え、高学年では「日食を起す」「潮の満干」の理解が加わる。
e.星についての理解
(1)数については、全部「数えきれない」と答えている。
(2)形について、低学年では、いわゆる「星形」と答え、5,6年になると、「丸い」とか「太陽と同じ」とかと理解している。
(3)色について、低学年では「黄色」と答え、高学年では「銀色」「白」が加わる。
(4)大きさについて、低学年では「わからない」ものが多く、高学年では「大きい」「地球より大きいのも、小さいものもある」と理解している。
f.空についての理解
(1)空には何があるのかの問に対して、低学年では「雲」と答え、比較的地球に近いものを考えている。高学年では、もっと広く考えて「太陽・月・星」などの天体をも含めている。
(2)どんなことが起こるのかの問に対し、1,2年では「雨が降る」「雪が降る」、3,4年では「あらし・雷」が加わり、5,6年では「月食・日食・流星」などの「天体現象」および広く「気象現象」の起こることを理解している。
(3)広さについては、上の(1)と(2)とから考えると、低学年では「雲・雪・雨」等、気象現象の起こる範囲を空と考えている。高学年では、その範囲は「星の世界」まで広がっている。
g.空気についての理解
(1)形については、低学年では「わからない」者が多いが、高学年では「一定の形はない」と理解している者がしだいにふえている
(2)所在については、1年でも半数ぐらいは、このあたりあると考えているが、わからないものも相当ある。4年ぐらいになると、ほとんど総てのこどもが、どこにでもあると答える。地球の表面にあるという答えも3年ぐらいから少しずつ現われ、6年になると、ほとんど全員が地球上ならどこでもと考え、その所在が確実になってくる。
(3)暖めるとどうなるのかの問に対して、5,6年では「ふくれる」ということがわかる。
(4)縮めることができるかの問に対し,1,2年では「わからない」と答え3,4年では「縮められない」と考え,5,6年では「縮められる もっと縮めると破裂する」と答えている。
(5)低学年では,風と空気とを別なものと考えているこどもがかなりある。
この傾向は3年ぐらいまで残るが,4年以上では,気体という立場で,他のガス体と同じように空気を考えている。
(6)呼吸と空気と関係のあることは,1年では,まだ結びつかないものがかなりあるが,3年以上では,よくその関係をつかんでいる。しかし,空気がないと死んでしまうということは,低学年からもよく知っている.
h.火についての理解
(1)色については,1,2年では「赤」,学年が進むにつれて,「黄・青・だいだい」等の色の数が増し,6年では「その時によって違う」と答えるものが多い。
(2)用途については,大部分「煮る,焼く,湯をわかす,暖まる」などと答えている。
(3)燃えるということは,どういうことかの問に対し,低学年では説明ができない。高学年では「ほのおの出ること。灰になること。熱くなること煙が出て赤くなること」など,現象の分析ができるにすぎない。
i.熱についての理解
(1)どうすると出るかの問に対して,1年では「病気になると出る。走ると出る」など,自分のからだで経験する熱について考えている。2,3,4年では,「病気・太陽・火」を考え,5,6年では「摩擦・電気」がそれに加わる。
(2)所在について,低学年では「ひたい」あるいは「太陽・火」,4,5年では「からだ・太陽」と答え,6年では「地球の中心」「電気」がこれに加わる。
(3)はかり方については,1,2年では「体温計」と「手」,3年以上では「温度計」と「体温計」と答えている。
j.電気についての理解
(1)用途について、1,2年では「電燈・電熱器・電車」3,4年では、その上に「ラジオ」が加わり、5,6年では「工場・交通機関」が加わる。
「どんな機械や器具に電気が使われているか」いろいろな機械や器具の絵を見せて解答させると、低学年では、ガラスランプ・アルコールランプなどの火を電気と関係があるとするものがあるが、この考え方は3年ぐらいまでに急速に減り4年以上では、ほとんど電気と火とは区別して考えている。
(2)電燈のつく理由については、1年では「電線がある」「スイッチをつける」「電球がある」などと器具があることを理由とするこどもが多い。
3年ぐらいになると、「電気がはいってくる」「電線でくる」など、何か特殊なものが線を伝わってくるというように考えている。
5,6年になると、電気が細い線を通ると光るというように、本質的な理解に近づいてくる。
(3)「電気とはどんなものか」の問に対して、低学年では「暗い時につけるもの」というように現象的な面から考えているものが多いが、3,4年では光とか、人間のために使うものなどという答が多く、高学年になると「光や熱を出す」「+と−とがある」などという答が多くなる。
k.音についての理解
(1)どうすれば出るかの問に対して、1,2年では、「物をたたく」場合をあげ、3,4年では「楽器をならす」ことが加わり、5,6年では、「たたく吹く はじく」など楽器のならし方についての理解ができるようになる。
(2)何から出るかについては、1,2年では、「鐘・太鼓・器械」と答え、3年以上では、その上に「楽器」が加わる。
(3)聞こえるわけについては、4年までは、「耳があるから」と答え、5,6年では「空気の振動が伝わって耳にはいる」と考えている。
l.動物の類別について
「動物にはいろいろな種類がある」という理解の目標がある。このような種類というものを、こどもたちはどのように考えているかということを、身近な動物の絵を見せて仲間分けをさせてみると、低学年では、獣・鳥・虫などという概念で種類分けをするこどもは比較的少ない。
これに反して、形態の一部の特徴や著しい習性の一つをとりあげて仲間と考えるのは、低学年に非常に多く、高学年に進んでも、この考え方は少なくない。たとえば、海にいるもの・水の中にいるもの・飛ぶ・泳ぐ・木に登るなどの表現を用いている。
注意すべきことは、1年生には仲間という概念がはっきりしないので、「はととすずめ」「にわとりとあひる」というように一対のものをあげる傾向が強い。これは飛ぶものと歩くものの一対の仲間のつもりかもしれない。
この場合「はと」と「にわとり」とは別の仲間と考えているものが多い。しかし、「うさぎとかめ」のような話などに出てくる動物を結びつけて仲間と考えているものもあることから考えると、絵本などで一対になっているものを見た体験が影響しているかも知れない。
高学年になると、かなり形態の全体をとらえるようになるが、はちゅう類のような仲間の概念はあまりはっきりつかんでいないようである。
虫の概念は、低学年では、獣・鳥・魚・貝などの外は一括してみな虫と考えているが、高学年でもこの傾向がまだ残っている。
第3章 学習内容の組織化
I.学年の指導目標
各学校において、理科指導の一般目標が作られたならば、こどもの発達を考慮して、各学年の指導目標を定める必要がある。
この学年の目標は、さらに具体的には、その学年の単元の目標となって示される。すなわち、その学年の単元の具体的な目標は、その学年の指導目標が達せられるように組織されなければならないし、学年の目標は理科の一般目標が達せられるように計画されていなければならない。このようにしてこそ、一貫した組織ある指導ができることになる。
ここに示す学年の指導目標には、次の事がらを配慮してある。
(1)第1学年から第6学年までの間に、理科の一般目標が達せられるように組織してあること。
(2)理科の全分野にわたって、学年の指導の焦点を明らかにしたこと。
(3)こどもの発達に即し、各分野のねらいが、学年で発展するように計画され
ていること。
(4)こどもの学習意欲を盛んにするよう考慮すること。
(5)幼稚園の自然に関する学習のねらいに続き、また、小学校から発展する中学校の理科の目標に無理なく連絡するよう配慮したこと。
幼稚園
1.太陽・月・星・雲に興味をもち、それらの美しさを楽しむ。
2. a.天気には、いろいろあることがわかる。
b.自然界に起るおりおりの著しい変化に気づく。
3.a.飼っている生き物(いぬ・ねこ・うさぎ・にわとり・小鳥・きんぎょ等)に興味をもつ。
b.四季おりおりの花・くだもの・野菜に興味をもつ。
c.飼っている生き物や草花に親しみをもって、世話の手伝いをする。
4.a.元気で、安全に遊ぶことができる。
b.からだをきれいに保つように気をつける。
c.好ききらいなく、また落ち着いて食事をするように努める。
5.a.おもちゃ・遊戯道具を興味をもって使う。
b.身近な道具について、それらが役にたっていることに気づく。
c.おとなのする技術的な仕事を興味をもって観察する。
d.電車・汽車・自動車などの乗り物を興味をもって観察する。
第1学年
1.太陽や月や星に興味をもち、童話的な見方からしだいに離れ、簡単な事実に気がつく。
2.a.山・川・海のような土地の形の変化に興味をもつ。
b.いろいろな天気があることがわかる。
c.自然界に起るおりおりの特徴のある現象に興味をもち、自然に親しむ。
3.a.家畜・鳥・魚・虫などの種類や、暮し方に興味をもつ。
b.花・くだもの・野菜の種類や成長に興味をもつ。
c.動物や草花に親しみをもち、喜んで世話をする。
4.a.からだや着物を清潔に保つように気をつける。
b.元気で安全に遊ぶことができる。
c.食べ物や食べ方に気をつける。
5.a.おもちゃや簡単な道具の働きに興味をもって使う。
b.身近にある機械や道具が役にたっていることに気がつく。
第2学年
1. 太陽や月や星に興味をもち、認める事実の範囲が広がる。
2.a.雨水のゆくえや川の流れ方に興味をもつ。
b.天気がいろいろに変ることに興味をもつ。
c.季節ごとに特徴のある現象に興味をもち、自然に親しむ。
3.a.動物や植物が成長したり、暮し方が変ったりすることに興味をもつ。
b.動物や草花や野菜に親しみをもち、喜んで世話をする。
4.a.からだや身のまわりを清潔に保つように気をつける。
b.元気で安全に遊ぶことができる。
c.親や医者がからだを守ってくれることがわかる。
5.a.おもちゃなどのしくみや動かし方に興味をもつ。
b.簡単な道具のはたらきやしくみを知ってたいせつにし、使うことができる。
c.身近にある機械や道具の役にたっていることがわかる。
第3学年
1.太陽や月や星に興味をもち、童話的な説明と事実との区別がつく。
2.a.岩・石・土などに興味をもつ。
b.季節によって天気に特徴があることがわかる。
c.季節が移り変るにつれて、自然の状態が変ることに興味をもち、自然の美しさを味わう。
3.a.季節によって、生物の成長や暮し方が変ることがわかる。
b.動物の食べ物の取り方や運動のしかたやすみかに興味をもつ。
c.動物や草花や野菜の成長に興味をもって世話をする。
4.a.からだや着物やすまいを清潔に保つように気をつける。
b.ほどよい食事・運動・休息に関心をもつ。
c.交通や遊びについて、安全に気をつける。
5.a.おもちゃなどのしくみや力の伝わり方に興味をもつ。
b.日常使う道具のはたらきやしくみを知り、それらをじょうずに使うことができる。
c.身近にある機械や道具のはたらきや、それらが役にたっていることがわかる。
第4学年
1.a.太陽・月・地球・星の実体や、その動き方の初歩的な理解が得られる。
b.太陽が地球に大きな影響を与えていることがわかる。
2.a.土地の形や岩石が水の影響で変化していくことがわかる。
b.気象の変化を調べて、季節によって天気に特徴があることがわかる。
3.a.身のまわりの生物の特徴をつかんで、類別することができる。
b.季節や地域によって、それぞれの特徴のある生物が見られたり、状態が変ったりすることがわかる。
c.生物の一生の変化や、ふえ方を知るために、生物を続けて育てる。
4.a.自分のからだの状態に常に気をつけ、健康を保つ習慣を身につける。
b.日常生活の全般にわたって、けがや病気をしないように気をつける。
c.けがや病気に対する応急手当の必要を理解する。
5.a.火や熱の利用のしかたを理解し、日常生活上、火や熱を使う仕事を合理的に処理することができる。
b.電気に興味をもち、乾電池を使うことができる。
c.簡単な機械や道具のしくみやはたらきを理解して、日常生活にそれらを合理的に使うことができる。
6.身近にある資源が日常生活に役にたつことを理解し、自然の恩恵に気づく。
第5学年
1.a.太陽・月・地球・星の運動について理解する。
b.宇宙の広さや秩序に興味をもつ。
2.天気や気候の変化する筋道を理解し、天気予知が日常生活に役だつことがわかる。
3.a.生物相互の関係を通じて、自然の調和を感得する。
b.生物愛護の識見を養う。
4.a.食べ物や食べ方の健康に対する影響を理解し、食生活を合理的にしようとする。
b.すまいや着物の健康に対する影響を理解し、それらの健康によい使い方を身につける。
5.a.日常生活における電気の効用に興味をもち、電気器具の使い方を理解する。
b.光や音についての理解を深め、これらに関する機械や道具が使える。
c.機械や道具のしくみやはたらきを理解し、日常生活に、それらを合理的に使うことができる。
6.生物が日常生活に貢献することを理解し、生物の保護に協力する。
第6学年
1.a.季節の変化が起きる筋道について理解する。
b.生活を計画的に処理するために、暦を利用する。
2.a.地球の表面や内部の変化に興味をもち、変化が起きる筋道を理解する。
b.生物が変化してきた様子に興味をもつ。
3.動物や植物の生命を保つはたらきや環境に対する適応を理解し、自然の微妙な調和を知る。
4.a.人のからだの構造やはたらきについて理解し、健康で安全に身を保つ習慣を身につける。
b.自然科学の研究が健康な生活に貢献していることを理解する。
c.伝染病や寄生虫について理解し、その予防に協力する。
5.a.交通機関のしくみやはたらきを理解する。
b.機械や動力や電気に関する自然科学の進歩が近代生活に貢献していることを理解する。
6.天然資源が日常生活に貢献することを理解し、自然の恩恵を知る。
中学校
1.われわれの生活を改善するのに役立つような、科学的な事実や原理に関する知識を得る。
2.人と自然界との関係を理解し、さらに、人は他の人々、いろいろな生物、自然力の恩恵を受けていることを理解する。
3.人体や、個人および公衆衛生についての、基礎的な知識や理解を習得、健康的な習慣を形成しようとする気持を起し、さらにその実現に努める。
4.自然環境や自然現象を観察し、実際のものごとから直接に知識をうる能力を養う。
5.自然の偉大さ、美しさおよび調和を感得する。
6.自然科学の業績について、社会に貢献するものと有害なものとを明らかに区別し、さらにすべての人類に最大の福祉をもたらすように科学を用いなければならないという責任感をもつ。
7.科学の原理や法則を日常生活に応用する能力を高める。
8.一定の目的のために原料や自然力を効果的に、また安全に使う能力を高める。
9.科学的な態度とはどのようなものであるかを理解する。たとえば、いろいろな事実に基いて一応の結論が得られても、一切の偏見を捨ててさらに多くの事実を探求し、じゅうぶんな証拠が得られるまでは判定をさしひかえる。さらに、こうして得られた結論でも、別な事実にあてはめてみて深く吟味する。
10.問題を解決するために、科学的な方法を使う能力を高める。
11.現代の産業および商業生活において、科学に関する知識や科学的な習慣が重要であることを認識し、またそれらを習得して、職業の選択や就職後に役立たせる。
12.正確に観察し、測定し、記録する習慣を形成する。
13.道具を巧みに使いこなしたり、機械その他科学的に作られたものを正しく取り扱ったりする技能や習慣を養う。
14.人類の福祉に対する科学者の貢献と、科学がどのようにして現在の文明を築くのに役立ったかを理解する。
15.科学のいろいろな分野における専門家を尊敬する態度を養う。
16.ほかの人と協力して、科学上の問題を解決しようとする心構えを持つ。
U.単元の問題と、その目標ならびに学習活動
1.問題を解決する学習
わたくしたちの日常生活において、寝たり起きたり、顔を洗ったり、食べたりというような日常の習慣になっている生活を除くと、いろいろな所、いろいろなときに、いろいろな問題にぶつかる。これらの問題を解決しなければ、わたくしたちの日常生活を円滑に進ませることはできない。一から十までほかのひとの命令に従って意志の無い機械のように動こうとする人には、割合に問題解決の必要が少ないかも知れないが、自分の意志によって行動しようとする人々にとっては、日常生活の大部分が問題解決の過程の連続であるともいえる。このように考えると、問題解決の能力は民主的な社会人となるのに必要な能力ということができる。
このような問題解決の能力は、どのようにして養われるのであろうか。これは、小さいときから自分に起きた問題を自分で解決したという経験を積み重ねていく間に養われるものである。そこでこの問題を自分で解決する過程を、学習に持ちこんで、これを全体の学習中の一つの大きな仕事にしようとするのである。この仕事は、一つのまとまりのあるものであって、これを単元と名づける。
2.単元の問題にはどんなものがよいか
単元の学習というのは、簡単にいえば、一つの問題をつかんで、それを解決するまでの研究の過程である。それで、単元の表題はこれから研究しようとする問題そのものを使うのが適当である。この研究しようとする問題を表わすには、疑問文の形の文章を使うのが、問題の意味を簡単めいりょうに示す上から最もつごうがよい。また、問題をこのような疑問文の形で表わすのは、こどもたちの心理にもかなっている。
こどもたちに「どんなことを研究したいか」「どのようなことを調べたいか」聞いてみるならば、そのとき、大部分のこどもたちは、たいてい「なぜか、どのようになっているか、どのくらいあるか、調べてみたい」というふうに、疑問文の形で答えるものである。
このように,疑問文の形で研究したいことを表わすと,研究する事がらの内容と範囲とを,はっきりと示すことができる。これに反して,たとえば「電気について」とか「自然の変化」とかいうと,いろいろたくさんの事がらを包括することができるが,それと同時に,研究したいことの焦点がはっきりしなくなる。
単元の問題として不適当な例の一つとして「春の野」とか「夏の遊び」のようなものがある。これらは,意味がばく然としていて,何を研究して解決しようとするのかがわからない。また,他の一つとして「モーターを作りましょう」というようなものがある。これは学習活動であって問題ではなく,大きな問題の解決の方法の一つの学習活動として取り上げるのに適当なも−のである。
3. 単元の問題
単元の問題は,内容からみると,次の三つの型が考えられる。
(1)社会生活に関するもの (おもに社会科に関係がある)
(2)自然現象に関するもの (おもに理科に関係がある〉
(3)健康に関するもの (おもに社会科と理科の両方に関係がある)
自然現象に関する問題は,こどもたちが強い関心をもっているものである。
これらの問題は単に探求心を満足させるばかりでなく,人間の生活に密接な関連をもっているし,また,社会生活のあるものは,これと無関係にはあり得ない。健康に関する問題には,他人の保健に関するものと,社会の保健に関するものとがあるが,その一半は自然現象の問題であり,他の半分は社会生活の問題でもある。
このような理科と関係の深い問題のうちおもなものを低学年向きの問題と高学年向きの問題とに分けて例示すれば,次のとおりである。
低学年
高学年
この表は,次のような立場からつくられている。
(1)単元は,こどもの興味や必要にかなった問題から発展するようなものでなければならないから,各学年の単元の問題を,全国画一的に決めることはできない。それで,ここではこどもの学習の問題として取り上げられそうな問題の例をあげてみることにした。しかも,学習指導要領に取り上げた理解の目標は,一応どれかの問題の学習に出てくるようにくふうしてある。
(2)理科教育の分野を,生活の環境や理解の目標を考慮して,低学年向き5と,高学年向き6に分けてある。
| 分野 学年 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
| 低学年 | 空に見えるもの | 自然の移り変り | 生物の暮し方 | じょうぶなからだ | 機械と道具のはたらき | |
| 高学年 | 天体の動き | 自然の変化 | 生物の生活 | 健康な生活 | 機械と道具のはたらき | 自然の保護と利用 |
1から5までの分野は,低・高それぞれ同じものであって,こどもの発達の程度を考えて,その表現を変えてあるにすぎない。6の自然の保護と利用は高学年だけにあるから,低学年では考えないでよいという意味ではない。低学年では,特に分野を設け,これを主とした問題を取り上げていくよりも,他の五つの分野の問題の中に密接に結びついて研究されるのがこどもの発達にも合い,学習も無理なく行われるから,この分野を設けてないのである。
これらの分野のそれぞれについての理科指導が,1年から6年まで,中断されることなく行われることが重要である。こどもの個性によって,動物が好きだとか,機械が好きだとか 興味の程度が違う場合はあるが,こども全体を考えた場合には,興味の分野をこの5ないし6に分けることができる。
また,将来の生活上必要な事がらを考えても,これらの分野が考えられる。
この分野の一つ、たとえば「機械と道具のはたらき」に関する問題が、ある学年に取り扱われないとか、非常に少ないとかいうことのないようにしたほうがよい。指導において、ある分野がまったく欠けていると、それの好きな子どもは、自分の欲求が満たされないために、理科の学習がきらいになったり、指導を待たないで、その分野に活動することになったりしないとも限らない。
個性に応じて、力の入れ方を違えてよいし、また、おのずから力の入れ方は異なってくるであろうが、それぞれの分野について、だんだん発展するように指導するのが穏当である。
(3) これらの分野のもとに、いくつかの単元に含む問題をあげてある。左側の問題は、問題をやや広くまとめたもの、右側のものは、それをさらに細かく表わしたものである
この右側に掲げた問題のうつ、あるものは下の学年に、また、あるものは上の学年に向いている。指導計画をたてるにあたっての教師の便宜を考え、問題の内容の範囲や表現のしかたをくふうしてある。
(4) 「金物を、どこからとって、どのように利用しているのでしょう」や、「石炭や石油を、どこからとって、どのように利用しているのでしょう」などの問題は、「天然資源を、どのように利用しているでしょう」としても、また、「物の質を、どのように変えて利用しているでしょう」としても、まとめることができるであろう。
これと同じような関係をもつ問題は、低学年の「空に見えるもの」「機械や道具のはたらき」の中にもある。
この関係を表わすために、これらの個所は、表の中の横線を食い違わせてある。
指導の計画をたてる場合、ここに掲げた単元の問題によらなければならないことはない。なお、この単元に含む問題を基にして、学年ごとに、どのようなことが、単元に含む問題になるか考えたとしても、いろいろ違った組み合わせが生まれるであろう。その場合の手がかりとして、表の右側に、これらの問題が取り上げられるであろうと考えられるおよその学年をあげてある。
4.単元の目標
単元の目標は、学校の教育の一般目標に到達する具体的目標の少なくとも一部分であり、学年の指導目標や理科の一般目標と密接な関係があることは、前に述べたとおりである。
この単元の目標には、こどもに期待される理解・能力・態度がはっきりと具体的に表してあることが必要である。
これらの単元の目標に従って、こどもの有効な学習活動が考えられてくるし、またこれらの目標に照して、学習の効果が評価されるから、目標の決定は重要な仕事である。
一単元に与えられる目標は多方面にわたることなく、その問題の解決に直接関係の深い事項が具体的・確定的・特殊的にあげられ、実際的でなければならない。一般的な・抽象的な、また、あいまいな、目標は適当でない。ことに、能力や態度の目標においてしかりである。たとえば「事情をありのままに見る能力」のようなのは一般的・抽象的なあげ方であるが、「風が吹くと、どのようなことが起るでしょう」の単元では「風の向きや強さが時によって違うことに気がつく」とあげ、「秋になって、木や草はどんなに変わるでしょう」では、「いちょう・かえで・つた・さくらなどは、葉の色が変って落ちることに気がつく」とするようなのは、特殊的で具体的なあげ方である。
目標の数は、あまり多くないことが望ましい。特に、低学年では、少数の目標をあげ、こどもがいつも、その目標に向って学習が進められるように計画すべきである。
5. 学習活動
こどもがその単元に目標を身につけるのに必要で、かつこどもにとって興味があり、可能な学習活動が用意されなければならない。こどもの興味や、能力・活動の傾向、性格などは、個人によって差違があるから、種類の違った活動をなるべく数多く予定するようにしたい。
学習にあたって,どのような学習活動を選ぶかは,こどもと教師との協力によって定まってくるものであるから,単元の計画の中に,学習活動のすべてを含ませることは困難であろうけれども,地域社会の生活状況,学校の諸種の条件,自然環境などを考慮して,こどもの発達にかなった,目標達成に必要にして有効な学習活動を,なるべく、たくさんに考えておくべきである。そうすれば、学習にあたって,その中から最も適当なものを選ぶことができる。
次に,単元の目標の一部と学習活動の例を,各学年二つずつ,分野の違ったものを取り出して掲げることにする。これらの学習活動は,特別な地域と季節を考えないで,いろいろなものをあげてあるから,ある地方のある季節にはできないものがあるのはいうまでもないが,教師が自分の学校,または受持のこどもにかなった計画をたてる場合の参考資料となるであろう。
ここでは,たくさんの学習活動をある程度見やすくするために,類別して掲げた。ある類別中の学習活動の順序は不同である。どんな種類の学習活動を,
どんな順序にすれば,単元の学習にあたって,こどもに最も効果があるかは、実際に計画をたてるときや指導するときに,教師がくふうして定めるべき問題である。
なお,目標に掲げた能力・態度は,そのうちの一例をあげた。学習活動中,観察は学校の時間にできるものに限り,その他の時間に行う観察は省いてある。
数えたり,歌ったり,本を読んだりする学習については,算数・音楽・国語などの学習指導要領を参照されたい。
第4章 理科指導計画のたて方
T.指導計画をたてる場合の教師の仕事
理科の指導要領をたてる場合、まず、教師は理科指導は何を目指して行わなければならないかを検討し、子供がどのような能力を持ち、どのような事がらに興味や必要を感じているか、また、どのような環境の中にあるかを調査研究することである。
1.具体的な指導目標をつくる
第一章に掲げた理科の一般目標は、教育の目的や小学校の教育の一般目標を実現しようとして、理科は、主として、どんな分野を担当しているか、また、その学習の指導は、どんな点をねらいとして進めたらよいかを示したものである。したがって、これは一般的な目標であって、どの学校でも、これをそのまま指導目標としてとればよいというものではない。各学校、学級においては、それぞれの事情に即した具体的な目標をつくる必要がある。そのためには、だいたい次の手順が考えられる。
(1)この本に述べてある指導目標を検討する。
それには、
(a)指導目標の項を読んで、よく理解する。
(b)教育の一般目標と、理科の指導目標の間に、どのような関係があるかを考える。
(2)これらの目標は、自分の受持の子供に必要なものであるか、また落ちているものはないかを考えて、取捨選択し、落ちているものがあれば付け加える。
(3)自分の受持のこどもに照らして、これらの指導目標のうち、どの点に力を入れるかを決める。
(4)このようにして自分の受持のこどもに適した具体的な指導目標をつくる。
以上の(2)(3)を決めるためには、自分の受持の子どもは、どんな能力を持ち、どんな環境にあってどんな生活をしているのかを調べる。
2 自分の学校(または学級)のこどもは、どのような生活をしているのかを調べる。
(1) どんな必要から、子どもの生活の実態を調べるか。
(a) 理科指導の具体的な目標を決めるため。
(b) 学習内容の範囲と排列の順序を決めるため。
(c) 学習活動を選ぶため。
(d) 学習の材料を決めるため。
(e) 指導の方法を決めるため。
(2) どのような事がらについて調べたらいいか。
(a) 子どもは、どの程度の理解を持っているか。
(b) 子どもの科学的な能力はどうか。
(c) 子どもの科学的な態度はどうか。
d) 子どもは、どのようなことに興味や関心を持っているか。
(e) 子ども達は、どんな要求を持っているか。
(f) 子どもは、これまでに、どのような経験をしているか。また、どのような遊びをしているか。
(3) どのようにしてしらべるか。
(a) こどもの行動を観察して、これを記録する。
(b) 問を出してこれに答えさせる。
(c) 調査カードを用意して、きにゅうさせる。
(d) 成績品(報告・制作物・ノート・作文など)を調べる。
(e) 調べた結果をまとめる。(第2章 子どもの発達と理科学習 参照)
これらの事項を調査する場合には、調査の結果をいかに整理し、いかに活用するかと言うことを、あらかじめ十分に考えてから着手する必要がある。そうでないと、折角多大な玄人時間を使って調査しても、それが死蔵されてしまうことになる。
調査はなるべく多方面にわたらないように簡単にし、―つの調査では、―つのことをねらわないように計画する事が望ましい。
次に興味調査の一例を乗せる。これは、学習指導要領中学校理科編を編集するのに必要な資料をえるために、文部省がしょうわ24年6月に実施した物である。
調査の方法は
1 全国を9地区と6大都市とにわけ、各地区並びに6大都市について数校ずつ、地域の犠牲を考慮して選択し実施した。(84校)
2 各校では、各学年について男女を含む1学級ずつ計3学級について行う。特に興味や才能のある生徒だけについて調べることのないよい卯にする。
3 調査用紙は無記名とし、男女別・学年別を記入させる。
4調査時間は15分間とする。書くことを思いつかない生徒には、無理に書かせない。
(調査用紙 略)
長打の結果は集計用紙を使って整理した。
1 集計用紙は1年男・1年女・2年男・2年女・3年男・3年女の6とおりにわけて、別の集計用紙に記入する。
2 上の6とおりのおのおのは5種(生き物・空と土・機械と道具・保健・薬品)の集計用紙にまとめる
3 調査用紙に生徒の答を、集計用紙の各項にしたがって分類・集計し、その数を集計用紙の各欄に算用数字で記入する。
次に集計用紙の一例(生物に関する物)を掲げる。
集計用紙 略
(3)社会環境
公園・博物館・水道。貯水池・発電所・電話局・側候所・ガス会社・いろいろな工場・農事試験場・保健所・病院・交通機関などの諸施設(その他会社の現状)
行事(季節的な行事・一般会社の行事・学校の行事など)
(4)自然環境
山・川・野原などの状態(動植物の分布の状態・地形・地質・水質など)
天然記念物
季節の移り変わり(春・夏・秋・冬の生物の生活、天候・気象の変化など)
学習は単に学校内だけで行われるのではなく、広く地域社会を教育の場として行われている。こどもは、学習の必要に応じて、地域社会のいろいろな機関や場所に出かけて、学習を行う機会がしばしばある。したがって、指導の計画をたてるにあたっては、前もってそれらの機関と連絡をじゅうぶんにとって、どのような時期に、どのような方法で、それらの機関や場所に調査や見学のために出かけたり、また、そこからどのような学習の援助を受けるのが適切であるか調べておくことがたいせつである。
そして、それらの調査、または連絡した機関や場所については、これを次のような表にまとめ、必要に応じ活用できるように準備しておくことが肝要である。地図を添えれば、いっそう有効であろう。
| 目的地 | 学年 | 関係ある分野 | 学習しうる内容 | 所在地 | 交通機関 距離・時間等 |
| ○○山 ○○電気株式会社 ○○牧場 ○○郵便局 ○○○ ○○国立病院 ○○天文台 |
1,2,3 5,6 4,5,6, 5,6 4,5,6 5,6 5,6 |
生物の生活・自然 の変化 機械と道具のはたらき 生物の生活・自然の保護と利用 機械と道具はたらき 生物の生活・自然の変化・自然の保護と利用 健康な生活 天体の動き |
植物(野草)・動 物・岩石・地層 電球の製作 牛・やぎの飼育・利用 通信施設 海浜の動植物・海・のりの養殖 病院の施設・伝染病 天文台の施設・天体観測 |
○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ |
電車1時間 徒歩30分 電車45分 徒歩10分 徒歩15分 電車1時間 徒歩20分 電車1,5時間 徒歩20分 (以下省略) |
鳥・虫・かえるなどの出現の日とか、開花の日とかは年によって一定していないけれども、何年間かの観測値を平均しておくと、だいたいの標準をたてることができる。種まき・植付け・収穫等の日を決めるには、雨・霜・雪などの気象要素とともに、これらの生物暦を研究しておくことがたいせつである。
このような研究は、測候所の統計的な研究資料を利用するばかりでなく、学校でも、その土地で観測した事がらを報告発表すれば、広く社会に貢献することにもなる。これらの変化は、土地の高さ・地形等の影響を受けるから、測候所発表のものが、同じ県内でも、そのまま利用できるとは限らない。
季節の移り変わりに見られる生物の生活や気象の変化などについて、日ごろから研究しておかないと、野外観察を計画しても、実際にその場所にいってみると、花の時期が過ぎていたり、虫のよく鳴く時期がすぎていたり、虫の姿がもう見られなかったりして、期待したような学習ができないことがある。
行事についての記録例 (ある年のある学校)
| 月 日 | 行事 |
| 4月1より7日まで 4月4日 4月8日 4月10日 4月11日 4月20日 4月下旬 4月27日より 4月29日 |
緑の週間(西日本 3月1日〜7日、中部日本 4月1日〜7日、 東日本 5月1日〜7日) 始業式 入学式 花まつり 1年生歓迎会 メートル法公布記念日 通信記念日 学校身体検査 結核予防習慣 天皇誕生日 |
| 5月1日 5月2日 5月3日 5月4日 5月5日 5月上旬 5月11日より16日まで 5月11日 |
メーデー 八十八夜 憲法記念日 サンマータイム始まる こどもの日(端午の節句) 遠 足 バード・ウィーク(愛鳥週間) 母の日(感謝学芸会) |
| 6月3日 6月4日 6月10日 6月11日 6月22日 |
動物愛護習慣 虫歯予防デー 時の記念館 入 梅 夏 至 |
季節の移り変わりについての記録例(東京付近)
| 月 | 旬 | 平均気温 | 生物の生活・天象気象の変化 |
| 4 | 上 | 11° | ○こぶし・れんぎょう・ゆきやなぎ・あせびなどの花咲く ○つくし・ぎしぎし・せりなどの摘草ができる。 ○むぎ40cmぐらいに伸びる。 ○とうもろこし・いんげん。しゅんぎくなどの種をまく。 ○おたまじゃくしがたくさん見かけられる。 ○霜が降りたり、みぞれのふることがある。 ○強い南風が砂ほこりを巻き上げて吹くことがある。 ○夜は4°ぐらい、昼は、13°ぐらいの気温の変化がある。 ○そめいよしの満開。 ○じゃがいもの芽が出る。 ○びろうどつりあぶ・きあげは・もんしろちょう・もんきちょう・ひおどしちょう・るりたてはなどが飛んでいる。 ○つばめの姿を見る。 ○へびいちご・かきどおし・たねつけばな・なずな・すみれ・きじむしろなど咲いている。 |
| 中 | 12.5° | ○とのさまがえるの鳴き声を聞く。 ○そめいよしの散って、さとざくら咲きだす。 ○へびを見かける。 ○あしながばち巣をつくりだす。 ○さなえとんぼ・かわとんぼ羽化しはじめる。 ○雑木林の新緑が美しい。 ○とのさまがえるが出てくる。 ○野には、じゅうにひとえ・きらんそう・れんげ・たんぽぽ・すみれ・かきどおし・きじむしろ・へびいちご・さきごけなどが咲いている。 ○おにぐも・くさぐも・あしながぐもの子が小さな巣をはりだす。 ○とのさまがえるの鳴き声うるさいほどである。産卵する。 ○やえざくらの花盛り。 ○たけのこ出さかる。 ○もくれん・はなずおう咲く。 |
|
| 下 | 14.5° | ○もんしろちょうの卵採集によい。 ○かわとんぼ。さなえとんぼ。こおにやんま飛んでいる。 ○なす・きゅうりの苗を植える準備をする。 ○えんどう・そらまめの花咲きだす。 ○とのさまがえるのおたまじゃくしを採集するによい ○露地のチューリップ美しく咲いている。 ○むぎの穂出る。 ○苗代作業はじまる。 ○はい活動しはじめる。 ○雑木林の新緑美しく、春は盛りである。 ○あげは・きあげは・くろあげは飛ぶ。 ○畑に雑草の芽ばえ出はじめる。 ○ふじの花咲きだす。 |
|
| 5 | 上 | 15゜ | ○まつの花咲く。 ○くまばち・すずめばち・はなむぐりなど花をたずねて、とびまわっている。 ○学校の「いねつくり」の学習のために稲の種まきをする。 ○よしきり鳴いて新緑の世界美し。 ○毎日おだやかな天気がつづく。よく晴れた朝など薄氷のはるようなこともある。 ○畑には、キャベツをそろそろまきはじめようとしている。 えんどうの実がつきはじめている。 そらまめも実がつきはじめている。 とうもろこしの芽出る。 ○じゃがいもの土よせをする。 ○キャベツの葉につくもんしろちょうの青虫も大きくなって、さなぎになりはじめている。 ○むぎわらとんぼの姿を見かける。 ○雑木林には、きんらん・ぎんらん・かなびきそう・ つちぐり・おにたびらこ・きんぽうげ・すいばななど花をつけている。 ○南風がよく吹く。日中は20゜ぐらいになることがある。 ○きゅうり・なす・トマトの苗を植えつける。 ○かまきりの卵がかえって、幼虫が出てくる。 |
| 中 | 17° | ○だいこん・菜の類に、せすじさるはむし・だいこんさるはむしがついたので消毒をする。 ○むぎの穂出そろう。 ○やつでの実が黒く熟して、「いろぞめ」などの学習に使える。 ○春の野草多く咲きそろい、植物採集会を開くのによい。 ○もんしろちょうの1回目の発生を終り、成虫の姿がまれになった。 ○潮干狩にいく。 ○水田の仕事盛り、苗代には稲が1.2cmぐらいに伸びている ○はなしょうぶ・あやめ咲きはじめる。 ○はるぜみの鳴き声を聞く。 ○さつまいもの苗を植えるために、畑の整地をする。 いんげん・トマト・きゅうりなどに支柱を立ててやる。 ○かが出てくる。 ○はいがうるさく飛びまわる。 ○じゃがいもつぼみをつけ、さといも芽を出しはじめる。 ○いろいろな毛虫が出て、葉を食べている。毛虫を飼育して、こん虫の育ち方を調べるのによい。 ○さつまいもの苗を植える。 ○こうほね・すいれん・じしばり・うつぎ・あかしや・えごのきの花が咲いている。 ○あわふきむし・しおからとんぼ・むぎわらとんぼ・おはぐろとんぼ・いととんぼなど見られる。 ○つばめ巣をつくり、卵をあたためている。 |
|
| 下 | 18.5° | ○せせりちょう・ひかげちょうの類が飛ぶのを見る。 ○高尾山で、あおげら・あかげら・こげら・かわげらす・さしば・ひよどち・せんだいむしくい・かわせみ・きせきれい・しじうがら・めじろ・おおるり・えなが・きびたき・いわつばめ・おなが・やまがら・ほおじろ・ちごもず・こじゅけい・やぶさめ等の鳥の姿や鳴き声を聞く。 ○もんしろちょう第2回目発生する。 ○どくだみ・ひるがお・かにつりぐさ・かもじぐさの花咲き、初夏らしくなる。 ○梅雨模様の天気が続く。 (以下 略) |
教師は、学校環境を、学習指導のための適切な場として役だてるように常に心がけ、これを整備しなければならない。
理科に特に関係の深いものをあげれば次のとおりである。
校庭・学校内(池)・教室・廊下・資料室・作業室・準備室・児童図書館児童博物館など、(第7章 小学校における理科の施設と材料 参照)
U.年間指導計画のたて方
学習指導の計画をたてる場合,これを1年またはそれ以上にわたる長期の学習計画(年間計画)と月または週を単位とした比較的短い期間の学習計画とに分けて考えることができる。
年間計画は,毎日の計画をたてる場合の基礎になるものである。理科の年間指導計画は,いうまでもなく,その学校の全体の教育計画の一部であるから,その学校の実情に合致したものでなければならない。無批判に他校の計画を模倣しても,その学校の教育の目標を適切に具体化したものにはならないであろう。
1. 年間指導計画は,なぜ必要か
(1)その日,その日の計画をたてるには,長期にわたる指導の見通しが必要である。
(2)予定計画外の問題がこどもから出た場合,それをどのように取り上げたらよいか,また,どのような目標をもって,その学習を指導したらよいかを判断し,全体として調和のとれた指導をするために。
(3)他教科と調和のとれた指導をするために。
(4)学年が進んだ場合に,前学年とそれに続く学年の,学習の体系を保つために。
(5)担任教師が途中で変わっても,指導が中断されないようにするために,長期にわたる指導の見通しが必要である。
2.どのようにして年間指導計画をたてるか
年間指導計画をたてる場合の手順をあげれば,次のとおりである。
(1)予想される学習の問題を選択する。
(a)こどもが,どのようなことに興味と必要を感じているか調査した事がらを整理する。
(b)指導目標に合うかどうかを調べて選択する。
(c)学年のこどもの発達に合うかどうかを考えて整理する。
(2)単元を決め,その目標を定める。
(a)上に述べたようにして選び出したいくつかの問題を,全部含むような,いっそう大きな問題にまとめてみる。これで単元が定まる。
(b)単元を季節や行事などを考えに入れて,年間に配当する。
(c)単元は,どのような目標を含むか吟味する。
(d)おもな学習活動を選択する。
(e)単元の指導を行うために必要な環境を考え,資料を調べる。
(f)単元の評価の方法や資料について調べる。
(3)以上のことを,次の要項に分けて計画表をつくる。
単元名
単元の目標
おもな学習活動
指導期間,または指導時数
指導の行われる環境
必要な資料や施設
他教科との関連
評価の資料
次に年間指導計画表の一例を掲げる。ここに想定した学校は,人口10万人ぐらいの 東京に近い中都市の小学校である。
この年間指導計画表は第3学年のものであり,便宜上(T)表と(U)表とに分けてある。(U)表は一つの単元について,記述するにとどめ,他の単元については,これを省略した。
(T)表中,単元に含む問題は,本書の性質上,特に理科の問題をとり出したのである。(U)表についても,理科の問題について記述するにとどめた。これらの単元に関連のあるその他の問題については,他の教科の学習指導要領を参照されたい。
第5章 学習指導法
1.学習指導法に影響する要素
こどもが望ましい経験を重ね、有効な活動を行うためには、学習指導の計画だけでは十分でなく、すぐれた指導法がそれに伴なわなければならないことはいうまでもない。有効な学習は、学ぼうとするこどもと、指導する教師との協力によって行われるといってよいであろう。
次に、このことを念頭において、学習指導に影響する諸要素について考えてみることにしよう。
こどもが、これまでに経験したことのない事がらや、見たことがあっても、注意しなかったことに出会うと、「なんだろう」とか「なぜだろう」とか疑問を起こすであろう。また、経験したことがあっても、まだ解決のついていないことには同じように疑問を起こす。このように、こどもが興味をもち、解決の必要を感じている場合は、そのことを問題として解決の活動が始まる。
このような問題解決の過程中で
(1)こども自身が満足するように問題を解決する。
(2)問題解決の過程中で、こどもの現在および将来に役立つ理解・能力・態度を養う。この間に新しいことを学んでいったり、新しい習慣を身に付けていったり、新しい感じ方、味い方を体得していったりして、環境に適応した生活をしていく。
この二つの目標を持って指導される活動が学習である。
この学習の効果が、じゅうぶんあがるように指導するには、その方法に、どのような要素が影響するかを、しっかりつかんでおかなければならない。
1.学習するものとしてのこども
学習するにあたって最も必要なことは、学習するものとしてのこどもの実態を、しっかりつかむことである。それは、次のように分けて考えること
***152-159
製作を学習の材料とした場合
例、簡単なおもちゃなど
b.製作や実験などに使う材料が安いか、たくさんある場合、しかも、グル−プで協力してやる必要のないとき
例.花の構造を調べる等
c.基礎的な技術であるため、各自で学習する必要のある場合
例.虫眼鏡の使い方、温度計の使い方等
(2)
a.グル−プ学習を行う場合
i.協力する態度を養う場合
ii.手分けしたほうが問題が解決しやすい場合
例.交代で観察・測定・世話をするとき
一つの問題を分けて、分担解決をするとき
この場合、こどもがその問題を分担して研究する必要性をじゅうぶん感じ、他のグル−プと、自分たちのグル−プの研究とは、密接なつながりがあることを自覚して研究するよう指導することが肝心である。
そうでないと、グル−プごとに、その研究結果を発表し合うとき、たのグル−プの発表は自分たちに関係のないこととして聞く誤に陥ることになる。
iii.能力の違うこどもを、一つのグル−プに集めて、互いに啓発する機会を作る場合
例.グル−プの各員をまとめる能力・企画する能力・記憶する能力・工作する能力・交渉する能力など、各自の能力の違ったものを組み合わせる。
W.能力の大体同じこどもを一つのグル−プに含める場合
例.理解する能力の近いグル−プ
持久力の近いこどものグル−プ、問題をつかむ能力の早いグル−プ。
X.材料のたりない場合
b.グル−プ内の仕事の分担
グル−プ内でめいめいが分担している仕事の種類は、時によっては取り替え、めいめいがかたよらない学習をするように調整することが必要である。
c.グル−プの人数
グル−プの人数を決める場合には、次の点を考える。
i.こどもの社会性の発達
ii.学習活動の種類
iii.学校の施設・材料
低学年では「ごっこ遊び」のような遊びの時は、グル−プの人数は割合に多くて良い。
普通4〜5、10人位までできる。「お花やさんごっこ」のときには、1軒の店を分担するグル−プの人数は2〜3人が適当である。野外学習のときは、花束を作る場合には2〜3人、石を集める場合には、石をめいめいで自分の袋に入れるとしても、ともに行動する人数は2〜3人が適当である。
高学年では、実験・制作・材料集め・見学・訪問等多くの場合、グル−プの人数は4〜6人が適当である。
このように、グル−プの人数は、こどもの社会性の発達と、学習活動の種類とを考えて、適当な人数を考える子とが望ましい。
(3)めいめいで学習するのと、グル−プで学習するのとを組み合わせる
この二つの学習は、一応は別の形式の学習方法であるが、実際こどもを始動する場合には、この二つをまったく別の 物として切り離して行わないで、場合場合に応じて、二つの学習の形式を組み合わせると効果がある。たとえば、めいめいの学習からグル−プの学習にはいり、あるいはグル−プの学習の中間にめいめいの学習がはいるようにする。
***162-165
(1)こどもが、うさぎを手に入れて、それを学級で飼育していこうと相談がまとまった。そこで問題になったのは、どのようにして飼うかということであった。このうさぎの飼い方について話しあっているうちに、どのような飼育箱がよいのか、どのようなものをどれえだけ食べさせたらよいのか、手入れはどのようにしたらよいのか、以上の三つの問題を解決すればよいということになった。
(2)次にみんなで、これらの問題をどのようにして解決できるかを考えた。
すでにうさぎを飼育したことのあるこどもは、これまでの経験を思い起こして、いろいろの意見を出した。これまで経験したことのないこどもは、農家を訪問して調べようとか、教科書に書いてあるから、それを読もうとか、うさぎの飼育について書いてある本を探して読んでみようなど、解決の方法をいろいろ考えた。そうしてめいめいの好みに合い、自分にできる方法によって分担し、研究を始めることになった。
(3)あるこどもは本を読んで調べた。あるこどもは農家を訪れ、飼育しているところを見せてもらったり、農夫の話を聞いたりした。またあるこどもは、上級生に聞いたり、両親に聞いたりした。
(4)こうして調べた事がらについて、みんなで話し合った。そのときに農家
での調べはまだじゅうぶんではないことがわかったけれども、いちおうそれ
らの結果をまとめて結論を出した。
(5)こどもはこれらの結論に基づいて、飼育箱を作ったり、食べ物を用意してこれを与えたり、手入れをしたりする仕事にとりかかった。
さて、うさぎを飼いたいというこどもの要求に基づいて進められた、これまでの学習およびその指導の課程を要約してみると、おのずから次のような五つの段階に分けられる。
| 学習の段階 | 指導の段階 | |
| 1. 2. 3. 4. 5. |
学習すべき問題をはっきりとつかむ。 問題を解決するために計画をたてる。 計画に基づいて、研究や作業を続ける。 研究や作業の結果をまとめる。 まとめた結果を活用し応用してみる。 |
導きの段階 計画の段階 研究の段階 整理の段階 活用の段階 |
こどもたちがうさぎを飼う仕事にとりかかり、その仕事を続けていく間に、うさぎに有害な食物はどのようなものか、食物と成長との関係はどうか、木のようなかたいものをかじることがあるのはなぜか、どのようにして運動するかなどの疑問が、次々に起り、その度に問題が構成され、解決のために活動が展開されることであろう。このときの指導の過程はふたたび上表1〜5の順序をふむのが一般である。
このような指導の過程は、問題解決を目指して行われる指導の特徴であるから、上に示したものより大きな問題を解決する学習の中においても、あるいは、もっと小さな問題を解決する学習の中においても、同じような過程をたどるということができる。
たとえば、一つの実験をする場合を考えてみると、まずこのような段階をふんで、仮の結論を得る。この結論を問題解決に適用してみて、さらに実験をやり直す学習にはる。このときには、また最初の段階から学習がくり返され、本当の結論を得ることになる。このようにいくたびかこの学習の順序がくり返されながら進んで、ついに単元の学習を終えることになるのが普通である。
次に、こどもの学習の順序と、それに沿って進められる指導の過程の関係をわかりやすくするために、表に示してみる。
| 学習の過程 | おもな学習活動 | 指導の過程 |
| 1.問題をつかむ | ・生徒や級友と話し合う。 ・教科書や参考書を読む。 ・映画・幻燈などを見る。 ・話を聞く。 ・見学する。 |
1.指導の段階 ・指導前の調査をする。 ・経験を思い出させる。 ・本の選択・話合いなど の学習活動をたすけ、 |
b.適 用
i. 研究作業にまとまりをつける場合
ii. 個人やグループの研究を他のものに知らせる場合
c.方 法
i.報告の必要と興味をもたせる。
ii.報告のしかたを決める。
(a)手段ー口・文・絵・作品・図表・スライド等
(b)形式ー発表会・展覧会・掲示等
iii.計画に基いて、報告の準備をする。
iv.報告をする。
v.報告事項について話合いをする。質問する。
vi.批評する。(評価)
(13)遊 び
a. 意 義
i.遊びの興味は深く、この興味を満足しようとする強い要求をもとにして、問題解決が自然に行われる。
ii.製作・観察・読書などの活動が自然に取り入れられ、理解と能力とを総合的に身につけることができる。
iii.科学的なものの考え方や、これまで学習したことがどのように役だつかを知ることができる。
b. 適 用
i.主客未分化の低学年で、理解・能力・態度を総合的に身につける必要のある場合
ii.その遊びが、いろいろな活動を含み、指導目標にかない、こどもが興味をもって希望するものであった場合
c. 方 法
i.遊びの目標をしっかりつかむ。
ii.遊びの計画をたてる。
(a)遊び方をどのようにするのかの話合いをする。
(b)遊びに必要な道具について話合いをして決める。
(c)グループに分ける。
(d)必要な道具を用意する。
iii.遊びを行う。
(a)個人またはグループごとに、いろいろくふうして遊ぶ。
(b)必要に応じて、個人またはグループごとに、あるいは全部を集めて遊びの方法について指導する。
(c)よい遊び方を行っているものがあったら、他のグループまたは個人に知らせてやる。
(14)デモンストレーション
a. 意 義
i.自分たちの意見や理解した事がらを多くの人に問い、意見を修正したり、理解を確実にしたりすることができる。
ii.これまでのいろいろな経験をまとめ、体系化することができる。
iii.研究の結果をお互に知らせ合うことから、総合的な理解が得られる。
iv.進んだ科学の研究が、多くの人の協力によって行われることが理解できる。
v.デモンストレーションによって、次のような能力や態度が養われる。
(a)協力する態度 (f)企画する能力
(b)批判的な態度 (g)総合的に判断する能力
(c)計画的に行動する態度 (h)資料・木材を集め活用する能力
(d)余暇を利用する態度 (i)整理整とんする能力
(e)問題をつかむ態度 (j)記録・図形を作る能力
b.適 用
i.グループやクラス全体の研究をまとめ、これを発表する場合
ii. 広く研究のための資料を集め、これをクラス全体の問題解決に活用する場合
iii. 学芸会・こども会その他の集合に、研究や実験などの展覧や公開をする場合
iv. 研究の結論の正否をクラス全体のこどもに問い、その問題に関心をもたせるとともに、できるだけ多くのこどもに理解をもたせる。
c. 方 法
i. デモンストレーションの目的をはっきりとつかむ。
ii. 計画をしっかりたてる。
(a) デモンストレーションを行う期日
(b) デモンストレーションの方法
口頭の発表会・展覧会・劇・公開実験など
(c) 仕事の順序および分担
(d) 準 備
必要な材料・必要な道具・それらの集め方・使い方等
iii.計画に基づいて作業や練習をする。
iv.デモンストレーションを行う。
口頭で発表する。劇をする。実験をする。展覧会・展示会を開く。
v.デモンストレーションの結果を反省する。
(a) デモンストレーションを見たり聞いたりした人たちは、どのような意見をもっていたか。
(b) いろいろな意見のうちどれをとりあげ、またどのようなことを今後の問題としたらよいか。
第6章 評価の方法
第7章 小学校における理科の材料と施設
T 理科の目標
U 能力の目標
A.見る能力と考える能力
事実をありのままに見る能力比較観察する能力数量的に見る能力問題をつかむ能力企画する能力原理を応用する能力事実から推論する能力筋道のとおった考え方をする能力分析的に判断する能力総合的に判断する能力普遍化する能力B. 技術的能力
飼育栽培する能力整理整とんする能力記録・図表を作る能力資料・材料を集める能力資料・材料を使う能力工作する能力機械・器具を使う能力結果を予想する能力
V 態度の目標
W 単元の指導に必要な材料
第1・2学年第2・3学年第4・5学年第5・6学年
誤字、脱字などにお気づきの方は、下記にメールをお願いいたします。
ishihara@ha.shotoku.ac.jp