文部省 1952(昭和27)年2月

小学校学習指導要領・理科編(試案)

昭和27年(1952)改訂版

ま え が き

  この本ができるまで
 昭和22年に学習指導要領理科編の初版を発行してから、その改訂版をいまここに発行する運びになるまでの経過をたどってみよう。
 昭和23年に、文部省に理科研究中央委員会を設けた。この会の仕事は、理科の学習指導に関する研究と理科教育を振興するために、有効な忠言をすることにあった。この会の初期の委員が非常に努力をして成しとげた仕事のおもなものは、理科の目標をまとめたことである。この大きな骨のおれた仕事は、出版物として世に出なかったけれども、プリントの形で各地に送られた。現在では、これを基にして研究されたものが、全国に流布しているものを見かける。
これで、この委員会の仕事がどんなに役にたったかわかる。また、この改訂版を作るにあたっても、その時の研究が基礎になって、はじめて完成することができたのである。
 中央委員会の呼びかけに応じて、同じ年に、各地区ごとに理科研究委員会が自主的に生れた。地区は、北海道・東北・北信越・関東・東海・近畿・中国・四国・九州の九つである。これらの地区委員会は、同じような仕事を目ざしている中央委員会とよく気心を一つにして働き、また、中央委員会の仕事をよく援助してくれた。しかもその間、経費の点で、地区委員会はなみなみならぬ苦心をしておられることを知っている。両委員会を通じて、理科指導にあたる人たちの情熱と持久的態度に接して、心あたたまる思いがするのは、わたくしたちだけであろうか。
 改訂版の執筆に着手したのは、昭和25年の始めであった。この時から、下に掲げる委員のかたがたの手を煩わした。基礎の研究ができているから、本にまとめるのはわけないと思っていたが、取りかかってみると、らくな仕事ではなかった。ついに2年近くを費した。その間、委員のかたがたは、多忙なうちにあって、本書の編集に多大の協力をしてくださった。しかし、なお、すべての委員がもっと研究したいと思う点をたくさんに残している。
  改訂の主な点
 まず第一に述べておきたいのは、理科教育の根本方針は変わっていないことである。
 改めたおもな点は、次のとおりである。
 (1) 理科の目標  教育の一般目標との関連をじゅうぶんに考えた。整理して、焦点をすぐつかめるように表現を改めた。
 (2) 児童の発達  その後の研究をとり入れた。
 (3) 指導計画   新しく加えた。
 (4) 指導の方法  前より詳しくした。
 (5) 単元の考え方 初版にあった不統一をなくした。
 (6) 理科の体系  1年から6年まで、一貫したものがよくわかるようにした。
 (7) 評価の方法  その後の研究をとり入れた。
 (8) 理科の材料  新しく加えた。
  今後の研究を望む点
 この本を書き上げたいま考えると、もっと研究して完成したい点はたくさんにあるが、そのうちで特に著しいものだけ述べておきたい。それは、こどもの発達の問題である。理科の体系をたてるにも、指導の計画をするにも、指導の方法を考えるにも、相手であるこどもをはっきりつかんでいないことには、すべて砂上の楼閣に終わってしまう。このように、最も重大な問題でありながら、その研究がしっかりしていないのであるから、非常に不安であることを告白して、今後多くの教師の奮闘をお願いする。
  この本を使うときの注意
 学習指導要領の本質として、この本は教師にこうしなければならないことを命令したものではない。指導の効果をあげる最良の道は、相手であるこどもにいつも接している受持ちの教師が最もよく知っているはずである。その道を見いだす場合の助け手として、この本が役にたてばよいのである。
 この本に記したこどもは、きわめて概括的にとらえたこどもにすぎない。このとおりのこどもを頭の中に描いて、目の前にいる生きたこどもにおっかぶせてしまうような錯覚を起こさないでほしい。この本の中のこどもは、どこまでも、あなたの目の前の、学習を始めようとするこどもを見るときの参考にすぎない。
  援助をいただいたかたがたへ
 この本を編集するにあたって、委員以外に、そのかたがたの属する学校のかたや、その他多くのかたがたの援助をいただいて、初めてこれだけの仕事ができたことに対し、厚く御礼を申しあげます。
 この本にのせた写真は東京教育大学付属小学校から提供されたものである。 これに対しても厚く御礼申しあげます。
  お茶の水女子大学付属小学校教諭        飯島 幸子
  文部省初等中等教育局初等教育課文部事務官   岡 現次郎
  横浜国立大学付属鎌倉小学校教諭        小川 浩
  東京学芸大学付属世田谷小学校教諭       加藤 嘉男
  東京教育大学付属小学校教諭          近藤 釧三
  文部省初等中等教育局初等教育課文部事務官   谷口 孝光
  東京都杉並区立桃井第二小学校教諭       西沢 二郎
  東京都北区立岩渕第二小学校教諭        西野 成俊
  東京都大田区立小池小学校教諭         萩原 茂子
  東京都中央区立日本橋城東小学校教諭      村井 ちえ子
  元お茶の水女子大学付属小学校教諭       山口 愛子
                       (五十音順 敬称略)
 
第1章 理科の目標
Ι.科学とは何か
   小学校の理科教育を行うにあたっては、理科の根本になる科学について、しっかりした考えをもっていなくてはならない。
 わたくしたちは科学というと、物理学や化学や天文学・生物学・生理学などの学問の体系や、また、それらの学問の応用されたいろいろな物事を思い起こし、非常にむずかしいもの、近づきにくいものと考えやすい。しかし、このような学問上の理論や、体系や科学の成果として生まれた文明の利器が科学なのであろうか。
1.自然現象の事実
 あるこどもがかえるを飼って、その成長の変化を観察して、記録を作った。父親がその記録を見ると、かえるの変態が動物学の本に書いてあるものに比べて、1か月も長い日数がかかっていることに気がついた。それで、こどもの観察した事実がまちがっていると考えて、こどもの記録の日付を訂正して、動物学の本にあるように書きなおした。
 この父親は、動物学の本に書かれたかえるの発生を、そのままうのみにしてしまって、こどもがすなおに観察したかえるについての事実を無視してしまったのである。
 このような取扱を受けたこのこどもは、まちがいのない事実、言い換えれば、自然現象における真実というものを、どういうふうに考えるであろうか。  父親が狭い科学的な知識をふりかざして、こどもがとらわれない心で観察した自然の事実を誤りであると決定したのである。この父親は、「いついかなる場合にも、自然現象には誤ということはあり得ない。」ことを忘れているものである。
 この自然現象を人が解釈する場合に、人の解釈が誤っていることは起こりうることである。科学のことを考えるにあたって、まず第一に重要なことは、この自然現象の真実とは何かを、はっきりわきまえることである。
2.科学の客観性と普遍性
 わたくしたちが自然現象として一つの事実にぶつかった場合に、この事実をどう受けとるかを考えてみることにしよう。
   おたまじゃくしを洗面器で飼っている3年生のこどもがあった。後足が出、前足が出て、尾が短くなったある日、いく匹かの小がえるに逃げられてしまった。こどもはがっかりしたが、別に深くも気にとめなっかた。ところが、翌日また逃げられた。
 再度のことではあるし、かえるのきわめて残り少なくなった洗面器をみたこどもは、「いったい、どうして逃げられたのだろう。」と考えた。こどもはいろいろと、かえるについての経験を思い浮べた。そして、池にいるかえるを考えた。池の中のかえるは、岸や石にはいあがったり、また、水の中にもぐったりしている。
 その事実から、「おたまじゃくしは水の中が好きなのだけれど、かえるになると、陸も好きになるのだろう。」こう考えて、砂や石で洗面器に陸を作ってやり、金網の蓋をした。
 かえるは、水の中を泳いだり、陸にあがって休んだりした。かえるを飼うことがこれでできた。
 わたくしたちも、このこどものように、身のまわりに起ったいろいろなできごとに対して、「これはなぜだろう」と思うことがよくある。そうすると、なんとかして、この問題を解決したいと思い、これまでのいろいろな経験をもとにして考えてみる。
ところが、それではわからない場合が多い。そうすると、ある予想をたてて、いろいろと実際にためしてみる。ためした結果が問題のよい説明にならない場合には、また予想をたてなおして、またためしてみる。そうして、この疑問にしていた事がらがよく説明されるようになると、はじめて納得がいくのである。
 わたくしたちはこのようにして、自然現象について、自分に納得のいく解釈を下して、はじめて満足できるのである。この解釈が自然科学的な知識である。自分に納得がいったのであるから、この人の頭のなかで矛盾のない、調和のとれた一つの自然科学的な知識の体系ができているはずである。
 しかし、この知識の体系は科学としては一つのそぼくなものといわなければならないであろう。さらに、いっそう進んだ、あるいは完全な科学となるためには、納得のいった主体である自分を検討しなければならない。この主体である自分が、単なる一個人限りのものであると、実は科学とはいえない。ここで納得のいったものも、ひとりよがりにすぎないということになる。ひとりよがりでなく、多くの人が判断しても同じ結論が得られるものでなくてはならない。ということは、多くの人の経験した事実にも矛盾しない解釈が下されているということになる。
 これは、科学が主観的なものでなくて、客観性のあるものだといわれることである。また、条件が同じであれば、常に同じ結果が、どこでも、いつでも得られなくてはならない。これが科学の普遍性といわれるものである。納得のいった解釈が、この客観性や普遍性をもっているならば、このような解釈で築きあげられている知識の体系は、完全な科学ということができる。
3.こどもの科学 
 科学をこのように、だれにでも納得される知識の体系と考えると、わたくしたちにとって重要な考えが一つ生れてくる。それは、こどもたちは、それぞれの発達の段階において、ある科学を持っていると考えられることである。

 たとえば、4才のこどもの持っている知識と、7才のこどもの持っている知識とは違ったものであるにちがいない。試みに、4さいのこどもに「おたまじゃくしは何になるの。」と尋ねたら、けげんそうな顔をした。7才のこどもは「おたまじゃくしはかえるになるよ。」といった。
 4才のこどもは、おたまじゃくしの発生についての知識を持っていないが、7才のこどもはより進んだ知識を持っている。
 このように、こどもの知識の体系は、だんだんと発達していくことは、だれにでもわかることである。
 7才のこどもが満足するかえるの発生についての答では、15才のこどもたちは満足しない場合があるに違いない。7才のときの知識の体系よりも、15才になった場合の知識の体系のほうが、より発達したものになっているに違いない。
 科学をこのように、そのこどもの持っている知識の体系と考えることは、おとなや科学者の持っている科学と本質においては変りはない。科学者でも、このこどもたちと同じように、自分の経験や知識では解決されない事がらに問題を持ち、予想をたてて実験を試み、事実と照し合わせて、一つの理解に達するのである。そして、科学者の最も進んだ業績でも、新しい経験を積めば、また訂正されるのである。
 わたくしたちが科学の歴史をひもどけば、このような事実を見いだすことは数えるにいとまがない。科学は常に進歩し、人類の持つ知識の体系は常に変ってきたのである。
おそらく、「個体発生は系統発生をくり返す」ということは、このこどもから、おとなにまで、科学者にまで発達する知識の体系の場合にもあてはまるのであろう。
 こどもたちの知識は年齢が進むにつれて、広く、深くなるのであって、こどもの科学といわれるものは常に進歩すると考えてよいであろう。
U.科学の人生における重要性
1.こどものいだく心の不安定
 洗面器のかえるは、いつまでもやせていた。水そうで飼っているかえるもやせていた。しかも、池の中のかえるよりも発育がたいへんおくれているのはなぜだろうということが問題になった。こどもたちにとっては、長い間自分たちの飼っていたかえるがやせて小さいのであるから、これはかわいそうだ。何とかしてやらなくてはと気になりだしたのだ。
 そこで、話し合いの結果、「きっと、池の中は、わたくしたちの洗面器や水 そうよりも、かえるがすむのにつごうがよいに違いない。洗面器や水そうの中では、えさもたりないのだろう。」ということになり、「こんな所に置いてはかわいそうだから、池の中に放してやろう。」ということになった。
 こどもたちは、かえるを池に放して、はればれとした顔をした。  こどものひとりは、日記に「かえるさん、お前は広いお池に帰ることになって、うれしいだろう。大きくなるのだよ。ぼくもうれしい。」とつづった。
 このこどもたちは、自分たちの飼っているかえるの発育の状態が自然のものに比べてたいへん劣っていることに気がつくと、「なぜ、こんなにやせているのだろう。」と疑問を起し、ふしぎを感じた。この場合、いままでの何等ふしぎを感じていなかった心の状態は、池の表面のように平静だったのであるが、そこに問題を感ずることによって急に波紋が生じたのである。
 池の波紋は時がくればだんだんおさまるが、人の心に起った疑の波は、ますます大きくなるばかりである。このような状態では気がかりで落ちついておられない。そして、なんとかして問題を解決したいと思うようになる。
 ところが、「池に放してやるのがよい」という結論が生れ、それが実際に行われると、この不安は取り除かれて、心はふたたび安定した姿をとりもどす。そこに、「ぼくもうれしい」というような満ちたりた心持になるのである。
 こどもはよく物事に「なぜ、なぜ」と質問をし、それに答えてやらないと、いつまでもせがんできかないが,納得のいく答を与えてやると,「ああそうか」と、すっかり態度をかえてしまうことは、わたくしたちのしばしば経験するところである。

 2.環境への適応
 このように、わたくしたちは、身のまわりの現象や物事について、いろいろの疑問を持つときには,わたくしたちの心のなかに,ある不安が起って何とかして解決したいと思う。これは、自分の住む環境にわけのわからない現象が起っているときの状態である。
 ところで、問題が解決された場合には、これまで持っていなかった新しい理が見いだされるのであって、この理が発見されると、すっかり満足した心持になるばかりでなく、この理をもとにして、新しく出会ってくるいろいろな問題を解釈したり、解決したりするようになる。つまり、新しく見いだされた自然の理(ことわり、筋道)をよりどころとして環境を見なおし、生活に筋道をたてるようになる。これが合理的な生活である。
 それだけではない。わたくしたちの環境への適応は、いろいろな自然の理を組み合わせて、新しいものを作りだすはたらきによっていっそう強められ、その結果は、生活を合理的に楽しく豊かなものにすることができるようになる。 環境への適応は、ひとりひとりのはたらきとしても行えるが、力を合わせることによって、著しく高められる。昔から、多くの人たちの研究の結果として生れた現代の科学が、わたくしたちの生活に貢献しているのは、このようなわけからである。
 科学は、このように、人間が環境に適応しようとして生み出したものであるから、わたくしたちは科学を進歩させることによって、人間の生活をますます平和な豊かなものにするように努力すべきであって、科学を人間の生活を破壊するような方向に使うことがあるとすれば、それはまったくの誤である。それは科学本来の使命ではなく、科学の使い方を誤ったものといわなくてはならない。

 V.理科教育の重要性

 1.小学校教育の中の理科
 小学校教育の中で、理科がどのような使命を果さなければならないかを考えてみよう。
 理科の学習の本質は、日常生活における自然についての経験を組織的に発展させることである。すなわち、身のまわりに起るいろいろな現象や物事に疑問を持ち、これを解決しようとして、予想をたて、実際にためしてみて納得のいく知識を得、これによって生活に筋道をたて、これを応用して、さらに生活を豊かにすることである。
 このような経験の発展をはかるためには、こどものそれぞれの発達の段階において、身近な現象について、正しく見、くわしく考え、適確にその現象に対処する能力を組織的に養うようにはかられなくてはならない。
 ところで、このような科学的な考察や処理が要求されるのは、自然環境についてだけではない。わたくしたちの日常生活のあらゆる面に、科学的に考察処理しなくては、よい生活をすることはできない。このような意味で小学校教育の目標を見れば、すべての目標に達するために科学的な考察と処理のたいせつなことがわかるであろう。
 学習指導要領一般編に示されたとおり、ここでも教育目標を、(1)個人生活、(2)家庭生活および社会生活、(3)経済生活および職業生活の三つに分けて考えてみると、次のようになる。
(1)個人生活
a. 自主的に、すすんで物事を学ぼうとする強い意欲と正しい態度とをもつようになる。
 このためには、自然環境に興味を持ち、自然現象を観察して、その中にひそむ真理を探究する強い意欲がなければならない。また、これは自然現象について見いだした問題を自主的に解決しようとする態度となって現われなければならない。
b. 自然物をたいせつにし、また生物を愛護するようになる。
 このためには、自然の美しさや調和、またその恩恵を感得することが必要であり、生命を尊重して、生物をいたわる情操が養われなくてはならない。
c. 物事を科学的に観察したり、処理したりすることができるようになる。
  このためには、自然の環境や自然現象に興味をもち、これをとらわれない心を持って観察し、科学的な方法を使って問題を解決していかなければならない。また、このようなしかたは、天然の環境に起こる物に限らず人工的な環境の問題や日常生活における責任や仕事の処理にあたっても、同様に使われなくてはならない。物事を科学的に観察処理する場合には、常にみずから理法を見いだそうとする態度が必要である。見いだした理法を、さらに新らしく当面した問題の解決に適用するばかりでなく、進んで新しい物を作り出すことが出来れば、さらに生活が向上するであろう。
d. 自然の美しさや、文学芸術のよさがわかり、このよさを実生活に生かすようになる。
 自然の環境における美しさや調和を見いだし、これを味うことのできる感覚を育てていくことはだいじなことである。
e. 健康で、明るく楽しい生活をつくりあげるのに必要な態度や習慣を養い、自分や他人の健康を守ることができるようになる。
 これの根本になるものは生命を尊重することである。自分の生命を尊重し、他人の生命を同様に尊重し、その結果はすべての人が健康で安全な生活を営んでいけるようにならなくてはならない。このような生活を実現するためには、衣・食・住その他いろいろな面において、自然科学の恩恵によることが大きいのであるから、これを理解することも必要である。
(2)家庭生活および社会生活
a. 絶えず家庭および社会の生活を能率的に営むくふうをして、日増しに生活を向上発展させることが出来るようになる。
 生活を能率的に営むためには、日常生活の責任や仕事を科学的合理的に処理する能力が必要である。また、このように処理するためには、自然科学の近代生活に対する貢献や使命を理解することも、科学的方法を会得して、問題を解決することも必要になってくる
。生活の向上発展は、生活の能率をあげる面からも考えられるが、科学の理法を使って新しい物を作りだして、いままでにない生活をうちたてることも心がけていかなければならない。
b. 他人の健康と自己の健康とは、互に影響し合うことを理解し、公衆の健康を考えて行動するようになる。
 この根本が生命の尊重にあることはくり返すまでもない。公衆の健康を保つためには、科学的合理的な仕方で、衛生上の各自の責任が果たされなければならない。また、衛生学や予防医学の近代生活に対する貢献や使命もある程度理解する必要がある。
c. 常に公私の別をはっきりつけ、強い責任感をもって、りっぱに職分を果たすようになる。
 この職分を果たすためには、科学的合理的な仕方で、責任なり仕事なりを処理することができなければならない。
d. 世界各国の文化の特性を正しく理解し、また、わが国の個性豊かな文化を創造して、進んで世界の文化の向上発展に努力するようになる。
 世界各国の文化の特性を正しく理解するためには、その一部として自然科学の近代生活に対する貢献や使命を理解することが必要になってくる。また、世界の文化の向上発展に寄与するためには、科学の理法を使って、新しい物を作り出すことがなければならない。
(3)経済生活および職業生活
 経済生活および職業生活については、小学校教育では、それらの基礎になる初歩の段階にあるから、一般編に扱ってあるように分けて考える必要はないであろう。それで、著しく関係のある物を抜き出してまとめてみることにする。
a. 生産増強の必要なわけを知るには、自然科学の近代生活に対する貢献や使命を、ある程度は理解しなければならないだろう。
b. 仕事を能率的にするには、科学的合理的な方法を重視しなければならない。また、新しい物を作り出す態度も必要である。
c.資源の愛護については,自然の恩恵を知ることがたいせつである。
d.品物をたいせつに取り扱い,また,絶えず創意を働かして,品物をよく生かして使うには,科学の理法をわきまえて,これを応用したり,新しいものを作り出したりする態度がなければならない。
〔各項目の後に添えた数字は,次に揚げる理科の目標との関係を示す。〕   このような小学校教育の目標に照して,科学の基礎的な教育をはかるのが小学校教育における理科の立場である。

2.理科の目標
 前節において述べた理科の立場や科学の本質から、さらにいっそう整理して理科の目標を詳しく述べれば、次のようなものが強調される。
(1) 自然の環境についての興味を拡げる。
(2) 科学的合理的なしかたで、日常生活の責任や仕事を処理することができる。
(3) 生命を尊重し、健康で安全な生活を行う。
(4) 自然科学の近代生活に対する貢献や使命を理解する。
(5) 自然の美しさ、調和や恩恵を知る。
(6) 科学的方法を会得して、それを自然の環境に起る問題を解決するのに役だたせる。
(7) 基礎になる科学の理法を見いだし、これをわきまえて、新しく当面したことを理解したり、新しいものを作り出したりすることができる。
以下、それぞれについて説明を加えよう。
(1)自然の環境についての興味を拡げる
   生活を豊かな楽しいものにするためには、いろいろな知識を必要とする。このような知識を獲得する第一歩は、物事について興味を持つことから始まる。
   理科で扱う範囲は、自然の環境を中心にした方面である。こどもの自然についての興味は、きわめて身近なものから漸次発展して、直接には見聞のとどかない範囲にまで広がっていく。しかし、このような興味の拡大は、放っておいてもできあがるものではない。そこで、自然のいろいろな環境に興味を広めるようにはからなければならない。
(2) 科学的合理的なしかたで日常生活の責任や仕事を処理することができる
    わたくしたちが毎日の生活を送るためには、いろいろな仕事や責任を果していかなくてはならない。
それには、毎日の生活の責任や仕事が、その責任や仕事の性質や筋道によく合っていることが必要である。
   このような筋道に合うためには、それらをよく見きわめ、筋道に従って事を処理していくことがたいせつである。
   理科では、このような物事の真実な姿をとらえ、それに合うしかたを学ぶのである。理科の指導によって、このような科学的・合理的なしかたを学ぶことによって、日常生活の責任や仕事を正しく処理する事ができるように導くことができる。
(3) 生命を尊重し、健康で安全な生活を行う
    人々のもつ望みの第一のものは健康でありたいことであろう。こどもの時もおとなになってからも、健康で安全な生活を営みうるように学習をすることは、理科の重要なねらいでなければならない。健康で安全な生活は、個人の生活ばかりでなく社会全体の生活がそうであるように考慮することはいうまでもない。
健康で安全な生活ということの根本を考えれば、これは人の生命を尊重することである。すべての人々が健康で安全に生活できるようになるのは、単に保健衛生上の知識や技術が普及しただけではなるものではなく、人々の考え方の根底に、人の生命を尊重する精神がつちかわれていなければならない。
   人の生命を尊重する精神は、その根底において、 広く生物の生命を尊重する精神とつながるものである。いずれの生物にとっても、その生命はただ一つ、 かけがえのないものである。わたくしたちは、身のまわりのいろいろな生物がいわれもなく生命をふみにじられている姿をよく見かけるのであるが、このような生命を軽んずる態度が、ひいては人の生命をもふみにじるにいたるおそれのあるものではなかろうかと思う。理科においては、生命のあるものを扱うことがしばしばある。このような機会に、真に生命を尊重する態度、生物を愛育する態度を養わなければならない。
(4)自然科学の近代生活に対する貢献や使命を理解する
   人間の長い歴史の間の努力によって生まれた自然科学の成果が、こどもたちの環境や生活にしみこんでいる。科学は人間の生活を、ますます豊かなものにしてくれる。このような科学の貢献を理解することによって、こどもたちは、人類の歩んできた努力のあとを知ることができる。そして、人間の科学的な態度が人類の発展と繁栄のためにいかにたいせつなものであり、正しいものであったかを理解することができる。こどもたちは、この科学をますます発展させることの必要さを知ることができる。
   科学は人類の発展と平和のために使われなくてはならない。
   このような使命を、すべてのこどもたちが身につけることによって、科学をますます発展させ、人類永遠の繁栄のために努力するようにしなくてはならない。
(5)自然の美しさ、調和や恩恵を知る
   昔から、自然は母なる大地と呼ばれている。わたくしたちの生命も生活も、自然から起り、自然によって支えられている。
   理科では自然の姿を正しくつかみとるのであるから、自然のわたくしたちに与えてくれるものを合理的に正しく見、正しく味うようにして、自然を愛し、自然の恩恵や調和を知るように努力しなくてはならない。
(6)科学的方法を会得して、それを自然の環境に起る問題を解決するのに役だたせる
   科学の発展の原動力は、科学的な思考や処理の方法である。
   科学的態度や科学的方法が確立されて、近代科学がすばらしい発展をとげた。しかし、このような科学的方法は、科学者だけのものではない。すべての人間が、この方法を会得することによって、社会は発展するのである。
   この人類のみがもちうる方法を、こどもたちがじゅうぶん会得することによって、こどもたちは自分の当面する問題を正しく解決することができるようになり、生活をいっそうよりよいものにすることができる。
   科学的な方法は、天然の環境の問題を解決することばかりでなく、広く人工的な環境の問題にまで及ぼすことによって、人間の生活のうち、自然の理法を根底にもつ問題を正しく解決するようにはからなくてはならない。理科の学習は、このような問題の解決を中心として展開する。
   物事や自然の現象に含まれる理は、このような問題解決に科学的な方法を正しく適用する時に使われるものなのである。
(7)基礎になる科学の理法を見いだし、これをわきまえて、新しく当面したことを理解したり、新しいものを作り出したりすることができる
   科学の成果の教えるところによれば、複雑な自然の現象や物事の間には、いくつかの基礎的な理法あることがわかる。このような理法を理解すれば、いろいろな当面する問題を解決することができたり、新しいものを生み出したりすることができることがわかる。
   小学校のこどもたちにも、このような基礎的な科学の理法を、こどもたちの能力に応じて理解させることができる。
   日常生活を科学的・合理的に処理するには、自然の理法をわきまえていなくてはならない。この理法をわきまえるには、こどもが直接に自然現象にぶつかって、その中から理法を見いだすことから出発すべきである。このようにして身についた理法は、次に現われた問題の解決に適用されるようになる。また、さらに進んで、その理法を活用して新しいものを作ったり、新しい方法を考え出したりすることができるように導かれなくてはならない。

W.理科教育における理解と能力と態度
 前節に述べた七つの目標の中には、いろいろな形のものがある。
 たとえば、(1)は自然の環境について興味を拡げようとするのであるから、むしろ、こどもたちの情意に訴えようとしている。こういうふうに考えれば、こどもの態度についての目標であり、(2)は科学的・合理的なしかたをねらっているのであるから、むしろこどもの能力をも含めて考えられている。また(3)においては、態度や能力ばかりでなく、生命や人間に対する科学的な知識や理解をも要求されていると考えられるであろう。
 このように考えてみると、これらの目標はいろいろな理解や能力や態度が混然として示されている。そこで、これらの目標を理解・能力・態度の三つに分析してみることが便利である。

 1.理解の目標
 理解というのは、自然現象や物事に含まれている筋道をつかむことであり、理解の目標として考えれば、自然科学的な真理の形で表わされるものである。このような理解はこどもの発達につれて深められるものであるが、これが発展すれば、わたくしたちの住んでいる地球や宇宙や生物や、また人間の地球上において発展展開してきた根本の理法にまで進むものでなくてはならない。そのような人間の自然についての根本的な理解の概念に到達するものとして、こどもたちに学ばせなくてはならない目標を考えてみる必要がある。
 次に掲げるもの(T,U,V,…,Y)は、このような立場にたって、こどもが何かを理解するために学習するときの方向を決めるものとして、まず第一次の分析をしたのである。
 このような目標は、どのような学年のこどもにも目標としてとることができる。いや、そればかりでなく、一生の間、目標として研究しつづけることも可能であろう。これは、学習の到達点ではなく、学習や研究の方向を示すものなのである。 そこで、さらにこどもたちの直接の学習の到達点となるためには、さらに分析して考察する必要が生れるであろう。このような立場から、さらに第二次の分析をして、理解の目標をいっそう具体化したものが1,2,3,……であるが、実際の指導にあっては、さらに分析の必要のあることはいうまでもない。
 T.宇宙は広大であって、そこには一定の秩序が保たれている。
  1.太陽 ・地球・月は、一定の秩序に従って動く。
  2.星は一定の秩序に従って動く。
  3.時は太陽と地球との関係で決められる。
  4.太陽は地球に大きな影響を与えている。
 U.自然界には、絶えず変化が起きている。
  1.地球の表面は、いつも変化している。
  2.地球の長い年代の間に住んでいた生物の種類は同じではない。
  3.天気はいろいろに変る。
  4.気候は地域によって特徴がある。
  5.物はいろいろな原因によって、その状態や実質が変ることがある。
  6.熱はいろいろな原因で起り、温度の高いところから低いところへ移る。
  7.水はいろいろに状態を変えて、空と土との間をめぐる。
  8.物の運動の速さや方向が変るときには、力がはたらいている。
  9.音は物の振動で起り、物によって伝わる。
 10.光が進むとき、方向が変ったり、吸収されたりすることがある。
V. 生物や無生物は多種多様である。
  1.生物には、いろいろな種類がある。
  2.住んでいる生物は、どこでも同じではない。
  3.子と親と似ているが、全く同じではない。
  4.物はいろいろな成分からできている。
  5.物は、その特性によって固体・液体・気体に分けられる。
  6.地殻は岩や石や土などからできている。
  7.機械や道具には、いろいろな種類がある。
W.生物は環境に適応して生きている
  1.生物はふえる。
  2.子は決った発育をして親になる。
  3.生物はいろいろな構造をもっている。それにはいろいろなはたらきがある。
  4.生物はいろいろな環境の変化の影響を受ける。
  5.生物は、いろいろなものをとり入れ、体内で変化して生きている。
  6.生物は互いに侵したり助け合ったりして、自然のつりあいがとれている。
X.保健衛生上の注意は、人々の生命を安全にする。
  1.人のからだの構造・はたらき・状態の研究は、健康を増進するのに役だつ。
  2.日光・熱・湿気・水・空気・土は健康に影響する。
  3.すまいや着物の構造や使い方は、健康に響影する。
  4.いろいろな種類の食べ物を適当に組み合わせて、適当にとらなければ、健康は保てない。
  5.食べ物は、たくわえ方や料理のしかたや食べ方が悪いと、栄養上の価値がじゅうぶんに活かされない。
  6.適当な運動や休息は、健康を増進する。
  7.健康を保つには、けがや病気の予防と適当な手当とが必要である。
  8.病気にはうつるものがあり、その病原体は、食べ物・水・空気・動物などの仲立ちでひろがる。
  9.伝染病の予防は、すべての人が力を合わせなければ、完全にならない。
Y.人は環境に適応する努力を続けた結果、その生活は進歩した。
  1.人は生物を利用して生活している。その保護をはかることはたいせつである。
  2.天然の災害は、いろいろな方法で軽くすることができる。
  3.地下や海の資源は、産業や日常生活に利用されている。
  4.燃料・動力・機械を使うことによって、人の生活が変った。
  5.磁石や電気を使うことによって、人の生活が進んだ。
2.科学的な能力や態度
こどもが理科の問題を解決する場合や合理的な生活を営むためには、科学的な能力や態度が必要である。このほかに、習慣や鑑賞や興味などを分けて指導の目標とする場合もあるが、取扱上複雑になり、また、分けないでも格別の不便もないと思われるので、これらは態度の中に含めることにした。
 教科書を読んだり、いろいろな参考書を読んだりする場合に、読みながら要点をつかむことの重要なわけがわかって、それに努めていると、だんだんそれができるようになる。そして、一度このような能力が身についてくると、新聞を読む場合にも、人の話を聞く場合にも、その要点をつかむことができるようになる。このようなときに能力ができたという。
 一般に能力とは、一つの事態に熟練した結果、他の新しい事態に対する適応力のついた状態をさしていう。
健康なこどもになるには、健康が社会生活を営む上にどんなにたいせつであるかとか、健康な身体というのは生理的にどんな状態にあるかとか、どんな場合に病気になり、また、その時の生理的なはたらきはどうなるかとかいうようなことがよくわかっていなければならない。
 このようなわけがわかってくると、こどもたちは、進んで健康な生活を営もうとする気持になる。このように、ある事態に対して現れる思考的・情緒的・行動的反応の傾向性をさして態度とよんでいる。
 また、朝は早く起きて歯をみがき、戸外に出てきれいな空気を吸い、勉強のときも、よい姿勢でしようという努力を続けているうちに、それらがなんの苦もなくできるよううになる。このようになったとき、習慣がついたという。態度のうちの行動的な傾向を特に習慣といっている。
 さて、このような能力や態度は、小学校のこどもとして、どのようなものが必要であるかを考えてみる必要がある。ここに、能力や態度の分析が必要となる。このような分析を厳密に行うことは非常に困難なことである。そこで、学習指導要領の委員会では、取扱の便宜上から著しく目だつものを抜き出してみることにした。
 ここに抜き出した能力や態度は、まったく厳密な区別のつくものではない。たとえば事実をありのままに見る能力と比較観察する能力とは、まったく無関係に独立したものではない。しかし、また、まったく同じものでもないであろう。ただ、事実をありのままに見ることもできなければならないし、比較観察もできなければ、科学的な問題の解決は望めないであろうと思われる。
次に揚げる能力・態度は、このような立場から抜き出したものである。今後、わたくしたちはなお研究を続け、より科学的に能力・態度を分析するよう努力したいと思う。
A・能力
(1)見る能力と考える能力
   事実をありのままに見る能力
   比較観察する能力
   数量的に見る能力
   問題をつかむ能力
   結果を予想する能力
   企画する能力
   原理を応用する能力
   事実から推論する能力
   筋道の通った考え方をする能力
   分析的に判断する能力
   総合的に判断する能力
   普遍化する能力
(2)技術的能力
   資料・材料を集める能力
   整理整とんする能力
   飼育・栽培する能力
   機械・道具を使う能力
   工作する能力
   材料を使う能力
   記録・図表を作る能力
B・態度
   環境に興味をもつ態度
   みずから進んで究明する態度
   協力する態度
   批判的な態度
   事実を尊重し、実証する態度
   専門家の意見を尊ぶ態度
   迷信や宣伝にとらわれない態度
   新しい考えを取り入れる態度
   道理に従う態度
   計画的に行動する態度
   注意深く正確に行動する態度
   根気よく物事をやりとげる態度
   余暇を利用する態度
   健康・安全に身を保つ習慣
   自然に親しむ態度自然の調和や恵みを感得する態度
   生命を尊び、生物を愛育する態度
   科学を尊ぶ態度
   科学を日常生活に応用する習慣
   新しいものを作り出す態度
 能力・態度。理解の発達
 これらのこどもの発達についての知識を、指導の際 どのように適用したらよいかということについては、第2章のVに述べることにする。
以上に述べた能力や態度の分析されたものは、指導の目標にすることはできるであろうが、実際の指導にあたっては、少し大まかすぎて、特に効果判定などには、不便を感じることが多いであろう。この点は、理解の目標も同様である。そこで、さらに具体的な指導の場合には、いっそう詳しく分析してみる必要がある。これらの一例として、付録に、理解・能力・態度について、詳しく分析した例を揚げておいたから参照せられたい。これらの能力や態度の表は、不備な点が多いが、どんな場合に、また、どのような事がらについて、焦点をおいて向上させたらよいかを考える場合の手がかりとなれば幸である。

第2章 こどもの発達と理科学習

T.こどもの発達を考えるわけ

 こどもに1mmの目もりを読むことを指導しようとする場合に、こどもの目が1mmの間隔のある2本の線を識別することができる程度に発育していなければ、どんなに指導に骨をおってみたところで、骨おり損に終わる。指導してみたいと思う事がらも、指導の方法もすべて、それを受け入れる側のこどもの発育の程度を基礎にして、その上に築かれなければ意味のないことになる。理科の指導や学習について考えるにあたって、第一に取り上げなければならない問題として、こどもの発達ということがある。まず、この問題のもつ意味について、もう少し考えてみよう。

 1.こどもを理解するために
(1)こどものどんなことを理解するか
  こどもは、その内にあるいろいろのものが密接な関連をもった全体として 発達していくものであるが、これを研究する場合には一応分析して考えてみることも必要である。ここでは、次のように分けて考えてみよう。
A.身体の発達を理解する
 たとえば、筋肉は年齢が進むに従って、どのように発達していくものであるかがわかれば、年齢に応じて、実験や作業の適切なものを選ぶことができる。
   また、持久力の発達の程度が理解できれば、継続的な実験観察は、どのくらいの期間が適当であるかを決めるのにも役だつ。このように、身体的の発達の程度を理解していることによって、無理のない指導をすることができる。
B.社会性の発達を理解する
 たとえば、グループは、どのくらいの人数で、どのように扱ったらよいかを考える場合、集団的組織的な行動についての発達の程度を理解していることが必要であろう。
 また、性的に違った行動が現れてくる時期や程度がわかれば、男女による興味や関心に応じて、適切な指導ができる。
C.情緒の発達を理解する
 たとえば生物に対しての愛情がどのように発達するかがわかれば、どの年齢の時期に、どんなものをどんな方法で飼育するようにしむけたらよいかがわかる。
 また、身体的な直接経験に興味をもつか、あるいは抽象的な思考に対して興味をもつかがわかれば、それに応じた指導ができる。
D.知的発達を理解する
 たとえば、客観的に考察できる発達の程度とか、推論する能力や抽象作用の発達の程度など、知的の発達の程度を理解すれば、こどもの持っている能力をじゅうぶんに発揮させるこ
とができるし、こどもの能力以上のものを要求して、興味を失わせることもなくなる。
 このように、こどもを理解することがもとになって、こどもの能力をいっそう伸ばし、理解を深め、好ましい科学的態度を養うことができるようになる。
(2)どうすれば、こどもを理解できるか
 まず第一に、これまで研究された資料などにより、こどもの成長発達の一般的な傾向を、おおまかに知ることである。
 こどもの心理的傾向を、身体的な発達の段階・社会的発達の段階・情緒的な発達の段階・知的な発達の段階に分けて、これらの各面から見て、年齢とともに、どのように発達していくのかのだいたいの傾向をつかむことが大切である。
 次にだいたいの傾向をつかんだ上で、これに照らし合わせて、個人の発達を考え、受持ちのこどもひとりひとりについて観察を進めて、そのこどもの個性を理解することである。
 それには、いろいろな評価の方法がとられるが、このひとりひとりの観察から得た事例の集積が、あるこどもの個性の理解に役立つのである。またそれによって、その学級の傾向もつかむことができるから、観察の集積をおろそかにしてはならない。

2.学習の効果をあげるために
 学習の効果をあげるためには、こどもの意欲や興味の中心を知り、こどもの理解・能力・態度の範囲と程度を知ることが必要である。
(1)興味の中心を知る
 興味が強く働いた場合には、学習の意欲もそれに伴うものである。こどもの興味は年齢とともに変わるものであるから、こどもの興味の発達を理解することによって、学習の時の興味の中心がどこにあるかを知る手がかりが得られる。
 しかし、ここに注意しなければならないことは、こどもの興味の中心を知るには、教師がこどもと、日ごろ生活をともにして、その観察から得られたものほど大きなものはないということである。 こどもの興味の中心がよくつかめない場合は、教師とこどもが心隔てなく生活していない時に起こることが多い。
(2)学習の範囲と程度を知る
A.理解について
 こどもの発達を考えることによって、こどもが現在もっている理解の程度と、到達しうる限度がだいたいわかる。
 こどもがある事物現象に対して、現在どの程度に理解しているかがわかることによって、その理解を出発点として、さらにその理解を深める目標がたち、学習の効果があがるように指導を展開することができる。
B.能力について
 こどもの能力の発達の程度を理解すれば、その能力を無理なく、じゅうぶんに使って、さらに伸ばすことができるし、能力以上を要求しない結果、こどもは満足感を味わい、学習の興味が長く続いて、学習の効果をあげることができる。

C.態度について
   こどもが興味をもち、能力をじゅうぶん使って問題を解決していく過程には、いろいろな科学的な態度が芽ばえている。
   この芽ばえを育てるには、この科学的態度が現われた時、それを見のがさないで捕え、それを伸ばしていくことが必要である。このためには、このためには、こどもの発達を理解していることが必要になってくる。
 指導の目標(理解・能力・態度)をたてるにあたって、こどもや社会の要求を考慮することはもとより必要なことであるが、こどもの発達に応じてたてられなければならない。
 一般的な目標がこうであるからといって、そのままそれをうのみにしたので
は、その学校や学級の指導目標が固定化されて、うまくいくはずがない。

3.効果のある指導法を選ぶために
 およそ指導法は、その学級のこどもの経験の程度や、教師の経験の程度に応じて、最も効果のあるものが選ばれなければならないことはいうまでもない。ある学級の指導の方法がたいへんよかったからといって、自分の学級にそっくりそのまま適するとは限らない。
 どのような学習活動なり、どのような指導方法なりが、学習の効果を上げるのに適しているかということは、日ごろから自分の受持つこどもの発達を研究しえおいてこそ、初めて判断がつくのである。
 学習に対するこどもの興味を持続し、能力に応じた指導をするためには、次の諸点を考慮する必要がある。
(1)どのような学習活動を起させ、また経験させることが効果的か考える。
(2)どのような順序で指導していくことが効果的か考える。
(3)教師が学習を助ける場面と、程度を考える。
(4)どのような時に学習を個別的にしたほうが効果的か、グループにしたほうが効果的かを考える。 

U.理科のプログラムに影響する小学校のこどもの発達
 こどもの発達は、いろいろな面で常に理科のプログラムに影響を与えている。
次に、身体・社会・情緒・知能の各方面からこどもの発達をながめ、その中で、特に理科のプログラムに影響するものをあげてみる。

1.身体の発達について
A.低 学 年
(1)この期のこどもは元気がよく、活動性が強くて、すわって静かにしていられないで、動きまわり、はねまわる傾向が強い。それで、絵をかくことや、物を作ることなどのような作業的な学習を多く取り入れるとか、動作の多い遊びの形態をとるとかするのがよい。
(2)こどもは、ひとつの活動を長く続けることができないで、すぐあきてくる。それで、適当に休みの時を置いたり、すわったり、立ったりして、活動に変化を多くすることがたいせつである。
 また、見ること、聞くこと、書くこと、話すことなど学習活動に変化をつけると、学習が長続きする。
(3)まだ筋肉の発達がじゅうぶんでなく、細かく筋肉を使う動作はできない。それで、筋肉をおおまかに使うように、絵を書く場合なら、できるだけ大判のものを使うとか、種まきをする場合なら、粒の大きなものを使うような心構えが必要である。
B.高 学 年
(1)活動が活発となり、非常に精力的になって、事故を起こしやすくなる。
  おもしろいと思えばいつまでも続け、身の危険を忘れて断崖の花をとったり、高い木に登って虫を捕まえたりする。
  目新しいものを非常に喜び、何事もやってみようという意欲に燃える。
(2)忍耐力が発達してきて、断続的な飼育栽培や測定も、やりとげられるようになる。
(3)体力や筋肉の運動が発達し、細かい運動もできるようになる。それで、顕微鏡を用いて極微の世界を研究したり、望遠鏡で天体を観測したり、薬品を適量用いたりするなど、しだいに精密な道具や機械・器具を扱えるようになる。

2.社会性の発達について
A.低学年
 (1)教師や両親に対して絶大の信頼と愛情をもっていて、教師や両親の命令や示唆によって学習し、自発的な活動が少ない。
 (2)友だちやおとなのしていることをまねて、行動することが多い。
 (3)友だちの数は少なく、交際は浅い。友だちはできやすいが長く続かない。それで、学習の時、長い時間同じ友だちと協力する仕事は適当でない。グループ活動は少人数(4〜6人)が適当である。
 (4)自己中心の考えが強く、友だちどうしの信頼と尊敬がうすく、友だちの主張を認めにくい。協力性が少ない。
  グループで協力してやる場合にも、めいめいでする仕事の範囲を決めて与えるようなくふうが必要である。どういう能力のあるものがリーダーに適当であるかを判断する能力はなく、ややもするとその時その場で、元気のよいもの、でしゃばりものがリーダーの役をする傾向がある。 (5)性的な区別は感じていない。研究や観察をする時、男女を一つのグループに入れ、同じに扱うのがよい。
 (6)自分の考えをまとめないで、他人の言動にひきずり込まれる傾向があるひとりのこどもが発表すると、確かめもしないで同意するので、往々ゆがめられた結論を出すことさえもある。

B.高学年
 (1)グループになって,一つのまとまった仕事を協力していることができるようになる。たとえば,みんなで植物採集をやったり,協力して天体や気象を観測したりする。
   グループの一員としての責任観念は,まだじゅうぷんではないが,しだいに高まっていく。
 (2)教師や両親の意見に対して批判的な態度が強くなる。命令や知識についても,そのまま無批判に受け入れなくなる。
 (3)自分で実験や観察をして,事実に基いた理解を得ようとする。ある程度の示唆が与えられると,自分で問題を解決する能力が高くなる。
 (4)グループが大きくなり,しかも,その中の秩序が保たれるようになる。優秀な人を認識してリーダーに選ぷことができ,また,そのリーダーに従って活動するようになる。
 (5)男子は男子のみのグループ,女子は女子のみのグループを作る傾向が現われる。
 (6)男子では,腕力の強いものが,教師の目の届かない所でリーダーになる傾向が時には生ずることもある。
 (7)競争心が強くなるので,違った意見の予想の出た場合に,個人またはグループで競争的になることがある。グループの学習では,他のグループより,よい結果を示そうとして,計画を秘密にすることさえある。

 3.情緒の発達について
A.低 学 年
 (1)感情は,泣くとか,わめくとかいうような,外面に現われる表現をとる,身体全体で表現することが多い。
 (2)こどもの恐怖は,暗いとか,大きい音いやな音とか,絵にかいてあることを見た結果とかから,直接に起る傾向がある。
 (3)両親に対して,絶対的な愛情と信頼をもち,兄弟に対する愛情も現われてくる。友だちに対して愛情はふじゆうぶんであるが,しだいに高まっていく。
 (4)自分の持ち物や身体について,他から侵されると強く怒る。これは野外での学習の時、見つけた物を取り合ったりすることに現われる。
 (5)愛情を独占したい欲望をもっている。家庭では兄弟に対してのねたみが強いが,学校では,友だちに対するねたみは,あまり強くない。
  物に対する愛情は,個人差がはなはだしく,一般に,自分の飼っている動物に対しては,他の動物に比し,非常な愛惜をもつ。
 (6)好奇心が盛んで,見る物,聞く物に対して広く興味をもつ。特に,
  (a)動かないものより動くものに(植物より動物)
  (b)色彩の暗いものより,あぎやかなものに対して興味が強い。
 (7)性別による興味の差は少ない。
 (8)絵話・漫画・童話・昔話に興味をもち,それが非科学的な物語であっても,すなおに受け入れる傾向がある。
 (9)動物や植物の収集に興味をもっている。いろいろな花を集めたり,落ち葉を集めたり,貝がらを集めたり,ありを集めてぴんに入れたりすることに,大きな興味を感じる。
B. 高 学 年
 (1)感情の表現は,涙ぐむとか,くちぴるをかむとか,顔色を変えるとかして,できるだけ目だたない表現をとろうとする幌向がある。
 (2)絵や事物から直接受ける恐怖のほかに,薬品・ばいきん・爆発物・刃物等に対して,思考・判断・推理・連想等によって導き出された恐怖をいだく。
 (3)愛情は家族に限られず,友だちにまで広がるようになる。
  生物に対する愛情もしだいに高まっていく。
 (4)社交上・道徳上のことに関して,正義感・責任感が強くなる。
   グループ学習の際協力しなかったり,責任を果さなかったりすると,怒ることがある。
 (5)競争心が現われ,その結果,友だちに対して,ねたみをもつ場合がある。
 (6)同情心・あわれみの心が発達する。また,しゅう恥心が強くなり,まちがうと恥ずかしいという気持から,発表をきらうこどもが現われる。
  失敗をすると言いぬけをしたり,次の仕事に移ったりして,これをかくそうとする傾向がある。
 (7)頭をひねったり,くふうしたりすることに興味をもち,なぞなぞ・知恵の輪などを喜ぶ。家庭用具や身のまわりの品物を改良したり,保存法を考えたりするようになる。
 (8)興味をもつ自然物自然現象の範囲が広くなって,動くものだけでなく,静的なものにも興味をもつ。
  一つのものに対する興味も長く続くようになる。
 (9)性別による興味の差が出てくる。男子は機械に対して多くの興味をもち,女子は衣食住に関することに興味をもつ。
 (10)物語に興味をもち,特に変化に富む筋書・冒険的な物語・現実味のある物語・科学の本を読むことを好むようになる。
 (11)男子は未知の世界にとびこむ意欲が強く,むてっぽうに実験などをすることがある。
 (12)こん虫・貝がら・鉱物・岩石・植物・衣服の布地・切手・マッチのラベル・食物のラベルなどを集めることに興味をもつ。

4.知的発達ついて
A.低 学 年
 (1)親・兄弟・友だち等遠慮のいらない人とはよく話をするが,知らない人や改まった席では,ことばがすらすらと出ないことが多い。俗語や品の悪いことばと,上品なことばとの区別ができない。大声で話すことが多い。
 (2)自分がこうしたとか,友だちがこんなことをしたというような,自分が見たり聞いたりした直接の経験について話をする。
 (3)主客がまだ分れない時期で,観察は直観的であり,判断は直覚的である。
  花や木やきんぎょが自分と同じく話したり,聞いたり,考えたりできると信じている。
 (4)実物観察の場合,見方がおおざっぱである。その結果の発表は,外から見えることだけを思いついた順序に並べる程度である。
 (5)想像画を多くかく。実物を見て,ありのままにくわしく写しとることはできない。
 (6)数観念は具体的である。すなわち,実際のものについて数えることが主である。
 (7)考え方は具体的で,抽象することはできにくく,抽象された概念の理解も困難である。
 (8)注意力が長続きせず,努力を集中することができにくいので,ちょっとした困難につきあたっても,中止する傾向がある。
  継続観察や精密な実験はできない。
 (9)観察の方法や,実験の手段について,自分で創意くふうしようとしないで,教師のいうままに動く傾向がある。
 (10)観察や実験を通しても,主観的な判断を下している場合が多く,客観的に真実をつかむことが少ない。
 (11)1,2年では,1か年前と1か月前の区別,1か年と1か月の長さ等の時間的の経過を理解することは困難である。
 (12)行為の結果だけを見て善悪を判断し,過程を重視しない。また,結果となって現われた事実だけを見て,その原因やその結果に到達した過程に注意しない傾向がある。
B.高 学 年
 (1)使うことばの数が多くなり,読書力が進んで.学習に参考書が楽に使えるようになる。
 (2)実験や観察したことを忠実に記録したり,写生したりすることができるようになる。
 (3)自分と離れて外の他界を考えられるようになり,生物・無生物の区別がはっきりしてくる。
 (4)抽象的な数概念ができる。数や量の範囲が拡大されて,星や地球についての大きさや,隔りなども考えられるようになる。
 (5)観察・実験・飼育・採集などを好み,これらのはたらきを通して,抽象した概念を理解する能力がしだいに高まる。
  さらに進んでは,抽象した概念をそのまま習得しうるようにもなる。
 (6)結果だけを見て判断することなく,原因や経過を考えて判断するようになり,推論ができるようになる。
   たとえば,雨が降る,風が吹くというような現象から,どんな影響が生じるかを考えるようになる。
  一つの実験や観察を初めから終りまで企画して行うことができるようになる。
 (7)時間的経過に対して理解ができるようになり,長期にわたって変化するものを,継続的な実験観察を通して理解ができるようになる。長期にわたって問題解決もできるようになる。
 (8)客観的な見方がしだいに進んでくる。実験や観察を通して,客観的な真実をつかむようになる。
 (9)劇・絵画・音楽などによる表現を自分で企画するようになり,これを楽しむようになる。
 (10)討議を好むようになる。観察や実験の方法や研究結果について,自分のやったことを基礎にして討議するようになる。

V 理科教育におけるこどもの発達の適用

 Uでこどもの発達を,身体の発達・社会性の発達・情緒の発達・知的発達の四つに分けて考えてきた。
 このようなこどもの発達の傾向を,理科を指導する場合,どのように適用していったらよいであろうか。
 理科の指導は問題の解決を中心として行われ,こどもは,その学習の過程を経て発達し,その結果として科学的な理解や能力や態度が身についていく。この理解・能力・態度は,ばらばらなものではなくて,互に密接なつながりをもったものであるが,いまこどもの発達の適用を考えるにあたっては,一応理解・能力・態度に分けて考えたほうが理解しやすいので,以下この分析に従って述ペることにする。

1.能力の発達と適用
 能力というのは,何々することができるというはたらきである。一つの事がらに熟練した結果,他の新しい事がらに対する適応力のついた状態をさしていう。
 ところが,このような能力の中には,技術の使い方が身について,それと共通な性質をもっている他の場面に適応できるような能力がある。理科では,能力のうち,主として考えたり見たりするものを,「見る能力と考える能力」とし,後者の技術的な能力を「技術的能力」として分類した。

A.見る能力と考える能力
 (1)事実をありのままに見る能力
  事実をありのままに見るというのは,先入観をもたないで客観的に正しく,くわしく,すなおに見ることである。こどもは,ただ1回の経験で,すべてをおしはかってしまうような傾向を示すことがあるが,そのような態度を改めるのにも,この能力が高められる必要がある。
  低学年のこどもは自己中心の考え方をすることが多い。また友だちやおとなのすることをまねることが多いので,物をありのままに見ることがむずかしい。
  学年が進むに従って,仮空の世界から離れて,現実の物をありのままに見ることができるようになってくる。いいかえれば現実の物を正しく見ることができるようになる。
  このような傾向も3,4年の時にはじまり,5,6年になると一般にきわめて盛んになる。
  低学年の時代の,自分と対象物との区別がつかなかったり,擬人化して考えたりする傾向から,だんだんと客観的な見方に導くには,仮空なもの,実在するものとの区別をつけていくようにしむけることが望ましい。高学年ではともすると,狭い経験範囲で物事を判定してしまう場合がある。このようなときには,なるベく多くの経験を集めることもたいせつであるが,改めてその事実を見直させる必要がある。

 (2)比較観察する能力
  ある物事とある物事とを比べて,そこに現われる異なる点,同じ点を比べてみることである。これには,ただ物と物との比較もあるが,一つの現象と他の現象との間に関係的な意味を見いだすということも含まれている。
  低学年のこどもは,物をありのままに見る能力がまだじゅうぶんでないために,一般的には比較観察の能力は低いということがいえる。
  しかし,切ったようかんの大きさを見わけたり,花や色紙の色彩のあざやかなものをより出したりするところにこの能力の芽ばえがうかがわれる。
  一般にこの能力は,興味・好ききらい・利害などと密接に関係して現われることが多い。
  1,2年生では,色の区別は敏感であるが,形の区別はそれに伴わない。
  共通点をみつけるよりも,めだった点や違ったところをみつけることが先にできる。
  3年生になると共通点もみつけることができるようになる。
  4年生以上になると,二つより多い物の異同を比較観察することができるようになる。
 比較観察することによって,問題をつかむこともあるが,研究調査の場合に多く必要とする能力である。特に,実験や観察などにおいて,どれだけの違いや同じ点があるかというような場合や,実験から結論を導いたときに,その結論が正しいかどうかを吟味するような場合に,この能力が練られる。

(3)数量的に見る能力
  この能力の一部は比較観察の能力の中に見ることができる。草花の成長を数量的に見るという場合は,一つの事がらを時間的に,数量的に見るのであるが,二つの現象の関係を数量的に見る場合も出てくる。また一つの現象を分析して,二つの要素から数量的に考える場合もある。
 単に,数量をはかっただけでは,数量的に見るということにはならない。必ずその変化の意味について考えることがあって,はじめて数量的に見るということになる。
 低学年のこどもは,物を一つ,二つ,三つと数えることの意味を知っているが,物から離れた数を考えることができにくい。(これは幼少のこどもが数を無意味に唱えることとは別の意味である)
 学年の進むにつれて,だんだん物から離れた数を考えることができるようになる。また,数の範囲も拡大する。
  高学年では,数量的に処理したほうが現象をよりはっきりと正確につかむことができ,簡明に解釈を生み出すことができるというように導きたいものである。

 (4)問題をつかむ能力
 ある事態に対応して,そこに不調和や不合理や意欲に満たないものを感じた場合,その不調和や不合理や不満を調和のとれた状態,または合理化された状態,満足な状態に置こうとするところに問題がつかまれる。従って,不調和や不合理を見いだす能力,または意欲が盛んであることが,問題をつかむ能力の基になっている。
 この中には,単なる疑問もあるが,日常の生活の合理化に気づいた場合には,問題をつかんで,その解決への意欲も盛んに働いてくる。
 低学年のこどもは,よく考えないでその場その場でつかむ単純な問題が多い。
 学年が進むにつれて,問題のつかみ方に筋道が見られるようになる。問題をつかむのには,教師の方向づけがたいせつな場合があるが,その方向づけによって,こどもは,自由な気持ちで問題をつかむようにしなければならない。教師の指導が強過ぎて,最後は教師がまとめるものであるというような印象を与えると,こどもたちは,自発的な活動をやめるようになる。

 (5)結果を予想する能力
 一つの問題を解決するときに,いろいろな経験や材料をもとにして,その見通しをつけるのが普通である。その見通しによって,はじめて次の仕事にとりかかれる。実証をするための実験などは,この結果を予想する能力があって,はじめて計画がたち,手順がうまくはこばれるのである。
 低学年では,すでに直接経験したことと同じようなことなら,ある程度結果の予想ができるが,直接に経験しないことや縁の遠いものや抽象的なことになると予想ができにくい。
 高学年では,すぐ結果がわからなくても,関連のある他の経験から,ある程度結果を予想することができる。
 結果を予想するにあたって,筋道をたてて考えるのでなければ,単なる憶測に終わってしまうから,その予想が筋道をたてて与えられたものかどうかを,確かめていくようにしなければならない。

 (6)企画する能力
 実験や見学や製作などに直接現われる場合もあるが,広く生活全般にわたって,能率的に進めていこうとする時に必要になってくる。
 企画するということは,ある程度筋道のたった考え方や,結果を予想する能力がなければできないことである。
 低学年では,どんな遊びをしようか,たれと遊ぽうかなどと考えるところに,この能力の芽ばえが現われる。しかし,初めから終りまでよく考えて,順序だって企画をし,それに従って仕事をしていくことはできない。
 高学年になると,みずから企画をし,その企画に従って仕事をすることができるようになる。しかし,ひとりの能力では完全な企画をすることは無理な場合が多く,話合い等によって,多くのこどもの知恵を集めて,はじめてまとまった企画ができることが多い。
 この能力は,製作とか,見学とか,実験などの具体的な学習活動に即して,まず大胆に企画させるように導いて,はじめて高められていく。
 しかし,その企画のしかたがよかったかどうかは,こどもと教師の協力による評価によって,確かめられ,しだいに高められていくのである。

 (7)原理を応用する能力
  問題を解決して,一つの結論を得たとする。この結論は一つの筋道であって,これをだれにもわかるように言い表わすと,だいたい法則のような表現になることが多い。その法則なり原理なりを,こどもが自分で日常生活や,次の問題解決の時に応用するのがこの能力である。
  低学年のこどもは,事がらが簡単な場合,またはこどもが前に経験したと同じ場合でないと,原理を応用しにくい。
  高学年になると,経験が豊富になるので,事がらが複雑な場合や,もとの経験と違った場合にも応用できるようになる。
  原理を応用するというのは,こどもみずからが応用するかどうかということであるから,学習中,またはその他のこどもの生活の中で,もし気づかないで過ぎるような場合には,示唆を与えることも必要になってくるであろう。また,一つの仕事の結果が,どのような原理を応用して行ったかを考えさせることも必要である。

 (8)事実から推論する能力
  推論が,単なる憶測ではなく,事実に基いて行われることである。
  そのもとには,事実をありのままに見る能力や,筋道の通った考え方をする能力が必要になる。
  天体に関する学習になると,説明的な実験を基にして,それから推論するようなことも含めて考えられる。低学年では,実証する段階を省いて,推論で学習が終る場合もあろう。
  1,2年では,分析する能力がじゅうぷんでなく,物事の見方も主観的であって,事実よりもむしろ両親や教師のいったことをもとにして,推論する傾向がある。
  3,4年では,物事の因果関係を明らかにすることが,だんだんできるようになる。
  5,6年になると,分析的に判断する能力が進み,客観的に物事を見るようになるので,複雑な現象の中から必要な事実を見ぬいて推論できるようになる。

 (9)筋道のとおった考え方をする能力
  この筋道のとおった考え方をする能力は,事実に基く推論や結果を予想するという能力よりも幅が広いといえる。
  低学年では,こどもが経験した事実が少ない。経験した少数の事実から得た結論を,いろいろな場合に適用しようとする。そして,論理的な飛躍に気づかない場合が多い。
  高学年になると経験が多くなり,分析的な判断が進んでくる。それで,しだいに筋道のとおった考え方ができるようになる。
  この能力は,話合いの時によくわかり,また伸びていく。

 (10)分析的に判断する能力
  一つの事態を分析して,条件を確かめて判断することである。
  低学年では,全体的直覚的に物事を見ることが多いから,分析的判断をすることが少ない。
 高学年になると,全体的に見るだけでは満足しないで,深く究明しようとして,分析的判断をするようになる。たとえば,一つの現象について,時・場所・原因あるいは条件等を分けて考えるようになる。
 問題解決にあたって,問題の分析からまずこの能力の必要さが考えられる。問題が適当に分析されることによって,それから後の仕事が楽にはこばれるようになる。また,研究作業や整理の場合にも,解釈のしかたが正しいかどうかを反省し,吟味する時にもこの能力が必要になってくる。

 (11)総合的に判断する能力
  いくつかの事実をまとめて推論し,一つの判断を下すことである。
 低学年のこどもは,全体的に物事を判断するけれども,分析したものをふたたび総合して判断することはしない。
 分析して判断する能力が進むにつれて,いろいろな実験の結果をまとめて一つの結論を出したり,いくつかの原因が同時にはたらいた場合,どうなるかを判断したりすることができるようになる。しかし,5,6年でもこの能力がよく発達しているとはいえない。

 (12)普遍化する能力
  いろいろな観察や実験から得られた一応の結論を,さらにいろいろな新しい経験に当てはめてみて,結論の正しいことを確かめ,また,ある時には結論を修正して,いっそう広い範囲の事実に当てはまる結論をみつけるようになる。
  この能力は,たくさんの事実に当てはめてみた経験をとおして,どの場合にも当てはまるような原則を考え出すことである。
  このような能力は,低学年でも簡単な場合には見られる。
 高学年になり,事実から推論する能力や,分析的・総合的に判断する能力,筋道の通った考え方をする能力の進歩に伴って,この能力も進む。
  こどもたちがある理解に達した時,その理解がどの範囲,あるいはどの程度に適用されるかどうかを考えたり,当てはめてみたりすることによって,普遍化の能力はさらに高められていく。

B.技術的能力
 (1)資料・材料を集める能力
  学習の初めにあたって,または学習の途中の研究やまとめにおいて,教科書や参考書によって道が開かれることがある。ところが,どういう教科書や参考書を選び,どのようにしてそれを手に入れたらよいかが解決されなければ,有効にこれらを活用することはできない。
   また,ある実験を計画した時に,どれだけの器具や材料が必要であるかがわかっても,それらを適当に手に入れることができなければ,実験ができない。器具や材料のあり場所へ行って持ってきたり,ない場合には手近な場所で集める必要が起ったりする。
   同じように,一つのの実験が終って,その解決が正しいかどうかは.確実な資料に基いて吟味する必要が起るであろうが,この時にも,それに適する資料を求めることができなければならない。
   このように,資料や材料を集めることがうまくできると,問題の解決は楽になり,より正確になる。そして,学習活動は豊かに展開されるようになる。
  資料・材料の内容として考えられるものには,自然物(観察の材料・飼育栽培の材料),製作材料(道具および材料),実験材料(器具および材料)などの材料や,絵・写真・スライド・映画のフィルム・図表・パンフレット・記録・新聞や雑誌の記事・地図・参考書などの資料がある。
  低学年で集めることのできる資料・材料の種類は,おもに,画・写真・実物〈木の実・木の葉・石など)・おもちゃ・簡単な製作に必要な材料器具の範囲を出ない。それをさがす場所は,学級・校庭・野外・家庭(自分の持ち物)にだいたい限られる。どこにいけば,どのような資料や材料が得られるかというような経験をつむことがたいせつである。それによって,高学年になって自発的な集め方ができるようになる。
  資料や材料を集める場合,とかく,ある目的によってある物を集めていることを忘れて,その場所や,その物に連関して別の活動を起しがちであるから注意を要する。
 高学年になると,どんな資料が問題解決に役にたつかを考えて,資料を選び出すことができ始める。
  集めることのできる資料・材料の種類は,低学年から発展して,新聞雑誌の記事・参考書・地図・統計などが集められるようになる。
 集めてくる場所も,学校・家庭・野外などから,さらに図書館・博物館・工場その他社会施設などにまで広がる。
 資料や材料を,めいめいで集める場合もあるが,やや困難と思われる場合には,グループで集めるとか,学級共同で集めるとかの示唆が必要である。
  よく見かけることだが,おとな向きの本や統計などをおもしろくもなく,わかりもしないのに骨をおってうつしてくるような,役にたたない努力はやめなくてはならない。このようなことを避けるためには,こどもたちに適当と思われる参考書なり,統計なりをあらかじめ用意しておくほうがよい。必要な事がらを選び出すことができるようになる段階をいくつか考えて,次第に複雑なものから選び出せるようにしなければならない。

 (2)整理整とんする能力
 整理整とんするためには,同じ物や違った物を見分けて分類することや,次に使う便利さを考えて,位置や場所をくふうする必要が起ってくる。整とんは,次の仕事の準備である。
 低学年では,整理整とんのできた後の美しさ,気持のよさを味わうことはできるが,それ以外の整理整とんの必要(たとえば,便利・清潔等〉を理解することはむずかしい。
 また,整理整とんの計画をたてても,一時はするが長続きしない。
 整理整とんする場合には,色・形・大ききによって,種類分けすることはある程度できる。たとえば,本・道具・積み木等を別々に集めたり,本を大きさの違いによって分けて並ペたり,葉を色や形によって分類したりすることができる。しかし,整理整とんは,正確にはできないし,また相当に時間がかかる。従って,その場その場にあたって,整理整とんするようにしむけることがたいせつである。
 高学年になると.整理整とんの必要なことを考えることができるようになる。そして,次に使う時の便利さを考えて企画し,整理整とんするようになる。
 分類をするような時も,ただ外観だけにとらわれることなく,本質・内容・使用の目的・使用上の便利さ等によって分けることができるようになる。しかし,常に整理整とんを進んでやる習慣は,なかなかできあがらない。日常の生活において,よく整理整とんしてあるかどうかは,態度に関することであるが,整理したり,整とんしたりすることそのことは,一つの技術的能力である。
  しかし,この整理整とんする能力は,注意深く正確に行動する態度や,みずから進んで究明する態度が高まることによって。高まる場合もあり,また,うまく整理整とんすることによって,それらの態度も身についてくるということがいえるであろう。

 (3)飼育・栽培する能力
 低学年では,草花・野菜の種をまくことはできる。
 苗の植込みのごく簡単なものはできるが,苗床から苗をとって植えかえる仕事はむずかしい。
 いぬ・ねこ・うさぎ・ねずみ・にわとり等にえさや水をやることはできる。
 かたつむり・きんぎょ・めだか・たにし等を飼うことができる程度である。
 低学年のこどもにとって,動物や植物の世話を長期にわたり続けることはむずかしい。みずから進んでやるのは,芽の出たころ,花の咲くころ,子が生れたころ,新しく手に入れた当座等,特に興味をひく時期に限る。
 従って,飼育・栽培している材料を教師が注意して見守り,こどもたちを育てると同じ気持で管理しておかないと,材料のねうちを半減してしまうことになる。
 このようにして,特徴のはっきりした時期に,こどもの関心をこれらに向けるように導き,やがて,こどもたちの手だけでうまくできるように導くことが望ましい。
 高学年では,世話の簡単なものについては,草花・野菜の種まきから,開花あるいは収穫するまですることができる。
 苗床から苗をとり,植えかえることもしだいにできるようになってくる。
 また,いぬ・ねこ・うさぎ・ねずみ・やぎ・にわとり等に食物を調製して与え,動物小屋のそうじ等をすることができるようになる。
 虫・かえる等野生の小動物を継続して飼うこともできるようになる。
 高学年になると,ある目的(たとえば実証)のために,特別の条件を設けて飼育栽培をする場合が起きてくる。このような場合は,やや長期にわたって世話をする必要が起るが,ひとりのこどもが,長期にわたってそれらを観察したり,世話をしたりすることは困難である。グループを作って観察したり世話したりするようにすれば,この困難を緩和することができる。それでも長くなると,グループの全員が世話を忘れてしまうようなことがある。グループごとの交代制は,これを助ける一つの方法である。

 (4)械械・道具を使う能力
 低学年では,移植ごてやはさみ等,筋肉をおおまかに使う道具の使用がきる。
 簡単な操作による道具たとえば,温度計(2年以上〉・レンズ・磁石・自動ばかり(2年)・ますなどを使うことはできるが,てぎわが悪い。
  ビーカー・シャーレーのような薄いガラス器具を使うと.必ずたれかがこわしたりする。これは,低学年でこのような器具を使うのは無理なことを表わしている。
 簡単な道具を使う速さは,初めはのろいが,練習によって速くなる。
 機械や道具を使う場合には危険を伴うことがある。 これは,あらかじめ気をつけてやらなければならない。初めて使う時に特に注意を要する。使い方については,はっきりと教えて使用したほうがよい場合が多い。
  後からの反省では,わかりにくいことが多いから,使っているその場でふつごうを見いだし,指導することが効果的である。
 高学年では,筋肉を細かく使ってする機械道具の使用もできるように、なる。たとえば,ピンセット・さおばかり・てんぴん・目もります・試験管・ビーカー・シャーレー等も使えるようになる。
  また,やや複雑な操作による機械や道具,たとえば,顕微鏡・幻燈機・望遠鏡・湿度計・雨量計・小型なモーター・アルコールランプ等の使用もできるようになる。
  どういう場合に,どのような機械や道具を使ったらよいかと改めて聞けば,わかっているこどもも,いざ仕事をする段になると,解剖ばさみで針金を切ってしまうような場合を見かける。このようなことをなくするには,初めの企画をしっかりたてさせ,必要な用具を整えさせておくことがたいせつである。
 機械や道具の使い方の善悪は,その結果に,はっきりと出てくる。そのような場合は,その場でその技術を練習させることが望ましい。

 (5)工作する能力
 低学年では,風車・ささぶね・どんぐりごま等の簡単なもの,おおざっぱなものならば工作することができる。しかし,てぎわよく作ることはできない。
 あきやすいから,長時間かかるものはやりとげられない。従って,大きさや材料に注意して,無理なくできるようなものを作らせるように導くことが望ましい。そして,完成の喜びを味えるように指導すべきである。
 高学年では,琴・笛・機械の模型(風向計・日どけい・モーター・電信機等)・家の模型・写真機・望遠鏡・模型飛行機・船等,やや精密なもの複雑なものも作れるようになる。そして,時間のかかるものも,継続して作ることができるようになり,またてぎわよく作れるようになる。
 個人製作のほかに,グループによる製作も,かなりうまく進めることができるようになる。
 工作する場合,とかく危険が伴いがちであるから,じゅうぷん気をつけて,予防に努める必要がある。

 (6)資料・材料を使う能力
 資料や材料を集めることは,これらを使うためである。
 適材を適所から適量選んで,目的にかなったように処理することを考えると,相当程度の高い能力であるということになる。
  しかし,この一部は,前の工作する能力や,資料・材料を集める能力や,整理整とんする能力に含まれるものもある。
 低学年では,紙・きぴがら・粘土・木の実・花など簡単な道具で扱える材料を使用することができる。
  また,材料を色・形・硬さ等に応じて使いわけることはできるが,外から簡単に見分けられないそのものの性質に応じて,自分で使いわけることはむずかしい。
 物を外見だけで見分ける程度であるから,薬品を使うことはできない。
 資料を使いこなすことは,まだむずかしい。
 工作材料などにおいて,この能力を高めていくことが有効である。
 高学年では,木・金属・布など簡単に細工しにくい材料も,使用できるようになる。また,セロファンの湿り気に対する性質のように,外から見ただけでは簡単にわからない性質も考えに入れて,材料を使い分けることができるようになる。
 取扱にあまり知識と技術を要しない材料なら,たいてい使うこどができるが,まだ,危険な薬品・材料等を取り扱うことはできない。小学校では,このような危険な薬品や材料を教師がこどもの前で使ってみせることも,なるペく避けたほうが安全である。
  参考資料として,参考書や統計や記録などを,しだいに使うことができるようになる。しかし,これを使うのに困難を感じる場告がある。 何を求めようとしているのか,また,その資料の中のどれだけとればよいのか,それからどういうことが考えられるのかなどの指導を忘れてはならない。
  こどもたちは,適材を使うことは,ある程度考えられるが,適量ということは,なかなか困難である。従って,学習中,または学習の終ったときなどに,よくこのことを反省して,しだいに物を適量使うように導くことがたいせつである。

 (7)記録・図表を作る能力
 低学年,特に1年のこどもは数だけの記録,または符号を使った記録からはじまり,だんだん単語を使った記録ができるようになる。たとえば,あさがお・かぼちゃの花の数,種をまいた日時,芽が出た日時,雨の日・晴の日の符号,動物の食べ物の名,比較した大小の記録などである。
 2,3年になると,簡単な文章による記録ができるようになる。特に3年ごろになると,かぽちゃ・おたまじゃくしの絵日記など,絵と文によって,丹念に記録するようになる。
  しかし,興味の持続する時間が短いから,長期にわたる記録はできない。
 植物成長の絵やグラフ,かいこの成長の絵やグラフ等,図表を作る場合,おもに絵を用いることが多い。
 3年になると,簡単な棒グラフを作ることができるようになる。低学年では,記録や図表を作ることに相当の努力を必要とするから,進んで図表を作る興味をもつまで,そのできばえについてほめるなど,奨励の方法をとることが望ましい。
 また,興味の持続をはかるには,自分の作品を時々見せたり,友だちの作品を見たりする機会を多くすることが効果的である。
 高学年になると,要点をとらえた適切なことばで,精密な記録ができるようになる。この中に,実物の写生図を加えることもできる。また,長期にわたる記録もしだいにできるようになる。
 気象観測や,いねの一生などの記録では前の記録と比較して,それと違ってていることを記録することもできるようになる。
 また,太陽の高さと影の長さ,一株のいねの茎の数と1本の穂についたもみの数などの二種の数の関係を示す図表も作ることができるようになる。
 高学年では,記録の正確さや,どのような形式を用いて記録したほうが効果的であるかなどが問題になる。従って,これらを研究する機会(たとえば発表会など)を開いて,適切な表現のくふうをさせることが必要である。このとき行われる記録や質問によって,新しいくふうも生まれてくる。


2.態度の発達と適用
 日常生活を科学的に処理できるためには、単に科学的な原理や方法を知っているだけではふじゅぶんで、科学的な態度や習慣が身についていて、はじめて実践できるようになる。ここでは、習慣・興味・態度・鑑賞を一括して態度に含めて、それらの発達の概略と指導上の留意点について述べよう。
 しかし、これについての詳細は今後の研究に待たなければならないものが多いと思う。

 (1)環境に興味をもつ態度
  こどもたちは自然に放っておいても、身のまわりの事がらに興味をもつものである。しかし、新しい方面に興味をもたせること、また、より深く持続的な興味を起こさせることは、指導の力にまたなければならない。指導が成功したかどうかを何で評価するかという場合、実にこの興味のもち方が広くなったか、深くなったかで見ることができるとさえいえるほど、たいせつな要素になる。
 A.興味をもつ環境の広がりについて
  低学年では、自分の直接経験する範囲、たとえば家庭・学校・近所その他行ったことのある場所以外には出ない。
  高学年では、直接経験する範囲を越えた所、たとえば日本・世界・宇宙等に及ぶようになる。
 B.興味をもつ対象
  自然環境と社会環境について、低学年でも高学年でも前者に対し後者よりも多く興味をもつ。しかし、高学年では、後者に対する興味の傾向がだんだんと高い率を示してくる。
  低学年では、植物よりも動物に興味をもつ。
  また、動物植物の生活に興味をもち、外から直接見えない内部的な構造・はたらき等に対しては、高学年になって、はじめて興味をもつようになる。
  低学年では、自然物やおもちゃに興味をもち、学年が進むにつれて加工した物に興味が向く。
  これらは、ごくおおまかな傾向であるが、より多くのものが興味をもつものを学習の対象として取り上げることもたいせつであるが、新しい方面に興味を感ずるように指導することを忘れてはならない。

 (2)みずから進んで究明する態度
  低学年では、その物事の名称などを好んで聞き、個々の物をなぜかと断片的に聞きたがるところに、この態度が芽ばえている。この芽ばえは発達して、動くおもちゃの動くしかけを自分で調べたり、動物や草木の生活を楽しんで、自分から観察したりするようになる。
  高学年のすぐれたこどもでは、興味のある問題を持つと、聞いたり読んだりして、一応の解決ができても、さらに自分自身で研究したり、ためしてみたりして、納得のいくまで確かめようとする。
  こどもたちが自主的に、みずから進んで究明しようとする態度をもつことは、教育全般を通じてたいせつなことであるが、これを伸ばすには、どこまでも、問題を自分たちの力で解決したという自覚をもたせるように心がけることが肝要である。そのためには、教師の助力は目だたないようにする苦心がいる。
  いろいろな意見を述べたり、いろいろな解決を試みたりはするが、最後の断定は教師がするものだというような印象を与えるような結果にならないことがたいせつである。ほめることが、この態度を伸ばすのによいと一般にいわれていることを忘れてはならない。

 (3) 協力する態度
  低学年のこどもは自己本位で、他人と協力することは少ないが、砂遊びのように教材が豊富で、興味が同じ場合には、少ない人数の者と短い時間協力する。
  高学年になると、観測・飼育栽培・製作・劇化・実験などに協力して仕事をしようとする傾向が著しくなってくる。
  本来、こどもたちはひとりで遊ぶというよりも、グループで遊ぶことに楽しみを感ずるものである。
  この本性をうまく指導したら、感情的にも、すべての人々と協力する態度が自然についてくるはずである。興味を同じくするものとか、利益を同じくするものの間だけの協力にとどまらないで、広く人々と協力する態度が身につくようにありたいものである。

 (4)批判的な態度
  低学年のこどもは主観的な態度の多いのが普通であるが、批判的な態度の芽ばえの見えるのは、次の点であろう。美醜・長短・明暗・形状など外から見てわかる物の性質、あるいは行為の結果。
  高学年のこどもは、実験のしかたの適否や結論の正否、結論に達するまでの考え方など抽象的なことについても批判するようになる。
  3,4年生のころになると、理の通らない理屈をふりまわし、批判のための批判に終わるような傾向をもつようになることがある。しかし、それが理の通らない理屈であるとわかるには、やはり期間が必要で、やがて、その期間が過ぎると、それが理屈であるかどうかを見分けることができるようになってくる。従って、理の通らない理屈が横行する時期には、ある程度押えつけないで、むしろそれなりにも意見が述べられることにたのもしさを見いだし、それがどれだけの事実や証拠をもとにしているかを問題にするようにしむけて、正しい批判的態度を伸ばしていくようにする注意がたいせつである。

 (5)事実を尊重し、実証する態度
  低学年のこどもは親・教師などのいったことを信頼する傾向があるが、これはすべてのことについてではない。少なくとも自分で経験したことについては、事実を尊重する態度が見られる。また友だちが、自分がすぐ信じられないことをいったときに、「それでは、やって見せてくれ」とか「その物を見せてくれ」とかいうことがよくある。これは実証する態度の現われである。
  ある1年生の教室で「お月さまは昼間も見れる」とひとりのこどもがいい出した。すると,他のこどもが「お月様は夜だけしか出やしないよ」といっ
てきかない。はては,このことをきっかけとして,気の弱い前の子がべそをかきはじめた。この時,他のこどもが「それでは,昼間見えるか見えないか
見てみよう」と提案した。
  これなどは,ごく簡単なことであるが,この態度の現われといってよかろう。
  また,ある2年生が「消防自動車にも6輪車のがある」というと,ひとりの子が「そんなのはない」といいはってきかない。「しかし,ぽくはちゃんと見たんだ」という。そこで,どこで見たかが問題となり,その場所へ出かけていってみることになった。
  この例は,実証する態度が何も理科の学習に限らないで,日常の生活態度として望ましい態度であることを示してくれる。
  学年が進むにつれて,事実を尊重し,実証する態度が目だってくる。ことに討論の結果,意見が食い違ったような場合,または自分のしたことや考え
たことが,他のものと違っていると,それを確かめようとする態度が強く現われる。
  また,資料や他人の話をうのみにしないで,その正確さを問題にするようになり,科学的方法に確信をもつ態度が芽ばえてくる。

 (6)専門家の意見を尊ぶ態度
  低学年のこどもは,両親や教師など年長者の話を尊重するが,これは自分の経験しないことについて専門家の意見を尊重する態度の現われと見られる。
 学年が進み,自分のもつ問題が複雑になるにつれて専門的知識の必要を感じ,ますます専門家の意見を尊ぶようになる。
 「隣のおじさんがこういった」とか「おとうさんがこういった」とかいうことでは,他のこどもは,もはや信用しなくなる。たとえ,両親や教師のいったことでも,それがどのくらい実証的であるかということを考えるようになってくる。
  また,実験をしても,まちがった説明を引き起すことをしばしば経験する。
  このような経験から,信用のおけるものは,専門に研究している人の意見だということがわかるようになって,専門家の意見や,専門の本(教科書)によって,自分たちの結論が正しいかどうかを吟味するようになる。
 しかし,科学者の意見も,まだ仮説の域を脱しないもの,または対立しているものがあること,新しい理論によって,次々に変えられていくことがあることなどが理解されるにつれて,いっそう専門家の意見を尊ぶようになる。

 (7)迷信や宣伝にとらわれない態度
  この態度は,批判的な態度とまったく別な態度ではなく,むしろその特別なものと考えられる。迷信は人の判断の弱点に侵入するものであり,宣伝は判断をことに誤まらせるように行われる傾向がある。そのため,これらにとらわれないためには,特に鋭い批判力が必要になる。
 低学年のこどもは,物珍らしい宣伝や注意を引くようなおもしろい迷信は,それが事実かどうかも確かめないで,興味をもってすぐ覚えてしまい,それにとらわれる傾向がある。
 高学年になると事実を事実としてうけいれられるようになり,批判的な態度もできてくるので,宣伝や迷信にすぐにのせられないで,一応よく考えてみてから事実であるかどうかをみきわめるようになる。
  このような態度がしだいに身につくようにするためには,学年が進むにしたがって,物事の説明として魔術とか魔力とかを用いないこと,自然力を説明するのに.擬人化するような方法を用いないこと,単なる憶測や推測で説明することをとりあげないこと,より多くの証拠を求めるようにすること,資料をうのみにしないで,その正確さを問題にすること,科学者の方法や結論に信頼を置くようにすること,などに注意して導くことがたいせつである。

 (8)新しい考えをとり入れる態度
 低学年のこどもは,友だちがやっていることのまねをする傾向がある。
 学年が進むにつれて,人に聞いたり,本で読んだりして,いろいろ新しいことを取り入れるようになるが,一度ある事がらに納得がいくと,それを固執して新しい説明をうけ入れない場合も出てくる。
 いままでにとれていた知識の調和こ,新しい内容をつけ加えたり,またはこれとまったく違うことが起ったりしたときも,確かな解釈によって,古い考えを改めて,新しい考え方をとり入れるようにしむけることがたいせつである。古い考え方を固執すると,そこには偏見的な態度が生れてくる。
 自然現象の中には,科学者によって,じゅうぶんに説明されていたいことも多い。また今日,科学者によって説明されていることも,将来,訂正され,もっと進んだものになることもあろう。
 この新しい考えをとり入れる態度は,日常の生活態度としてもたいせつなことで,この反対な態度として,がんめいということがいわれる。

 (9)道理に従う態度
 低学年のこどもは,自分の信じたことを固執し,守り通そうとする態度をもっている。しかし,この自分で信じたことは必ずしも道理とはいえないで,自分の利益に直接関係のあるものや,自分の感情に支配されているものが多い。それは,鋭い判断力がないため,正しい道理がつかめないことにもよるのであろう。
 高学年になると,理性が発達してくるので,道理をみつけ,これに従う態度が強く現われてくる。自己の利害に反することでも,理屈が合っていれば,それに従うようになる。

 (10)計画的に行動する態度
  低学年のこどもは,その場その場で,単純な計画をたてる。2,3年のこどもは水車や風車をつくるのに,何をどういう順序で用意したらよいかぐらいは計画できる。
  高学年になると,問題をもつとともに,見通しをつけて予定をたて,計画的に行動して解決しようとするようになる。たとえば,どうやってせっけんを作るかというような問題をもったとすれば,実験をしてみたり,工場を見学したりすればよいと,見通しをつけて実験や見学の予定をたて,計画をして,行動するようになる。
 ある狭い範囲内での計画から進んで,広い範囲にわたって計画をたてるように導くと,それが,やがて,日常の生活態度におよび,常に計画的に行動するようになる。

 (11)注意深く正確に行動する態度
  この態度は,物事を失敗しないでやりとげたいと思う場合に強く現われてくる。
 低学年のこどもが,コップにいっぱいはいった水を,実に細心の注意をしながら運ぷのを見ることがある。しかし,このような慎重な態度は,低学年のこどもでは,ことに個性によって大きな差がある。また,この態度はあっても,する仕事がこどもにとってむずかしすぎたり,長い時間を要するものであるときには,現われるはずはない。
 高学年になるに従って,思考は細密になり,注意深く正確に行動することができるようになる。
 この態度は,実験や観察の学習活動の場合に多く見うけられる。注意して熱したり,正確に温度をはかって記録したり,飼育栽培をできるだけ注意深く正確に行ったりするときに見られる。

 (12)根気よく物事をやりとげる態度
  この態度は,低学年では,こども自身が直接に強く必要と興味を感じる仕事をする場合に限られている。しかし,それも比較的短かい時間に限られ,一つの事に長時間,注意力を集中したり根気のいる仕事をしたりするときには,この態度がもち続けられない。
 高学年になると,理知が発達して,仕事の完成の意味や喜びがわかってくる結果,問題解決の途中に興味の少ない仕事があった場合にも,なお根気よくやりとげようとする。
 この態度は特に高学年に多く現われる傾向がある。

 (13)余暇を利用する態度
 低学年のこどもには,余暇と仕事の見分けがつかない。こどものしていることの全部がむしろ楽しい遊びである。従って,自分で余暇を利用しようとは考えない。
 高学年になると,仕事と余暇の見分けがついてくる。労働や1日の決まった仕事はできるだけ早く片づけて余暇をつくり,これを利用することに喜びを感じるようになる。
 これには,計画的に行動する態度が伴って,はじめて,よい余暇利用の態度となる。

 (14)健康で安全に身を保つ習慣
  低学年のこどもは,両親や教師のいったことを守って,理屈を考えないで健康安全に身を保つ方法を実行することが多い。しかし,この実行は,ひとりではなかなかできにくいことで,習慣にまでならないで終ることが多い。
 それで指導者が常にくり返し注意し励まして,習慣を作るようにしなければならない。
 高学年になると,なぜこうしなけれぱならないかというわけがわかって,みずから努めて,健康安全に身を保つ習慣ができる。
 一般に,低学年では行動から行動へという導き方をとり,高学年になると,思考から行動へという導き方をとるようであるが,この二つの導き方がうまく調和がとれ,低学年でよい習慣がついていれば,高学年になって,さらに新しい、よい習慣を身につけることが楽になる。

 (15)自然に親しむ態度・自然の美・調和や恵みを感得する態度
  自然の環境はこどもに,美しさを感じたり,調和を見出したりするのに最もよい機会を与えている。
 花・虫・魚・鳥・星・空・風等について,美しい色・美しい光・きれいな声・よい香など,数限りなくある自然の物や現象がこどもたちの美しい情緒を育てあげている。
  このような環境の中にあって,まだ主客未分化な低学年のこどもたちは,然の物を友として遊んでいる。
 高学年になると,自他の区別がはっきりできて,自然物を自然物としてみるようになる。この時,自然の美しさや調和を直接感じることのほか,自然の物や現象の間の関係を理解するようになり,理知を通じてもまた,いっそう自然に親しむ態度は深くなる。花と虫の関係,太陽の生物に対する恵み,天体の秩序正しい運行等を学習する場合によく現われる態度である。

 (16)生命を尊び生物を愛育する態度
 低学年のこどもがうさぎ・にわとり・きんぎょなどにえさをやることを好むのや,自分でまいた種が気こなってたまらなかったり,自分で飼育し,栽培しているものに理屈なしに強い愛着を感じたりするのはこの態度の現われである。この態度を養うには,この年ごろから,このような飼育・栽培を始めなければ,なかなか困難である。
 高学年になると理知が進んでくるから,おとなの助けを借りなくても,自分の手ですすんで動植物の世話ができるようになる。また,げんごろうときんぎょとを一つの器に入れておいて,げんごろうがきんぎょをいじめると,きんぎょに同情して,別々に分けてやるようなことをする。

 (17)科学を尊ぶ態度
 低学年のこどもは,はっきり科学という認識をもってはいないが,自分で納得して得た知識を尊ぷ様子が見られる。(例,きんぎょを小さい器にたくさん入れると死ぬから,数少なく入れるなど)
 高学年になると,読書力・理解力が進むために,科学者の発明発見の物語りを喜び,あるいは科学の人生に与えた貢献に感歎する態度が現われる。

 (18)新しいものを作り出す態度
 こどもは,低学年のころから独創力のたくましいものであって,木の葉を丸めてキャンディだと考えたり,たでのつぽみが赤いごはんになったりするように,おとなでは思いも及ばないくふうをする。また,新しい遊び方を考えつくこともある。これらは新しいものを作り出す態度の現われである。このようなくふうをすることは、こどもの遊びの生活の本来の姿であって、くふうすることに喜びを見いだしているのである。
 高学年になると、生活に便利なもの・つごうのよいもの・役にたつもの等何か有益な目的をもって、新しいものをくふうしようとする態度が見られるようになる。
 新しいものを作り出す態度は、原理を応用する能力が高まるに従って、進んだものを考えつくようになる。

 (19)科学を日常生活に応用する態度
  この態度は、科学的な原理を日常生活に応用するという意味である。科学的な方法を日常生活に応用するということは、いままでに述べた他の態度のいろいろなところに含まれる。
 低学年のこどもでは、一度学習したことのある草花の世話のしかたや、重いものを運ぶ時に車を使うことなどを、日常生活に応用することが見うけられる程度である。
 高学年になると、科学を日常生活に広く応用するようになる。特に、家庭生活の面で、腐りやすい物を涼しい所におくとか、さびやすい金物の面は、水気をよくふいて油を塗っておくなどの場合に、この態度が現われてくる。

3.理解の発達
   こどもの理解の発達を調べるには,どんな事がらについて調べるかが問題になるでろう。
   理科の理解の目標として本書にとりあげられているおのおののものについて,各学年のこどもがどのような発達を示すかを知ることができれば,理科教育上非常によい資料になると思う。わたくしたちの手で,この調査ができていないのは残念である。この欠点を補うために,理科に関して基本的な観念を10ほど選び出して,これについて,東京都内および近県の一二の小学校で調べた結果を次に述べることにする。わたくしたちは,これが完全なものであるとは考えていない。むしろ,これを出発点として,全国で広く深い研究が進められることを期待している。
  理解の発達について,一応の結論をうるためには,なお広範囲にわたる幾多の調査が必要となるであろう。
  この調査の結果は,だいたい次のような方法によって得られたものである。
  (1)問題は文章によるほか,絵をたくさん準備しておいてこれを示すとか,実験をして見せるとかして,口で質問した。
  (2)1年生に対しては,教師または6年生によって,個人的に質問し,口で答えたものを記録した。2年生以上は問題を与え,筆答させた。
  (3)予備調査を除き,本調査をした人員は各学年1学級(40〜50名)である。
 a.水についての理解
(1)低学年では,水の形は「丸くて長いもの」などと考えているこどもがある。これは,水道の水が円柱形に流れ出すのを見るこどもの直接体験からきているのであろう。多くのこどもは,わからないと答えている。この「わからない」のうちには「一定の形がつかめない」意味のものも含まれているかもしれない。
 高学年では「器によって形が変り,特別な形をもっていない。少量の時には球になる」と考えている。
(2)手でさわった水の感じについては、低学年・高学年とも、「冷たい」と感じるに過ぎないのが大部分である。
(3)暖めた時にはどうなるか。
 低学年では「熱くなる、お湯になる」と答え、高学年になると、その上に「水蒸気になる、蒸発してなくなる」と、いわゆる「水の状態の変化」を理解するようになる。
(4)用途については、低学年では「せんたく・のむ・ごはんをたく・花にやる・火事を消す」と、身近な現象に限られている。高学年になると「発電・農業」と用途が広がり、また、「のむ・ごはんをたく・花にやる」が「生きるため」と理解が深まる。
(5)所在については、低学年では「水道・川・海」であるが、高学年になると、その上に「地下・空中・生物の中」と理解が増し、かつ大いに組織的になる。

b.光と影についての理解
(1)影については、低学年・高学年ともに「光が来ないから」と考えている。影ができるのは、低学年では「太陽や電燈にあたるから」といって光源の有無に重きをおき、高学年では「光をさえぎるから」と光線を考えている。高学年のこどもが散光をどの程度に理解しているかは、この調べでは明らかにならなかったが、じゅうぶんには理解していないのではないかと思う。
(2)光を出すものについては、低学年・高学年ともに大部分のこどもは「燃える火・電気・月・太陽・ほたる」以上に出ない。
(3)光を鏡にあてるとどうなるかの問いに対しては、低学年は「光る、まぶしい」とこたえ、高学年では、その上に「反射する」と答えている。高学年では、このことばの理解が進んだものと考えられる。
(4)光をレンズにあてるとどうなるかの問いに対しての、低学年では「紙が燃える」ことを知っているものが一部であるが、高学年になると、大部分はこれを理解しており、さらに「像ができる、焦点に集まる」ことも知っている。
(5)暗い所で物が見えないわけについては、(1)で述べたのと同じく、低学年では「電気がないから太陽がないから」と光源の有無のみを考え、高学年では「光がないから」と光源と離れて光を考えている。

c.太陽についての理解
(1)動いているかに対して、低学年では一様に「動いている」と考えているが、5、6年では「動いていない」と答えている。
(2)形については、低学年・高学年を通じて「まるい」と考えている。5、6年になると「どろどろしている火をふき出している」などの知識が理解に加わる。
(3)「太陽の光にあたると、暖かいのはなぜか」の問に対して、低学年では「燃えているから」と答え、高学年では「熱があるから」と考えている。特に6学年では「熱がくるから」と考えているものが多くなる。
(4)太陽の恩恵について、低学年では「洗たく物がかわく」「明るくしてくれる」と考え、高学年では、その上に「ばいきんを殺す」「からだがじょうぶになる」が加わる。

d.月についての理解
(1)動いているかについては、全部「動いている」と考えている。
(2)形については、低学年では「丸い」と答え、高学年では、その上に「満ち欠け」の変化も理解している。
(3)色については、低学年では「黄色」と答え,高学年では「岩の色」「反射は黄色で、実際はわからない」など、遠くから見た場合の色と、実際の月の表面の色とを区別して考えている。
(4)月にうさぎはいるかの問に対して、1学年では、「いる」と答える者と、「いない」と答える者とが半しているが、2学年から上になると、「いる」と答える者が急に減る。
(5)月の影響については、低学年では「明るくする」と考え、高学年では「日食を起す」「潮の満干」の理解が加わる。

e.星についての理解
(1)数については、全部「数えきれない」と答えている。
(2)形について、低学年では、いわゆる「星形」と答え、5,6年になると、「丸い」とか「太陽と同じ」とかと理解している。
(3)色について、低学年では「黄色」と答え、高学年では「銀色」「白」が加わる。
(4)大きさについて、低学年では「わからない」ものが多く、高学年では「大きい」「地球より大きいのも、小さいものもある」と理解している。

f.空についての理解
(1)空には何があるのかの問に対して、低学年では「雲」と答え、比較的地球に近いものを考えている。高学年では、もっと広く考えて「太陽・月・星」などの天体をも含めている。
(2)どんなことが起こるのかの問に対し、1,2年では「雨が降る」「雪が降る」、3,4年では「あらし・雷」が加わり、5,6年では「月食・日食・流星」などの「天体現象」および広く「気象現象」の起こることを理解している。
(3)広さについては、上の(1)と(2)とから考えると、低学年では「雲・雪・雨」等、気象現象の起こる範囲を空と考えている。高学年では、その範囲は「星の世界」まで広がっている。

g.空気についての理解
(1)形については、低学年では「わからない」者が多いが、高学年では「一定の形はない」と理解している者がしだいにふえている
(2)所在については、1年でも半数ぐらいは、このあたりあると考えているが、わからないものも相当ある。4年ぐらいになると、ほとんど総てのこどもが、どこにでもあると答える。地球の表面にあるという答えも3年ぐらいから少しずつ現われ、6年になると、ほとんど全員が地球上ならどこでもと考え、その所在が確実になってくる。
(3)暖めるとどうなるのかの問に対して、5,6年では「ふくれる」ということがわかる。
(4)縮めることができるかの問に対し,1,2年では「わからない」と答え3,4年では「縮められない」と考え,5,6年では「縮められる もっと縮めると破裂する」と答えている。
(5)低学年では,風と空気とを別なものと考えているこどもがかなりある。
 この傾向は3年ぐらいまで残るが,4年以上では,気体という立場で,他のガス体と同じように空気を考えている。
(6)呼吸と空気と関係のあることは,1年では,まだ結びつかないものがかなりあるが,3年以上では,よくその関係をつかんでいる。しかし,空気がないと死んでしまうということは,低学年からもよく知っている.

h.火についての理解
(1)色については,1,2年では「赤」,学年が進むにつれて,「黄・青・だいだい」等の色の数が増し,6年では「その時によって違う」と答えるものが多い。
(2)用途については,大部分「煮る,焼く,湯をわかす,暖まる」などと答えている。
(3)燃えるということは,どういうことかの問に対し,低学年では説明ができない。高学年では「ほのおの出ること。灰になること。熱くなること煙が出て赤くなること」など,現象の分析ができるにすぎない。

i.熱についての理解
(1)どうすると出るかの問に対して,1年では「病気になると出る。走ると出る」など,自分のからだで経験する熱について考えている。2,3,4年では,「病気・太陽・火」を考え,5,6年では「摩擦・電気」がそれに加わる。
(2)所在について,低学年では「ひたい」あるいは「太陽・火」,4,5年では「からだ・太陽」と答え,6年では「地球の中心」「電気」がこれに加わる。
(3)はかり方については,1,2年では「体温計」と「手」,3年以上では「温度計」と「体温計」と答えている。

j.電気についての理解
(1)用途について、1,2年では「電燈・電熱器・電車」3,4年では、その上に「ラジオ」が加わり、5,6年では「工場・交通機関」が加わる。
 「どんな機械や器具に電気が使われているか」いろいろな機械や器具の絵を見せて解答させると、低学年では、ガラスランプ・アルコールランプなどの火を電気と関係があるとするものがあるが、この考え方は3年ぐらいまでに急速に減り4年以上では、ほとんど電気と火とは区別して考えている。
(2)電燈のつく理由については、1年では「電線がある」「スイッチをつける」「電球がある」などと器具があることを理由とするこどもが多い。
 3年ぐらいになると、「電気がはいってくる」「電線でくる」など、何か特殊なものが線を伝わってくるというように考えている。
 5,6年になると、電気が細い線を通ると光るというように、本質的な理解に近づいてくる。
(3)「電気とはどんなものか」の問に対して、低学年では「暗い時につけるもの」というように現象的な面から考えているものが多いが、3,4年では光とか、人間のために使うものなどという答が多く、高学年になると「光や熱を出す」「+と−とがある」などという答が多くなる。

k.音についての理解
(1)どうすれば出るかの問に対して、1,2年では、「物をたたく」場合をあげ、3,4年では「楽器をならす」ことが加わり、5,6年では、「たたく吹く はじく」など楽器のならし方についての理解ができるようになる。
(2)何から出るかについては、1,2年では、「鐘・太鼓・器械」と答え、3年以上では、その上に「楽器」が加わる。
(3)聞こえるわけについては、4年までは、「耳があるから」と答え、5,6年では「空気の振動が伝わって耳にはいる」と考えている。

l.動物の類別について
  「動物にはいろいろな種類がある」という理解の目標がある。このような種類というものを、こどもたちはどのように考えているかということを、身近な動物の絵を見せて仲間分けをさせてみると、低学年では、獣・鳥・虫などという概念で種類分けをするこどもは比較的少ない。
 これに反して、形態の一部の特徴や著しい習性の一つをとりあげて仲間と考えるのは、低学年に非常に多く、高学年に進んでも、この考え方は少なくない。たとえば、海にいるもの・水の中にいるもの・飛ぶ・泳ぐ・木に登るなどの表現を用いている。
 注意すべきことは、1年生には仲間という概念がはっきりしないので、「はととすずめ」「にわとりとあひる」というように一対のものをあげる傾向が強い。これは飛ぶものと歩くものの一対の仲間のつもりかもしれない。
 この場合「はと」と「にわとり」とは別の仲間と考えているものが多い。しかし、「うさぎとかめ」のような話などに出てくる動物を結びつけて仲間と考えているものもあることから考えると、絵本などで一対になっているものを見た体験が影響しているかも知れない。
 高学年になると、かなり形態の全体をとらえるようになるが、はちゅう類のような仲間の概念はあまりはっきりつかんでいないようである。
 虫の概念は、低学年では、獣・鳥・魚・貝などの外は一括してみな虫と考えているが、高学年でもこの傾向がまだ残っている。


第3章 学習内容の組織化
I.学年の指導目標
 各学校において、理科指導の一般目標が作られたならば、こどもの発達を考慮して、各学年の指導目標を定める必要がある。
 この学年の目標は、さらに具体的には、その学年の単元の目標となって示される。すなわち、その学年の単元の具体的な目標は、その学年の指導目標が達せられるように組織されなければならないし、学年の目標は理科の一般目標が達せられるように計画されていなければならない。このようにしてこそ、一貫した組織ある指導ができることになる。
ここに示す学年の指導目標には、次の事がらを配慮してある。
(1)第1学年から第6学年までの間に、理科の一般目標が達せられるように組織してあること。
(2)理科の全分野にわたって、学年の指導の焦点を明らかにしたこと。
(3)こどもの発達に即し、各分野のねらいが、学年で発展するように計画され ていること。
(4)こどもの学習意欲を盛んにするよう考慮すること。
(5)幼稚園の自然に関する学習のねらいに続き、また、小学校から発展する中学校の理科の目標に無理なく連絡するよう配慮したこと。
幼稚園
1.太陽・月・星・雲に興味をもち、それらの美しさを楽しむ。
2. a.天気には、いろいろあることがわかる。
  b.自然界に起るおりおりの著しい変化に気づく。
3.a.飼っている生き物(いぬ・ねこ・うさぎ・にわとり・小鳥・きんぎょ等)に興味をもつ。
  b.四季おりおりの花・くだもの・野菜に興味をもつ。
  c.飼っている生き物や草花に親しみをもって、世話の手伝いをする。
4.a.元気で、安全に遊ぶことができる。
  b.からだをきれいに保つように気をつける。
  c.好ききらいなく、また落ち着いて食事をするように努める。
5.a.おもちゃ・遊戯道具を興味をもって使う。
  b.身近な道具について、それらが役にたっていることに気づく。
  c.おとなのする技術的な仕事を興味をもって観察する。
  d.電車・汽車・自動車などの乗り物を興味をもって観察する。
 第1学年
1.太陽や月や星に興味をもち、童話的な見方からしだいに離れ、簡単な事実に気がつく。
2.a.山・川・海のような土地の形の変化に興味をもつ。
  b.いろいろな天気があることがわかる。
  c.自然界に起るおりおりの特徴のある現象に興味をもち、自然に親しむ。
3.a.家畜・鳥・魚・虫などの種類や、暮し方に興味をもつ。
  b.花・くだもの・野菜の種類や成長に興味をもつ。
  c.動物や草花に親しみをもち、喜んで世話をする。
4.a.からだや着物を清潔に保つように気をつける。
  b.元気で安全に遊ぶことができる。
  c.食べ物や食べ方に気をつける。
5.a.おもちゃや簡単な道具の働きに興味をもって使う。
  b.身近にある機械や道具が役にたっていることに気がつく。
 第2学年
1. 太陽や月や星に興味をもち、認める事実の範囲が広がる。
2.a.雨水のゆくえや川の流れ方に興味をもつ。
  b.天気がいろいろに変ることに興味をもつ。
  c.季節ごとに特徴のある現象に興味をもち、自然に親しむ。
3.a.動物や植物が成長したり、暮し方が変ったりすることに興味をもつ。
  b.動物や草花や野菜に親しみをもち、喜んで世話をする。
4.a.からだや身のまわりを清潔に保つように気をつける。
  b.元気で安全に遊ぶことができる。
  c.親や医者がからだを守ってくれることがわかる。
5.a.おもちゃなどのしくみや動かし方に興味をもつ。
  b.簡単な道具のはたらきやしくみを知ってたいせつにし、使うことができる。
  c.身近にある機械や道具の役にたっていることがわかる。
 第3学年
1.太陽や月や星に興味をもち、童話的な説明と事実との区別がつく。
2.a.岩・石・土などに興味をもつ。
  b.季節によって天気に特徴があることがわかる。
  c.季節が移り変るにつれて、自然の状態が変ることに興味をもち、自然の美しさを味わう。
3.a.季節によって、生物の成長や暮し方が変ることがわかる。
  b.動物の食べ物の取り方や運動のしかたやすみかに興味をもつ。
  c.動物や草花や野菜の成長に興味をもって世話をする。
4.a.からだや着物やすまいを清潔に保つように気をつける。
  b.ほどよい食事・運動・休息に関心をもつ。
  c.交通や遊びについて、安全に気をつける。
5.a.おもちゃなどのしくみや力の伝わり方に興味をもつ。
  b.日常使う道具のはたらきやしくみを知り、それらをじょうずに使うことができる。
  c.身近にある機械や道具のはたらきや、それらが役にたっていることがわかる。
第4学年
1.a.太陽・月・地球・星の実体や、その動き方の初歩的な理解が得られる。
  b.太陽が地球に大きな影響を与えていることがわかる。
2.a.土地の形や岩石が水の影響で変化していくことがわかる。
  b.気象の変化を調べて、季節によって天気に特徴があることがわかる。
3.a.身のまわりの生物の特徴をつかんで、類別することができる。
  b.季節や地域によって、それぞれの特徴のある生物が見られたり、状態が変ったりすることがわかる。
  c.生物の一生の変化や、ふえ方を知るために、生物を続けて育てる。
4.a.自分のからだの状態に常に気をつけ、健康を保つ習慣を身につける。
  b.日常生活の全般にわたって、けがや病気をしないように気をつける。
  c.けがや病気に対する応急手当の必要を理解する。
5.a.火や熱の利用のしかたを理解し、日常生活上、火や熱を使う仕事を合理的に処理することができる。
  b.電気に興味をもち、乾電池を使うことができる。
  c.簡単な機械や道具のしくみやはたらきを理解して、日常生活にそれらを合理的に使うことができる。
6.身近にある資源が日常生活に役にたつことを理解し、自然の恩恵に気づく。
第5学年
1.a.太陽・月・地球・星の運動について理解する。
  b.宇宙の広さや秩序に興味をもつ。
2.天気や気候の変化する筋道を理解し、天気予知が日常生活に役だつことがわかる。
3.a.生物相互の関係を通じて、自然の調和を感得する。
  b.生物愛護の識見を養う。
4.a.食べ物や食べ方の健康に対する影響を理解し、食生活を合理的にしようとする。
  b.すまいや着物の健康に対する影響を理解し、それらの健康によい使い方を身につける。
5.a.日常生活における電気の効用に興味をもち、電気器具の使い方を理解する。
  b.光や音についての理解を深め、これらに関する機械や道具が使える。
  c.機械や道具のしくみやはたらきを理解し、日常生活に、それらを合理的に使うことができる。
6.生物が日常生活に貢献することを理解し、生物の保護に協力する。
 第6学年
1.a.季節の変化が起きる筋道について理解する。
  b.生活を計画的に処理するために、暦を利用する。
2.a.地球の表面や内部の変化に興味をもち、変化が起きる筋道を理解する。
  b.生物が変化してきた様子に興味をもつ。
3.動物や植物の生命を保つはたらきや環境に対する適応を理解し、自然の微妙な調和を知る。
4.a.人のからだの構造やはたらきについて理解し、健康で安全に身を保つ習慣を身につける。
  b.自然科学の研究が健康な生活に貢献していることを理解する。
  c.伝染病や寄生虫について理解し、その予防に協力する。
5.a.交通機関のしくみやはたらきを理解する。
  b.機械や動力や電気に関する自然科学の進歩が近代生活に貢献していることを理解する。
6.天然資源が日常生活に貢献することを理解し、自然の恩恵を知る。
中学校
1.われわれの生活を改善するのに役立つような、科学的な事実や原理に関する知識を得る。
2.人と自然界との関係を理解し、さらに、人は他の人々、いろいろな生物、自然力の恩恵を受けていることを理解する。
3.人体や、個人および公衆衛生についての、基礎的な知識や理解を習得、健康的な習慣を形成しようとする気持を起し、さらにその実現に努める。
4.自然環境や自然現象を観察し、実際のものごとから直接に知識をうる能力を養う。
5.自然の偉大さ、美しさおよび調和を感得する。
6.自然科学の業績について、社会に貢献するものと有害なものとを明らかに区別し、さらにすべての人類に最大の福祉をもたらすように科学を用いなければならないという責任感をもつ。
7.科学の原理や法則を日常生活に応用する能力を高める。
8.一定の目的のために原料や自然力を効果的に、また安全に使う能力を高める。
9.科学的な態度とはどのようなものであるかを理解する。たとえば、いろいろな事実に基いて一応の結論が得られても、一切の偏見を捨ててさらに多くの事実を探求し、じゅうぶんな証拠が得られるまでは判定をさしひかえる。さらに、こうして得られた結論でも、別な事実にあてはめてみて深く吟味する。
10.問題を解決するために、科学的な方法を使う能力を高める。
11.現代の産業および商業生活において、科学に関する知識や科学的な習慣が重要であることを認識し、またそれらを習得して、職業の選択や就職後に役立たせる。
12.正確に観察し、測定し、記録する習慣を形成する。
13.道具を巧みに使いこなしたり、機械その他科学的に作られたものを正しく取り扱ったりする技能や習慣を養う。
14.人類の福祉に対する科学者の貢献と、科学がどのようにして現在の文明を築くのに役立ったかを理解する。
15.科学のいろいろな分野における専門家を尊敬する態度を養う。
16.ほかの人と協力して、科学上の問題を解決しようとする心構えを持つ。

U.単元の問題と、その目標ならびに学習活動
 
1.問題を解決する学習
 わたくしたちの日常生活において、寝たり起きたり、顔を洗ったり、食べたりというような日常の習慣になっている生活を除くと、いろいろな所、いろいろなときに、いろいろな問題にぶつかる。これらの問題を解決しなければ、わたくしたちの日常生活を円滑に進ませることはできない。一から十までほかのひとの命令に従って意志の無い機械のように動こうとする人には、割合に問題解決の必要が少ないかも知れないが、自分の意志によって行動しようとする人々にとっては、日常生活の大部分が問題解決の過程の連続であるともいえる。このように考えると、問題解決の能力は民主的な社会人となるのに必要な能力ということができる。
このような問題解決の能力は、どのようにして養われるのであろうか。これは、小さいときから自分に起きた問題を自分で解決したという経験を積み重ねていく間に養われるものである。そこでこの問題を自分で解決する過程を、学習に持ちこんで、これを全体の学習中の一つの大きな仕事にしようとするのである。この仕事は、一つのまとまりのあるものであって、これを単元と名づける。

2.単元の問題にはどんなものがよいか
 単元の学習というのは、簡単にいえば、一つの問題をつかんで、それを解決するまでの研究の過程である。それで、単元の表題はこれから研究しようとする問題そのものを使うのが適当である。この研究しようとする問題を表わすには、疑問文の形の文章を使うのが、問題の意味を簡単めいりょうに示す上から最もつごうがよい。また、問題をこのような疑問文の形で表わすのは、こどもたちの心理にもかなっている。
こどもたちに「どんなことを研究したいか」「どのようなことを調べたいか」聞いてみるならば、そのとき、大部分のこどもたちは、たいてい「なぜか、どのようになっているか、どのくらいあるか、調べてみたい」というふうに、疑問文の形で答えるものである。

このように,疑問文の形で研究したいことを表わすと,研究する事がらの内容と範囲とを,はっきりと示すことができる。これに反して,たとえば「電気について」とか「自然の変化」とかいうと,いろいろたくさんの事がらを包括することができるが,それと同時に,研究したいことの焦点がはっきりしなくなる。
 単元の問題として不適当な例の一つとして「春の野」とか「夏の遊び」のようなものがある。これらは,意味がばく然としていて,何を研究して解決しようとするのかがわからない。また,他の一つとして「モーターを作りましょう」というようなものがある。これは学習活動であって問題ではなく,大きな問題の解決の方法の一つの学習活動として取り上げるのに適当なも−のである。

3. 単元の問題
 単元の問題は,内容からみると,次の三つの型が考えられる。
 (1)社会生活に関するもの (おもに社会科に関係がある)
 (2)自然現象に関するもの (おもに理科に関係がある〉
 (3)健康に関するもの  (おもに社会科と理科の両方に関係がある)
 自然現象に関する問題は,こどもたちが強い関心をもっているものである。
 これらの問題は単に探求心を満足させるばかりでなく,人間の生活に密接な関連をもっているし,また,社会生活のあるものは,これと無関係にはあり得ない。健康に関する問題には,他人の保健に関するものと,社会の保健に関するものとがあるが,その一半は自然現象の問題であり,他の半分は社会生活の問題でもある。
 このような理科と関係の深い問題のうちおもなものを低学年向きの問題と高学年向きの問題とに分けて例示すれば,次のとおりである。


低学年
高学年

 この表は,次のような立場からつくられている。
(1)単元は,こどもの興味や必要にかなった問題から発展するようなものでなければならないから,各学年の単元の問題を,全国画一的に決めることはできない。それで,ここではこどもの学習の問題として取り上げられそうな問題の例をあげてみることにした。しかも,学習指導要領に取り上げた理解の目標は,一応どれかの問題の学習に出てくるようにくふうしてある。
(2)理科教育の分野を,生活の環境や理解の目標を考慮して,低学年向き5と,高学年向き6に分けてある。

 分野

学年
低学年 空に見えるもの 自然の移り変り 生物の暮し方 じょうぶなからだ 機械と道具のはたらき
高学年 天体の動き 自然の変化 生物の生活 健康な生活 機械と道具のはたらき 自然の保護と利用


 1から5までの分野は,低・高それぞれ同じものであって,こどもの発達の程度を考えて,その表現を変えてあるにすぎない。6の自然の保護と利用は高学年だけにあるから,低学年では考えないでよいという意味ではない。低学年では,特に分野を設け,これを主とした問題を取り上げていくよりも,他の五つの分野の問題の中に密接に結びついて研究されるのがこどもの発達にも合い,学習も無理なく行われるから,この分野を設けてないのである。
 これらの分野のそれぞれについての理科指導が,1年から6年まで,中断されることなく行われることが重要である。こどもの個性によって,動物が好きだとか,機械が好きだとか 興味の程度が違う場合はあるが,こども全体を考えた場合には,興味の分野をこの5ないし6に分けることができる。
また,将来の生活上必要な事がらを考えても,これらの分野が考えられる。
この分野の一つ、たとえば「機械と道具のはたらき」に関する問題が、ある学年に取り扱われないとか、非常に少ないとかいうことのないようにしたほうがよい。指導において、ある分野がまったく欠けていると、それの好きな子どもは、自分の欲求が満たされないために、理科の学習がきらいになったり、指導を待たないで、その分野に活動することになったりしないとも限らない。
  個性に応じて、力の入れ方を違えてよいし、また、おのずから力の入れ方は異なってくるであろうが、それぞれの分野について、だんだん発展するように指導するのが穏当である。
(3) これらの分野のもとに、いくつかの単元に含む問題をあげてある。左側の問題は、問題をやや広くまとめたもの、右側のものは、それをさらに細かく表わしたものである
この右側に掲げた問題のうつ、あるものは下の学年に、また、あるものは上の学年に向いている。指導計画をたてるにあたっての教師の便宜を考え、問題の内容の範囲や表現のしかたをくふうしてある。
(4) 「金物を、どこからとって、どのように利用しているのでしょう」や、「石炭や石油を、どこからとって、どのように利用しているのでしょう」などの問題は、「天然資源を、どのように利用しているでしょう」としても、また、「物の質を、どのように変えて利用しているでしょう」としても、まとめることができるであろう。
これと同じような関係をもつ問題は、低学年の「空に見えるもの」「機械や道具のはたらき」の中にもある。
この関係を表わすために、これらの個所は、表の中の横線を食い違わせてある。

   指導の計画をたてる場合、ここに掲げた単元の問題によらなければならないことはない。なお、この単元に含む問題を基にして、学年ごとに、どのようなことが、単元に含む問題になるか考えたとしても、いろいろ違った組み合わせが生まれるであろう。その場合の手がかりとして、表の右側に、これらの問題が取り上げられるであろうと考えられるおよその学年をあげてある。

 4.単元の目標
   単元の目標は、学校の教育の一般目標に到達する具体的目標の少なくとも一部分であり、学年の指導目標や理科の一般目標と密接な関係があることは、前に述べたとおりである。
   
  この単元の目標には、こどもに期待される理解・能力・態度がはっきりと具体的に表してあることが必要である。
  これらの単元の目標に従って、こどもの有効な学習活動が考えられてくるし、またこれらの目標に照して、学習の効果が評価されるから、目標の決定は重要な仕事である。
  一単元に与えられる目標は多方面にわたることなく、その問題の解決に直接関係の深い事項が具体的・確定的・特殊的にあげられ、実際的でなければならない。一般的な・抽象的な、また、あいまいな、目標は適当でない。ことに、能力や態度の目標においてしかりである。たとえば「事情をありのままに見る能力」のようなのは一般的・抽象的なあげ方であるが、「風が吹くと、どのようなことが起るでしょう」の単元では「風の向きや強さが時によって違うことに気がつく」とあげ、「秋になって、木や草はどんなに変わるでしょう」では、「いちょう・かえで・つた・さくらなどは、葉の色が変って落ちることに気がつく」とするようなのは、特殊的で具体的なあげ方である。
  目標の数は、あまり多くないことが望ましい。特に、低学年では、少数の目標をあげ、こどもがいつも、その目標に向って学習が進められるように計画すべきである。

5. 学習活動
   こどもがその単元に目標を身につけるのに必要で、かつこどもにとって興味があり、可能な学習活動が用意されなければならない。こどもの興味や、能力・活動の傾向、性格などは、個人によって差違があるから、種類の違った活動をなるべく数多く予定するようにしたい。
 学習にあたって,どのような学習活動を選ぶかは,こどもと教師との協力によって定まってくるものであるから,単元の計画の中に,学習活動のすべてを含ませることは困難であろうけれども,地域社会の生活状況,学校の諸種の条件,自然環境などを考慮して,こどもの発達にかなった,目標達成に必要にして有効な学習活動を,なるべく、たくさんに考えておくべきである。そうすれば、学習にあたって,その中から最も適当なものを選ぶことができる。
 次に,単元の目標の一部と学習活動の例を,各学年二つずつ,分野の違ったものを取り出して掲げることにする。これらの学習活動は,特別な地域と季節を考えないで,いろいろなものをあげてあるから,ある地方のある季節にはできないものがあるのはいうまでもないが,教師が自分の学校,または受持のこどもにかなった計画をたてる場合の参考資料となるであろう。
 ここでは,たくさんの学習活動をある程度見やすくするために,類別して掲げた。ある類別中の学習活動の順序は不同である。どんな種類の学習活動を,
どんな順序にすれば,単元の学習にあたって,こどもに最も効果があるかは、実際に計画をたてるときや指導するときに,教師がくふうして定めるべき問題である。
 なお,目標に掲げた能力・態度は,そのうちの一例をあげた。学習活動中,観察は学校の時間にできるものに限り,その他の時間に行う観察は省いてある。
数えたり,歌ったり,本を読んだりする学習については,算数・音楽・国語などの学習指導要領を参照されたい。

単元の目標の一部と学習活動の例

第4章 理科指導計画のたて方

 T.指導計画をたてる場合の教師の仕事

 理科の指導要領をたてる場合、まず、教師は理科指導は何を目指して行わなければならないかを検討し、子供がどのような能力を持ち、どのような事がらに興味や必要を感じているか、また、どのような環境の中にあるかを調査研究することである。

1.具体的な指導目標をつくる
 第一章に掲げた理科の一般目標は、教育の目的や小学校の教育の一般目標を実現しようとして、理科は、主として、どんな分野を担当しているか、また、その学習の指導は、どんな点をねらいとして進めたらよいかを示したものである。したがって、これは一般的な目標であって、どの学校でも、これをそのまま指導目標としてとればよいというものではない。各学校、学級においては、それぞれの事情に即した具体的な目標をつくる必要がある。そのためには、だいたい次の手順が考えられる。

(1)この本に述べてある指導目標を検討する。
それには、
  (a)指導目標の項を読んで、よく理解する。
  (b)教育の一般目標と、理科の指導目標の間に、どのような関係があるかを考える。
(2)これらの目標は、自分の受持の子供に必要なものであるか、また落ちているものはないかを考えて、取捨選択し、落ちているものがあれば付け加える。
(3)自分の受持のこどもに照らして、これらの指導目標のうち、どの点に力を入れるかを決める。
(4)このようにして自分の受持のこどもに適した具体的な指導目標をつくる。
以上の(2)(3)を決めるためには、自分の受持の子どもは、どんな能力を持ち、どんな環境にあってどんな生活をしているのかを調べる。
2 自分の学校(または学級)のこどもは、どのような生活をしているのかを調べる。
(1) どんな必要から、子どもの生活の実態を調べるか。
 (a) 理科指導の具体的な目標を決めるため。
 (b) 学習内容の範囲と排列の順序を決めるため。
 (c) 学習活動を選ぶため。
 (d) 学習の材料を決めるため。
 (e) 指導の方法を決めるため。
(2) どのような事がらについて調べたらいいか。
 (a) 子どもは、どの程度の理解を持っているか。
 (b) 子どもの科学的な能力はどうか。
 (c) 子どもの科学的な態度はどうか。
 d) 子どもは、どのようなことに興味や関心を持っているか。
 (e) 子ども達は、どんな要求を持っているか。
 (f) 子どもは、これまでに、どのような経験をしているか。また、どのような遊びをしているか。
(3) どのようにしてしらべるか。
 (a) こどもの行動を観察して、これを記録する。
 (b) 問を出してこれに答えさせる。
 (c) 調査カードを用意して、きにゅうさせる。
 (d) 成績品(報告・制作物・ノート・作文など)を調べる。
 (e) 調べた結果をまとめる。(第2章 子どもの発達と理科学習 参照)
 これらの事項を調査する場合には、調査の結果をいかに整理し、いかに活用するかと言うことを、あらかじめ十分に考えてから着手する必要がある。そうでないと、折角多大な玄人時間を使って調査しても、それが死蔵されてしまうことになる。
 調査はなるべく多方面にわたらないように簡単にし、―つの調査では、―つのことをねらわないように計画する事が望ましい。
 次に興味調査の一例を乗せる。これは、学習指導要領中学校理科編を編集するのに必要な資料をえるために、文部省がしょうわ24年6月に実施した物である。
調査の方法は
1 全国を9地区と6大都市とにわけ、各地区並びに6大都市について数校ずつ、地域の犠牲を考慮して選択し実施した。(84校)
2 各校では、各学年について男女を含む1学級ずつ計3学級について行う。特に興味や才能のある生徒だけについて調べることのないよい卯にする。
3 調査用紙は無記名とし、男女別・学年別を記入させる。
4調査時間は15分間とする。書くことを思いつかない生徒には、無理に書かせない。
(調査用紙 略)
長打の結果は集計用紙を使って整理した。
1 集計用紙は1年男・1年女・2年男・2年女・3年男・3年女の6とおりにわけて、別の集計用紙に記入する。
2 上の6とおりのおのおのは5種(生き物・空と土・機械と道具・保健・薬品)の集計用紙にまとめる
3 調査用紙に生徒の答を、集計用紙の各項にしたがって分類・集計し、その数を集計用紙の各欄に算用数字で記入する。
次に集計用紙の一例(生物に関する物)を掲げる。

集計用紙 略


(3)社会環境
    公園・博物館・水道。貯水池・発電所・電話局・側候所・ガス会社・いろいろな工場・農事試験場・保健所・病院・交通機関などの諸施設(その他会社の現状)
    行事(季節的な行事・一般会社の行事・学校の行事など)
(4)自然環境
    山・川・野原などの状態(動植物の分布の状態・地形・地質・水質など)
    天然記念物
    季節の移り変わり(春・夏・秋・冬の生物の生活、天候・気象の変化など)
 学習は単に学校内だけで行われるのではなく、広く地域社会を教育の場として行われている。こどもは、学習の必要に応じて、地域社会のいろいろな機関や場所に出かけて、学習を行う機会がしばしばある。したがって、指導の計画をたてるにあたっては、前もってそれらの機関と連絡をじゅうぶんにとって、どのような時期に、どのような方法で、それらの機関や場所に調査や見学のために出かけたり、また、そこからどのような学習の援助を受けるのが適切であるか調べておくことがたいせつである。
 そして、それらの調査、または連絡した機関や場所については、これを次のような表にまとめ、必要に応じ活用できるように準備しておくことが肝要である。地図を添えれば、いっそう有効であろう。

目的地 学年 関係ある分野 学習しうる内容 所在地 交通機関
距離・時間等
○○山
○○電気株式会社
○○牧場
○○郵便局
○○○
○○国立病院
○○天文台
1,2,3
5,6
4,5,6,
5,6
4,5,6
5,6
5,6
生物の生活・自然
の変化
機械と道具のはたらき
生物の生活・自然の保護と利用
機械と道具はたらき
生物の生活・自然の変化・自然の保護と利用
健康な生活
天体の動き
植物(野草)・動
物・岩石・地層
電球の製作
牛・やぎの飼育・利用
通信施設
海浜の動植物・海・のりの養殖
病院の施設・伝染病
天文台の施設・天体観測
○○○○○
○○○○○
○○○○○
○○○○○
○○○○○
○○○○○
○○○○○
電車1時間
徒歩30分
電車45分
徒歩10分
徒歩15分
電車1時間
徒歩20分
電車1,5時間
徒歩20分
(以下省略)

 鳥・虫・かえるなどの出現の日とか、開花の日とかは年によって一定していないけれども、何年間かの観測値を平均しておくと、だいたいの標準をたてることができる。種まき・植付け・収穫等の日を決めるには、雨・霜・雪などの気象要素とともに、これらの生物暦を研究しておくことがたいせつである。
 このような研究は、測候所の統計的な研究資料を利用するばかりでなく、学校でも、その土地で観測した事がらを報告発表すれば、広く社会に貢献することにもなる。これらの変化は、土地の高さ・地形等の影響を受けるから、測候所発表のものが、同じ県内でも、そのまま利用できるとは限らない。
 季節の移り変わりに見られる生物の生活や気象の変化などについて、日ごろから研究しておかないと、野外観察を計画しても、実際にその場所にいってみると、花の時期が過ぎていたり、虫のよく鳴く時期がすぎていたり、虫の姿がもう見られなかったりして、期待したような学習ができないことがある。

行事についての記録例  (ある年のある学校)

月 日 行事
4月1より7日まで

   4月4日
   4月8日
   4月10日
   4月11日
   4月20日
   4月下旬
   4月27日より
   4月29日 
緑の週間(西日本 3月1日〜7日、中部日本 4月1日〜7日、
東日本 5月1日〜7日)
始業式 入学式
花まつり
1年生歓迎会
メートル法公布記念日
通信記念日
学校身体検査
結核予防習慣
天皇誕生日
5月1日
5月2日
5月3日
5月4日
5月5日
5月上旬
5月11日より16日まで
5月11日
メーデー
八十八夜
憲法記念日
サンマータイム始まる
こどもの日(端午の節句)
遠 足
バード・ウィーク(愛鳥週間)
母の日(感謝学芸会)
6月3日
6月4日
6月10日
6月11日
6月22日
動物愛護習慣
虫歯予防デー
時の記念館
入 梅
夏 至

季節の移り変わりについての記録例(東京付近)

平均気温 生物の生活・天象気象の変化
11° ○こぶし・れんぎょう・ゆきやなぎ・あせびなどの花咲く 
○つくし・ぎしぎし・せりなどの摘草ができる。
○むぎ40cmぐらいに伸びる。
○とうもろこし・いんげん。しゅんぎくなどの種をまく。
○おたまじゃくしがたくさん見かけられる。
○霜が降りたり、みぞれのふることがある。
○強い南風が砂ほこりを巻き上げて吹くことがある。
○夜は4°ぐらい、昼は、13°ぐらいの気温の変化がある。
○そめいよしの満開。
○じゃがいもの芽が出る。
○びろうどつりあぶ・きあげは・もんしろちょう・もんきちょう・ひおどしちょう・るりたてはなどが飛んでいる。
○つばめの姿を見る。
○へびいちご・かきどおし・たねつけばな・なずな・すみれ・きじむしろなど咲いている。
12.5° ○とのさまがえるの鳴き声を聞く。
○そめいよしの散って、さとざくら咲きだす。
○へびを見かける。
○あしながばち巣をつくりだす。
○さなえとんぼ・かわとんぼ羽化しはじめる。
○雑木林の新緑が美しい。
○とのさまがえるが出てくる。
○野には、じゅうにひとえ・きらんそう・れんげ・たんぽぽ・すみれ・かきどおし・きじむしろ・へびいちご・さきごけなどが咲いている。
○おにぐも・くさぐも・あしながぐもの子が小さな巣をはりだす。
○とのさまがえるの鳴き声うるさいほどである。産卵する。
○やえざくらの花盛り。
○たけのこ出さかる。
○もくれん・はなずおう咲く。
14.5° ○もんしろちょうの卵採集によい。
○かわとんぼ。さなえとんぼ。こおにやんま飛んでいる。
○なす・きゅうりの苗を植える準備をする。
○えんどう・そらまめの花咲きだす。
○とのさまがえるのおたまじゃくしを採集するによい
○露地のチューリップ美しく咲いている。
○むぎの穂出る。
○苗代作業はじまる。
○はい活動しはじめる。
○雑木林の新緑美しく、春は盛りである。
○あげは・きあげは・くろあげは飛ぶ。
○畑に雑草の芽ばえ出はじめる。
○ふじの花咲きだす。
15゜ ○まつの花咲く。
○くまばち・すずめばち・はなむぐりなど花をたずねて、とびまわっている。
○学校の「いねつくり」の学習のために稲の種まきをする。
○よしきり鳴いて新緑の世界美し。
○毎日おだやかな天気がつづく。よく晴れた朝など薄氷のはるようなこともある。
○畑には、キャベツをそろそろまきはじめようとしている。
  えんどうの実がつきはじめている。
  そらまめも実がつきはじめている。
  とうもろこしの芽出る。
○じゃがいもの土よせをする。
○キャベツの葉につくもんしろちょうの青虫も大きくなって、さなぎになりはじめている。
○むぎわらとんぼの姿を見かける。
○雑木林には、きんらん・ぎんらん・かなびきそう・
 つちぐり・おにたびらこ・きんぽうげ・すいばななど花をつけている。
○南風がよく吹く。日中は20゜ぐらいになることがある。
○きゅうり・なす・トマトの苗を植えつける。
○かまきりの卵がかえって、幼虫が出てくる。
17° ○だいこん・菜の類に、せすじさるはむし・だいこんさるはむしがついたので消毒をする。
○むぎの穂出そろう。
○やつでの実が黒く熟して、「いろぞめ」などの学習に使える。
○春の野草多く咲きそろい、植物採集会を開くのによい。
○もんしろちょうの1回目の発生を終り、成虫の姿がまれになった。
○潮干狩にいく。
○水田の仕事盛り、苗代には稲が1.2cmぐらいに伸びている
○はなしょうぶ・あやめ咲きはじめる。
○はるぜみの鳴き声を聞く。
○さつまいもの苗を植えるために、畑の整地をする。
 いんげん・トマト・きゅうりなどに支柱を立ててやる。
○かが出てくる。
○はいがうるさく飛びまわる。
○じゃがいもつぼみをつけ、さといも芽を出しはじめる。
○いろいろな毛虫が出て、葉を食べている。毛虫を飼育して、こん虫の育ち方を調べるのによい。
○さつまいもの苗を植える。
○こうほね・すいれん・じしばり・うつぎ・あかしや・えごのきの花が咲いている。
○あわふきむし・しおからとんぼ・むぎわらとんぼ・おはぐろとんぼ・いととんぼなど見られる。
○つばめ巣をつくり、卵をあたためている。
18.5° ○せせりちょう・ひかげちょうの類が飛ぶのを見る。
○高尾山で、あおげら・あかげら・こげら・かわげらす・さしば・ひよどち・せんだいむしくい・かわせみ・きせきれい・しじうがら・めじろ・おおるり・えなが・きびたき・いわつばめ・おなが・やまがら・ほおじろ・ちごもず・こじゅけい・やぶさめ等の鳥の姿や鳴き声を聞く。
○もんしろちょう第2回目発生する。
○どくだみ・ひるがお・かにつりぐさ・かもじぐさの花咲き、初夏らしくなる。
○梅雨模様の天気が続く。
                  (以下 略)

 教師は、学校環境を、学習指導のための適切な場として役だてるように常に心がけ、これを整備しなければならない。
 理科に特に関係の深いものをあげれば次のとおりである。
  校庭・学校内(池)・教室・廊下・資料室・作業室・準備室・児童図書館児童博物館など、(第7章 小学校における理科の施設と材料 参照)

 U.年間指導計画のたて方

 学習指導の計画をたてる場合,これを1年またはそれ以上にわたる長期の学習計画(年間計画)と月または週を単位とした比較的短い期間の学習計画とに分けて考えることができる。
 年間計画は,毎日の計画をたてる場合の基礎になるものである。理科の年間指導計画は,いうまでもなく,その学校の全体の教育計画の一部であるから,その学校の実情に合致したものでなければならない。無批判に他校の計画を模倣しても,その学校の教育の目標を適切に具体化したものにはならないであろう。

1. 年間指導計画は,なぜ必要か
(1)その日,その日の計画をたてるには,長期にわたる指導の見通しが必要である。
(2)予定計画外の問題がこどもから出た場合,それをどのように取り上げたらよいか,また,どのような目標をもって,その学習を指導したらよいかを判断し,全体として調和のとれた指導をするために。
(3)他教科と調和のとれた指導をするために。
(4)学年が進んだ場合に,前学年とそれに続く学年の,学習の体系を保つために。
(5)担任教師が途中で変わっても,指導が中断されないようにするために,長期にわたる指導の見通しが必要である。

2.どのようにして年間指導計画をたてるか
 年間指導計画をたてる場合の手順をあげれば,次のとおりである。
 (1)予想される学習の問題を選択する。
  (a)こどもが,どのようなことに興味と必要を感じているか調査した事がらを整理する。
  (b)指導目標に合うかどうかを調べて選択する。
  (c)学年のこどもの発達に合うかどうかを考えて整理する。
 (2)単元を決め,その目標を定める。
  (a)上に述べたようにして選び出したいくつかの問題を,全部含むような,いっそう大きな問題にまとめてみる。これで単元が定まる。
  (b)単元を季節や行事などを考えに入れて,年間に配当する。
  (c)単元は,どのような目標を含むか吟味する。
  (d)おもな学習活動を選択する。
  (e)単元の指導を行うために必要な環境を考え,資料を調べる。
  (f)単元の評価の方法や資料について調べる。
 (3)以上のことを,次の要項に分けて計画表をつくる。
   単元名
   単元の目標
   おもな学習活動
   指導期間,または指導時数
   指導の行われる環境
   必要な資料や施設
   他教科との関連
   評価の資料

   次に年間指導計画表の一例を掲げる。ここに想定した学校は,人口10万人ぐらいの 東京に近い中都市の小学校である。
   この年間指導計画表は第3学年のものであり,便宜上(T)表と(U)表とに分けてある。(U)表は一つの単元について,記述するにとどめ,他の単元については,これを省略した。
  (T)表中,単元に含む問題は,本書の性質上,特に理科の問題をとり出したのである。(U)表についても,理科の問題について記述するにとどめた。これらの単元に関連のあるその他の問題については,他の教科の学習指導要領を参照されたい。

第3学年 年間指導計画表(T)
第3学年 年間指導計画表(U)

第5章 学習指導法

1.学習指導法に影響する要素

 こどもが望ましい経験を重ね、有効な活動を行うためには、学習指導の計画だけでは十分でなく、すぐれた指導法がそれに伴なわなければならないことはいうまでもない。有効な学習は、学ぼうとするこどもと、指導する教師との協力によって行われるといってよいであろう。
 次に、このことを念頭において、学習指導に影響する諸要素について考えてみることにしよう。
 こどもが、これまでに経験したことのない事がらや、見たことがあっても、注意しなかったことに出会うと、「なんだろう」とか「なぜだろう」とか疑問を起こすであろう。また、経験したことがあっても、まだ解決のついていないことには同じように疑問を起こす。このように、こどもが興味をもち、解決の必要を感じている場合は、そのことを問題として解決の活動が始まる。
 このような問題解決の過程中で
  (1)こども自身が満足するように問題を解決する。
  (2)問題解決の過程中で、こどもの現在および将来に役立つ理解・能力・態度を養う。この間に新しいことを学んでいったり、新しい習慣を身に付けていったり、新しい感じ方、味い方を体得していったりして、環境に適応した生活をしていく。
 この二つの目標を持って指導される活動が学習である。
 この学習の効果が、じゅうぶんあがるように指導するには、その方法に、どのような要素が影響するかを、しっかりつかんでおかなければならない。

 1.学習するものとしてのこども
学習するにあたって最も必要なことは、学習するものとしてのこどもの実態を、しっかりつかむことである。それは、次のように分けて考えること

***152-159
製作を学習の材料とした場合
  例、簡単なおもちゃなど

 b.製作や実験などに使う材料が安いか、たくさんある場合、しかも、グル−プで協力してやる必要のないとき
   例.花の構造を調べる等
 c.基礎的な技術であるため、各自で学習する必要のある場合
   例.虫眼鏡の使い方、温度計の使い方等
(2)
 a.グル−プ学習を行う場合
  i.協力する態度を養う場合
  ii.手分けしたほうが問題が解決しやすい場合
   例.交代で観察・測定・世話をするとき
    一つの問題を分けて、分担解決をするとき
     この場合、こどもがその問題を分担して研究する必要性をじゅうぶん感じ、他のグル−プと、自分たちのグル−プの研究とは、密接なつながりがあることを自覚して研究するよう指導することが肝心である。
     そうでないと、グル−プごとに、その研究結果を発表し合うとき、たのグル−プの発表は自分たちに関係のないこととして聞く誤に陥ることになる。
  iii.能力の違うこどもを、一つのグル−プに集めて、互いに啓発する機会を作る場合
   例.グル−プの各員をまとめる能力・企画する能力・記憶する能力・工作する能力・交渉する能力など、各自の能力の違ったものを組み合わせる。
  W.能力の大体同じこどもを一つのグル−プに含める場合
   例.理解する能力の近いグル−プ
    持久力の近いこどものグル−プ、問題をつかむ能力の早いグル−プ。
  X.材料のたりない場合
 b.グル−プ内の仕事の分担
   グル−プ内でめいめいが分担している仕事の種類は、時によっては取り替え、めいめいがかたよらない学習をするように調整することが必要である。
 c.グル−プの人数
   グル−プの人数を決める場合には、次の点を考える。
  i.こどもの社会性の発達
  ii.学習活動の種類
  iii.学校の施設・材料
    低学年では「ごっこ遊び」のような遊びの時は、グル−プの人数は割合に多くて良い。
     普通4〜5、10人位までできる。「お花やさんごっこ」のときには、1軒の店を分担するグル−プの人数は2〜3人が適当である。野外学習のときは、花束を作る場合には2〜3人、石を集める場合には、石をめいめいで自分の袋に入れるとしても、ともに行動する人数は2〜3人が適当である。
     高学年では、実験・制作・材料集め・見学・訪問等多くの場合、グル−プの人数は4〜6人が適当である。
     このように、グル−プの人数は、こどもの社会性の発達と、学習活動の種類とを考えて、適当な人数を考える子とが望ましい。 
(3)めいめいで学習するのと、グル−プで学習するのとを組み合わせる
   この二つの学習は、一応は別の形式の学習方法であるが、実際こどもを始動する場合には、この二つをまったく別の 物として切り離して行わないで、場合場合に応じて、二つの学習の形式を組み合わせると効果がある。たとえば、めいめいの学習からグル−プの学習にはいり、あるいはグル−プの学習の中間にめいめいの学習がはいるようにする。

***162-165

理科の学習指導法

 (1)こどもが、うさぎを手に入れて、それを学級で飼育していこうと相談がまとまった。そこで問題になったのは、どのようにして飼うかということであった。このうさぎの飼い方について話しあっているうちに、どのような飼育箱がよいのか、どのようなものをどれえだけ食べさせたらよいのか、手入れはどのようにしたらよいのか、以上の三つの問題を解決すればよいということになった。
 (2)次にみんなで、これらの問題をどのようにして解決できるかを考えた。
すでにうさぎを飼育したことのあるこどもは、これまでの経験を思い起こして、いろいろの意見を出した。これまで経験したことのないこどもは、農家を訪問して調べようとか、教科書に書いてあるから、それを読もうとか、うさぎの飼育について書いてある本を探して読んでみようなど、解決の方法をいろいろ考えた。そうしてめいめいの好みに合い、自分にできる方法によって分担し、研究を始めることになった。
 (3)あるこどもは本を読んで調べた。あるこどもは農家を訪れ、飼育しているところを見せてもらったり、農夫の話を聞いたりした。またあるこどもは、上級生に聞いたり、両親に聞いたりした。
 (4)こうして調べた事がらについて、みんなで話し合った。そのときに農家
での調べはまだじゅうぶんではないことがわかったけれども、いちおうそれ
らの結果をまとめて結論を出した。
 (5)こどもはこれらの結論に基づいて、飼育箱を作ったり、食べ物を用意してこれを与えたり、手入れをしたりする仕事にとりかかった。

 さて、うさぎを飼いたいというこどもの要求に基づいて進められた、これまでの学習およびその指導の課程を要約してみると、おのずから次のような五つの段階に分けられる。

学習の段階 指導の段階
1.
2.
3.
4.
5.
学習すべき問題をはっきりとつかむ。
問題を解決するために計画をたてる。
計画に基づいて、研究や作業を続ける。
研究や作業の結果をまとめる。
まとめた結果を活用し応用してみる。
導きの段階
計画の段階
研究の段階
整理の段階
活用の段階

 こどもたちがうさぎを飼う仕事にとりかかり、その仕事を続けていく間に、うさぎに有害な食物はどのようなものか、食物と成長との関係はどうか、木のようなかたいものをかじることがあるのはなぜか、どのようにして運動するかなどの疑問が、次々に起り、その度に問題が構成され、解決のために活動が展開されることであろう。このときの指導の過程はふたたび上表1〜5の順序をふむのが一般である。
 このような指導の過程は、問題解決を目指して行われる指導の特徴であるから、上に示したものより大きな問題を解決する学習の中においても、あるいは、もっと小さな問題を解決する学習の中においても、同じような過程をたどるということができる。
たとえば、一つの実験をする場合を考えてみると、まずこのような段階をふんで、仮の結論を得る。この結論を問題解決に適用してみて、さらに実験をやり直す学習にはる。このときには、また最初の段階から学習がくり返され、本当の結論を得ることになる。このようにいくたびかこの学習の順序がくり返されながら進んで、ついに単元の学習を終えることになるのが普通である。
次に、こどもの学習の順序と、それに沿って進められる指導の過程の関係をわかりやすくするために、表に示してみる。

学習の過程 おもな学習活動 指導の過程
1.問題をつかむ ・生徒や級友と話し合う。
・教科書や参考書を読む。
・映画・幻燈などを見る。
・話を聞く。
・見学する。
1.指導の段階
・指導前の調査をする。
・経験を思い出させる。
・本の選択・話合いなど
 の学習活動をたすけ、
 [注意]a. この表の学習活動の順序は、学習の行われる順序をそのまま示したものではない。学習活動の順序は、単元の学習のある時期の問題、そのときのこどもの興味や要求などによって決まるものである。上の表は、しばしばとりあげられる学習活動を掲げたものである。
     b. この表に示す学習活動が、ある単元の学習の時期に全部行われるというのではない。単元の問題を解決するにふさわしい学習活動として、一般にどのようなものがあるかを示したにすぎない。

  次に各段階における指導について、もう少し詳しく述べてみよう。
 (1) 導きの段階
   この段階の目的は、単元の問題についてこどもの興味を導き、しだいにその問題をはっきりつかませるとともに、学習する意欲を盛んにすることにある。そのためには、話合いや、参考書・教科書を読むことや、映画・幻燈を見ることや、遠足や見学をすることなどの手段が用いられる。
    したがって、模型・標本・実物・写真・図表等の陳列、参考書・雑誌・新聞などの準備が必要になる。
    殊に話合いは、教師にとって、こどもがどのようなことに興味を持ち、どの程度に問題をつかんでいるのかを知るとともに、それを手がかりとしてこれから後の展開の方法を考えるのには、まことによい手段である。
  これらの問題をつかむ手がかりは,新聞記事・ラジオニュース・時の話題・行事などの社会現象からの場合もあり,大水・火災・地震・伝染病・停電・断水などの偶発的な事象からの場合もあり,また,こどもの生活の直接の経験からの場合もある。
  問題をつかみ、その解決に興味なり、必要感を起こすときには、こどものこれまでの経験の深いもの、浅いもの、興味をすでに持っているもの、あまり興味のないものによって、指導に手心を加えることが必要である。
  たとえば、低学年で「ままごとあそび」をする場合は、こどもの誰でもが興味を持っているものであるから、特別苦労しなくてもとびついてやる。
 それで、この場合は、あまり時間をかけなくてもよい。しかし、学年がのぼるに従って、こどもの経験にも差ができ、興味もいろいろ分かれてくるとともに、社会性も発達してくるので、指導にも趣向をこらし、時間をかけることが必要になってくる。
  学習する事がらに必要を感じ、興味を起こすということは、問題をはっきりとつかみ、これを解決する必要と興味をいうのであって、先生にほめられるとか、点数をもらうとか、試験に出るということのための必要や興味をいうのではない。
  特に、教師の意図をこどもにおしつけるようなことがたびかさなると、こどもは常に命令を待って、はじめて行動を起こすようになり、自発的な研究態度を養うことはできない。こども達の個々の興味や関心・能力などに目をとめて,それぞれのこどもに適した指導をすることが大切である。
(2) 計画の段階
  問題がはっきりとらえられてから、その問題をどのように解決していくかの計画を立てることが、この段階の目的である。
  普通は導きにつづいて話し合いがつづけられ、解決の方法・順序が定められていく場合が多いが,それとともに,教科書を読んだり,幻燈や映画を見たり,教師の話を聞いたり,教師の実験を見たりするような手段も併用される。
   話し合いが進められるにつれて、問題の輪郭もだんだんはっきりし、研究の方法が次々に定められていく。ときには、いくつかの小さい問題に分けられ、グループの研究に移すような計画がたてられたり、また、必要な資料を、みんなで集めたりするような計画がたてられたりすることもある。
   このような計画をたてるいとなみは、今自分が解決しようとしてたてた計画に従えば、どのような結果になるかを予想することによって、興味深く、また解決に最もふさわしい計画がきめられる。従って、教師は、子供の計画をたてる話合いを、いつもこの結果の見通しをもとにして行われるように指導することが必要である。
   予想をもたない試みは、むだ骨おりになりがちである。結果の予想をたてることによって、むだなく、解決の目的に向かう学習を発展させることができる。そのためには、まず問題の本質や内容に類似していると思われる過去の経験に照らし合わせて、あれこれと結果を予想すべきである。また参考資料によって調べる必要も起るであろう。こうした経験になり、資料なりによってはじめて、たぶんこうであろう、こうすればよいであろうという予想がつくようになってくる。
 この結果を予想して学習を進めていくということは、次の研究の段階においても重要なことである。たとえば、実験をするときを考えてみると、自然の状態では、はっきりと事実を確かめられない場合、結果を予想することとよって、はじめて、特定の状態のもとでそれを観察し、調べていくことができるのである。
(3) 研究の段階
 問題がきまり、解決の方法について計画がたつならば、その計画に基いて、こどもが力強く研究や作業を続けて、学習の目的を達成することのできるように導くのが、この段階の目的である。
 ここでは、表に示したような多彩な活動をとり入れ、こどもが納得できるまで研究するように指導することが望ましい。教師が、自分で考えたコースをこどもに押しつけるとか、また、ひとりのこどもの考え出したコースでしばるというようなことは、学習の発展を妨げることになるから、注意しなければならない。
 この段階でとりいれられる学習活動は、低学年と高学年とでは、おのずから差異がある。自他がまだはっきり分化してない、しかも変化を好み、活動的な低学年のこどもでは、遊びの形態をとり入れ、遊びの間に指導目標にかなう楽しい経験を積んでいくようにはかるできである。しかし、高学年に進むに従い、注意の集中も可能になり、思考も分化し、やや精密な器械を扱う能力や、継続的に仕事をする能力や、読書の能力などが発達するから、それにつれて、討議や(話合い)や見学や、実験や、継続観察や、記録や、工作などの活動を多彩におりこむことができるようになる。その上、自主的な態度もしだいに伸びてくるから、それからの活動の指導も、できるだけこどもの自発性を伸ばすように行うことが望ましい。
 この段階は、教師にとって個々のこどもの能力に応じた指導をする最もよい機会である。考える能力や技術的な能力や、そのほかのいろいろな能力につれて、おくれているものについてはその原因を確かめ、それに対する指導に力を注ぐとともに、進んでいるこどもに対しても、研究を興味深く推し進めることのできるよう指導を忘れてはならない。
 なお、研究や作業がうまく進行するには、こどものつきあいたるいろいろな障 を取り除いて、学習の興味を持続させることに、教師は特に力を入れなければならない。また、実験や観察に必要であると思われる資料、材料、用具を準備しておくとか、掛図や図表を教室に掲げるとか、適当な参考書を用意するとか、質問に対していつでも答えられるように素材について研究しておくことなどは、こどもの研究の活動を、有効にしかも力強く進める上にきわめてたいせつなことである。
 教科書は、この段階では随時活用されるようにしなければならない。実験の方法に行きづまったとき、技術について不明な点があったときなど、教科書はよい手引きとなるであろう。しかし、教科書を教師がよんで、それで終るようなこがあってはならない。
(4) 整理の段階
 これまでに研究や作業を続けてきたことをまとめるのが、この段階の目的である。
 低学年では、遊んだり観察したりことを話しあったり、作品を展示したり、ときには絵や文にかいたり歌をうたったり、劇にしくんだりしてまとめることが多い。
 高学年は進むに従って、研究の結果を整理して報告書を作ったり、図や表にまとめたりすることができるようになる。研究によってわかったことをもとにして劇を創作したり、紙しばいに作ったり、絵巻物を作ったりするのもよく、また観察したことや見学したことを文章にまとめるのもおもしろい。
グループで行った研究は、まとまるのに従って、教室の壁に貼ったり、机に陳列したりしていくのもおもしろい。
 整理できたら、発表をする。発表の方法には、口頭でする場合もあり、図や絵を掲げて説明したり、展示や陳列をしたりする場合もある。いずれにしても、教師や級友や父兄に聞いてもらったり、見てもらったりして、批評を受けるような機会を作るべきである。
 ここで注意することは、とりあげた問題が、全部子供が満足する所まで解決するとは限らないことである。それで、充分納得するところまで、到達し得なかった問題は、それを明らかにして、将来の研究に待つようにすることが必要である。
(5)活用の段階
 研究の結果得られたことをもとにして、さらに実生活への応用、活用に心掛けるのがこの段階の目標である。
 この活用によって理解を更に確かにすることも出来、また、新しい問題をつかみ、学習の発展を助けることもできるし、また、活用応用によって、子供自身が学習の過程を反省し、学習の方法を改善する糸口が出来るのである。
 この段階で取り上げられる学習活動には、次のようなものがある。
(a) まとめた結論を実際に適用してみる。
(b) 練習問題に答え、理解が確実かどうかをためしてみる。
(c) どのような新しい問題があるかを考える。
  この段階では学習が一通り終わっているのであるから、教師は次のようなことがらについて観察や調査をまとめ、学習指導反省の資料にしなければならない。
(a) 活用によって、理解がどれだけ確実となり、能力や態度がどれだけ伸びたかを見る。
(b) これまでの観察記録をまとめ、指導法を反省する。
(c) 新しい問題の内どれが取り上げる価値のある物か、また、その指導をどうすればよいのか考える。

2,学習指導全課程を通じての指導上の留意点
 学習指導過程の五つの段階、すなわち導き、計画、研究、整理、活用のそれぞれの段階について、指導上の留意点を1で詳しく説明した。しかし、これらの段階の指導が成功するためには、子供が問題を解決出来るまで、興味をもちつずけなければならないし、また、解決のための活動が力強く進められるためには、子供のおかれた環境に目を留めて、それを学習に最も良い環境にするとともに、留意しなければならない。また、子供が、観察や、実験や、製作などを行っている間に、子供をよく観察し、これをも戸にして、指導法を評価し、最も子供に適した指導法を工夫し、指導に当たることもたいせつなことである。
 これらは、どの段階にも通じる指導上の留意点であるから、次に詳しく述べることにする。
(1) 学習興味の持続をはかること。
  学習の過程で、学習することに興味を失い、それ以上学習を続けるのが嫌になることがある。その原因を探ってみると、非常に難しいことに突き当たったとか、危険を感じたとか、資料や、道具が足りなくて、仕事が出来ないとか、あるいはまた、グループを作っているめいめいが争うとか、力の強いものに遠慮するなど、いろいろある。
 これらは、学習の進行をはばむ大きな障害であるから、教師は絶えず、子供の行動を注意深く観察し、この様な障害を取り除いてやるようように導き、学習の興味を最後まで、維持することが、大切である。
(2) 常に指導法の適正を図ること
  子供の学習がうまくいかない他の原因として、教師の指導が、適切でない場合をあげることができる。子供が必要を感じていないのに、無理に研究を強いたり、学習の計画が十分に立っていないうちに、次の仕事を導いたりすると、子供は進んで学習することなく、一つ一つ教師の指図に従うようになる。
 また、この逆に、子供が興味に乗って、また、この逆に、子供が興味に乗って、熱心に学習を発展させている場合には、教師が、それに釣り込まれてしまうと、重点が何処にあるのかわからないような、学習をしていたり、指導目標に何らかかわりのない学習活動へ、脱線している場合も、ありがちなことである。
 そこで、教師は、子供が果たして、指導目標にかなった活動をしているのであろうか、また、指導に無理がないだろうかなどについて、子供の行動を常に注意深く、観察し、指導法を評価し、指導法の改善にたえず努力しなければならない。
(3)個人差に応じた指導に心がけること
   子供の興味・能力・活動の傾向などには、個人的な差異があるから、指導にあたっては、個人個人の傾向をしっかりつかみ、個人差に応じた指導を行わなければならない。
   たとえば、グループの編成にあたって、統率力のあるこどもに、仕事のうまい子供に配するとか、仕事の早くできそうな個人またはグループに別な仕事を与えるようにするとか、個人個人の活動の形から考えてなるべく多様の学習内容を導くようにするなど、いろいろな工夫があるだろう。
   また、おくれている子供には、おくれている原因を確かめて、その子供に合った学習活動を選ぶ。また、進んでいる子供には、ほかの問題を与えて、いっそう理解を確実にすることが適当な場合もあるが、このような子供を足踏みさせて、興味を失わない
  ようにくふうすることがたいせつである。
(4)環境を学習に最も適するように整えること
   ある単元の学習を子供が行っているとき、教室や廊下に、その単元の学習に関係のある図表や写真などをはったり、学習の進行に従って、次々にできていく成績品を掲示・陳列をすると、学習の興味はますます高まり、力強い学習が行われる。
 このように、単元の学習を進めるには、環境をどのように整えたらいいかを絶えずくふうすることは、問題の発見や、学習の興味の喚起や持続、学習の進行にきわめて深い関係があるから教師は、教室ならびに教室外の環境整備に、不断の関心を払わなければならない。
(5)社会性を活用すること
   学級を作っている個々のこどもは、互いに影響し合って、学級の個性を形作っている。研究や作業も、このような学級社会の中の活動にほかならないのであるから、個人またはあるグループで、良い思いつきをした子供や、協力の態度のしっかりした子供や、実験技術の上手い子供をほめたり、激励してやったりすると、その賞賛や激励が、他の子供もたはグループにも、ひびいて研究意欲はますます盛んになり、研究意欲にもますます示唆をあたえゆこととなり、教室全体が明るく活動的になってくる。
また、ひとつの問題についても、学級全体の問題にしたり、グループの問題に移したり、個人の研究に移したりするとか、個人の研究でも学級全体の子どもに報告させ、質疑応答・批評を行わせるなど、学級の民主的組織の活動を推し進めるようにすると、共同・責任・寛容などの影響によって、科学的な能力や態度も、しだいにのびてくるのである。
 もし学級の子ども達の間で、成績の点数を争うようなことを奨励すると、学級の空気も級友の成功を喜ばず、級友を陥れるというような、暗いものとなるから注意しなければならない。
(6)家庭との連絡をはかること 
  学習したことが身に付いたかどうかは、学校生活ばかりではわからない。子どもの活動の場は、広く学校。家庭・地域社会全般にわたるのであるから、教師は、学習指導にあたって、努めて家庭と連絡をとり、子どもがどのような生活をしているのか、いま行っている学習指導の結果が、家庭生活にどのように現れているか調べ、指導法を工夫する場合の参考とするようにすべきである。 

W.理科の学習活動とその指導

理科の学習活動のおもなものをあげると、次のようなものがある。
 1.観察       8.訪問
 2.実験       9.読書
 3.制作及び操作   10.映画・幻燈・放送等の利用
 4.飼育及び栽培   11.話し合い
 5.材料集め     12.報告
 6.野外学習     13.遊び(低学年)
 7.見学       14.デモンストレ−ション
 これらの活動には、それぞれ異なった意義がある。したがって、その適応の方法も異なっている。これらについてよく理解し、学習活動を有効なものにすることが大切である。
 次ぎに、上にあげた学習活動のおのおのについて、その意義・適応・指導方法、その他の注意事項をあげてみる。
(1)観察
a.意義
 i.物事を観察することにより、興味関心も深くなる。
 ii.問題をつかむことができる。
 iii.問題を解決することができる。
 iv.観察することにより、事実をありのままに見る能力や態度が養われる。
 v.事実を尊重する態度が養われる。
 vi.実証的な態度が養われる。
 vii.自然の調和や恵を知ることができる。
b.適用
 i.主として問題解決の方法の一つとして、重要な位置を占めるものである。
 ii.導入の段階で、問題を見つけるために用いる。
c.方法
 観察は事実をありのままに見るのでなければいけない。問題解決に役に立つ程度に、詳しく見ることが大切である。
 i.観察する動機を与える。
 ii.どのような目的で観察するのかを、はっきりさせる。
 iii.何を観察するか。問題解決のためには、何を観察すればよいのかを、はっきりさせる。
 iv.何処で観察するのかを決める。
 v.どのゆな方法で観察するのかを決める。
   使う道具をきめる。
 vi.観察を実施する。
   助言を与える。
   観察に使う器具の正しい取り扱い方、使用法について指導する。
   記録・スケッチの指導をする。
 vii.結論を出す。
☆継続観察(観察のうち、特に長期間にわたる場合)
a.意義
 i.長期にわたる変化を、はっきりつかむことができる。
 ii.持久的態度が養われる。
 iii.記録の能力が高められる。
 iv.他人と協力する態度が養われる。
 v.生物愛護の態度が養われる。
b.適用
  長期間観察しなければ結果のでない場合に適用する。
 例えば、栽培・飼育・気象・天体の観察など
c.方法
 長期間継続するのに必要な計画を、しっかりとたてる。
 i.記録の仕方は、前の記録と関連を持ったものにし、変化したことを落とさないで書くようにする。

   A.運営のしかたをきめ、特に生物の栽培・飼育の場合は、休みの日の
   管理を怠らないようにす。
(2) 実 験
 a. 意 義
  @.自然の状態では、はっきり原因がわからない場合、特定の条件のも
   とで事実を観察し、原因をつきとめることができる。
  A.科学の原理を実験によって、はっきり理解することができる。
  B.科学を日常生活に応用する習慣ができる。
  C.狩の結論を実験で確かめることにより、実証的な態度を養うことが
   できる。
  D.計画をたて、それに従って行動する態度が養われる。
  E.注意深く正確に行動する態度を養われる。
  F.科学的操作をする能力を養う。
 b. 適 用
  @.問題解決の一つの方法として、自然の状態では、はっきりと事実を
   確かめられないときに、特定の状態のもとに観察する場合
  A.科学の原理の理解を助ける場合
 c. 方 法
  @.実験の目的を、はっきりつかむ。
  A.実験の計画を、しっかりたてる。
    どんな方法・順序で行うか、どんな準備が必要であるかについてき
   める。
    計画の中に危険なことはないか検討する。
  B.実験を実施する。
   (a)計画に従って実験する。
   (b)助言を与える。
   (c)正しく操作するように、機械・器具の取扱を指導する。
   (d)正しく観察し、その結果を記録する。
  C.実験結果について推論してまとめる。
 (備考)
  @.こどもが直接やれないほどむずかし実験は、教師が行って、こど
   もに問題をもたせたり、問題解決に役だたせたりすることができる。
  A.危険を伴う実験は教師もやってみせない方がよい。
  B.問題解決のための実験は、こども自身がやることに主要な意味があ
    る。教師がこどもに変わって実験を行ってみせることは、できるだけ
    避ける方がよい。
  C.設備・材料が少なくて、こども自身ができない場合には、他の実験
   を行うか、他の学習活動を選ぶべきであろう。
(3) 製作および操作
 a. 意 義
  @.機械や器具を製作(あるいは分解・組立)したり、操作したりする
   ことによって、その構造や機械を理解することができる。
  A.操作によって、科学が生活に役立つことを理解する。
  B.製作したり、操作したりする過程で、問題をつかむことができる。
  C.製作や操作の過程で、次の能力や態度が養われる。
   (a)企画する。        (f)工作する。
   (b)原理を応用する。     (g)計画に従って仕事をする。
   (c)設計図をかく。      (h)根気よく仕事をする。
      設計図を理解する。    (i)協力して仕事をする。
   (d)材料を集める。      (j)くふうする。
      材料を使う。       (k)科学を尊重する。
   (e)道具や機械を使う。    (l)科学を日常生活に応用する。
 b. 適 用
  @.機械や器具の構造や機能を理解する場合
  A.観察・実験・飼育・栽培の用具等を作る場合
  B.機械や器具の実験の使い方になれる場合
 c. 方 法
  @.製作や操作の目的を、はっきりつかむ。
    ii.計画をたてる。
    iii.設計図をつくる。(構造を調べる)
    iv.材料・工具を集める。
    v.材料の性質、工具の使い方を研究する。(操作の順序を研究する)
    vi.安全について注意する。
    vii.製作(あるいは分解・組立)や操作をする。
    viii.できばえや扱い方について批評する。
 (4)飼育および栽培 
   a.意 義
    i.栽培や飼育を行っている間に、いろいろな疑問をもち、解決の必要感に迫られた問題を構成することができる。
    ii.観察・実験・報告・製作などの多彩な活動と、自然に、有機的に結びついて営まれるので、生産技術を総合的に身につけることができる。
    iii.動物や植物の成長、適応などに関する問題を解決し、理解を身につけることができる。
    iv.生命の尊さを知り、生物を愛育する態度が身につく。
    v.自然の調和や恵みを感得する態度が身についてくる。
   b. 適 用
    i.生物の成長や適応に関する問題をつかむ必要のある場合
    ii.生物の成長・適応などに関する問題を解決する必要のある場合
    (例)
     iの場合
       うさぎが手にはいり、飼って世話しようと飼育を始めた。世話をしているうちに成長の問題をつかむことを予想した場合
     iiの場合
       あおむしをとって、それがどのように成長して、もんしろちょうになるかを調べる必要が起こった場合
   c. 方 法
    i.飼育する動物や栽培する植物をきめて、飼育や栽培の目的をはっきりつかむ。
    (例)
      (a) 成長を楽しむために、うさぎを飼う。
      (b) 成長の順序を調べるために、おたまじゃくしを飼う。
    ii. 計画をしっかり立てる。
     (a) 飼育する動物や栽培する植物の入手方法をきめる。
     (b) 飼育または栽培する場所や、器具について話し合ってきめる。
     (c) 世話の仕方について話し合う。
     @ 飼育については
         飼料の入手方法、給餌の方法、変わったことのあったときの処置観察の要点など
       A 栽培については
         種のまき方・植えかえの方法・肥料の施し方・その他の手入れの仕方・観察の要点・変わったことのあったときの処置など
     (d) 飼育日誌や栽培日誌の書き方について、話し合ってきめる。
     (e) 世話をする当番をきめたり、仕事を分担するためにグループに分けたりする。
    iii.飼育や栽培を行う
    (a)個人または、グループごとに世話をする。
    (b)飼育日誌や栽培日誌をつけ、その日の様子をみんなに報告する。
    (c)変わったことのあったとき、みんなでこれを考え、処理する。
    (d)時々みんなで観察したり、世話の仕方を反省したりする。
    iv.整理をする。
    (a)記録を整理し、問題解決に役だてたり、新しい問題はどれかをきめたりする。
    (b)飼育や栽培をしたことが、本当に問題解決に役だったか、また役だてるように努力したかなどを反省する。
  (5)材料集め
   a.意 義
  i. 問題解決のための資料・観察・実験・制作等の材料の必要なことが分かる。
  ii.計画をたてて仕事をする場合、必要な材料を調えておく能力が養われる。
  iii.問題解決のために、身近の材料を利用する態度が養われる。
b.適 用
   問題解決のための資料・観察・実験・制作等の材料を得る場合
c.方 法
  i.資料・材料を使う目的をはっきりする。
  ii.どこで集めるかを決める。
  家庭・学校内・近くの学校・図書館・野外市場等
  iii.どのようにして集めるかを決める。
   集めるときに使う道具
   買い出し・採取・借用等
  iv.材料・資料を集める。
  v・集めた資料・材料を整理・整とんする。
  vi.集めた資料・材料を目的のために使う。
  vii.使った材料の使用の後始末をする。
(6)野外学習
a.意 義
  i.野外のありのままの姿がわかる。
  ii.自然に親しむ態度が養われる。
  iii.自然の調和・美しさ・偉大さ・恩恵を知ることができる。
  iv.問題を見いだすことができる。
  v.もっている問題を解決することができる。
b.適 用
  導入の段階で問題をつかむときや、問題解決に用いる。
c.方 法
  教師は、事前に現場の予備調査、輸送の交渉、保護者との連絡をすます。
  i.目標をはっきりする。導入の場合であればもんだいをつかむようにする。
  ii.どこへいくかきめる。
  身じたくや、もっていくものをきめたり、整えたりする。
  iii.現場での行動について約束し(個人行動・団体行動等)、危険防止について考える。
  iv.目的地で学習する。
  v.整理する。
(7)見 学
a.意 義
  i.現場におけるありのままの姿がわかる。
  ii.問題をつかむ機会となる。
  iii.問題を解決することができる。
  iv.研究心が盛んになる。
  v.見聞をひろめることができる。
  vi.専門家に意見を聞く態度が養われる。
  vii.科学作品に興味をもつ。
  viii.科学者の仕事の尊さを知るよい機会となる。
b.適 用
  学校で経験することのできない生きた社会の事物(施設・設備)、現象に触れる場合に用いる。
c.方 法
  教師は、見学地の選定、見学地で利用できるもの、危険物・危険な場所・その他について予備調査をする。
  また、見学の交渉、輸送方法の交渉をしたり、保護者の承諾を得ておく。
  i.見学の必要を感じ、目的をしっかりつかむ。
  ii.見学の計画をしっかりたてる。
  見学してくるもの・用意するもの・道順・乗り物等
  iii.見学上の注意をはっきりする。
   現場での行動についての約束や危険防止・見学上の作法など。
   見学の現場で疑問を持ったら、質問させるようにする。
  1.見学をする。
  2.見学したことをまとめる。
(8)訪問
 a.意義
  1.問題解決の資料を得ることができる。
  2.科学的研究のおもしろさを感得する。
  3.専門家に集める能力が高められる。
  4.資料を集める能力が高められる。
  5.科学者の仕事の尊さを知ることができる。
 b.適用
  問題解決に際し、現場に働いている人の意見を聞く必要の起こった場合
 c.方法
  教師は、どのような専門家がいるかを調査し、訪問の日時、目的などについて打ち合わせをしておく。
  1.訪問の目的をはっきりつかむ。
  2.訪問先をきめる。
  3.訪問上の注意をする。(作法・質問のしかた・メモの取り方など)
  4.訪問する。
  5.聞いたことをまとめる。
 (9)読書
 a.意義
  1.科学の原理を理解することができる。
  2.科学的知識をうることができる。
  3.問題をつかむことができる。
  4.問題解決の方法や、観察、実験、製作などの手ががりをうることができる。
  5.読書する能力を養うことができる。
  6.科学に対する興味および研究心を高めることができる。
  7.科学の尊さを知ることができる。
 b.適用
  1.問題をつかむ場合
  2.問題解決の方法や、観察、実験、製作などの方法をきめるとき参考に使う。
  3.こどもが直接に観察、実験、製作などができないとき、本によって問題解決をする場合
  4.科学的知識を得たり、疑問の解決をしたりする場合
  5.仮の結論を修正する場合
 c.方法
  図書の充実をはかり、どんな本があるか予備調査しておく。経営のしかたをこどもの利用しやすいようにする。
  近くの図書館についても調査しておく。
  図書館の利用の方法を指導する。
  1.読書の目的をはっきりする。
  2.どんな本の、どの部分を読めばよいかを決める。
  3.どのように読んだらよいかを決める。
      ある本の説明がわからないときは、他の本を調べてみる。
  4.本を読む。
      要点を記録する。
      わからないところを質問する。
  5.問題解決に役だつように整理する。
 (10)幻燈・映画・放送等の利用
 a.意義
  1.多くの人の共通の問題を解決するのに効果がある。
  2.直接、視聴覚に訴えるために、こどもの注意を集中し、興味を深くする。
  3.問題をつかむことができる。
  4.科学的な説明をらくに理解することができる。

(a)自然現象の中の要点を拾いあげて注意するところだけ取り出したり、強調したりすることができる。
(b)自然現象の時間を伸ばしたり、縮めたりする。
(c)自然現象の起こる順序を変える。
V.直接こどもが経験することができないことを見たり聞いたりして、らくに視野を拡げることができる。
 b.適用
i)問題をつかむ場合。
 ii)見学や野外観察をする前に、そのいく場所はどんなところか、またどんな観察ができるかなどの予備指導をする場合。
 iii)問題解決の手段として使う。
 iv)整理のために使う。(単元のまとめ 観察・実験等のまとめ)
 v)発表の方法として使う。
 C.方法
 問題解決のために、どのような視聴覚教具を使ったら有効かを決める。
i)見たり聞いたりする目的をはっきりする。
 ii)見たり聞いたりする要点をはっきりつかむ。
 iii)見る、聞く。時には解説や補説をし、質問を受ける。
 iv)見たこと、聞いたことについて話し合う。
 v)問題解決に役立つようにまとめる。
(11)話し合い
 a.意義
i)学習に社会性をもたせる。(協力・責任・自主・寛容・リーダーシップ・親切)
 ii)問題をはっきりすることができる。
 iii)気がつかなかった点、自分の考えの間違っていた点について、よいヒントを得る。
 iv)独善でない結論を得ることができる。
 v)発表の仕方が上手になる。特に、根拠に基づいて話し合う態度が養われる。
 b.適用
i)問題をつかむ場合。
 ii)問題解決のしかたを決める場合。
 iii)観察・実験などをまとめて結論を出す場合。
 iv)報告・発表の内容を検討する。
 C.方法
i)話し合いの目的をつかむ。
 ii)話し合いの形式を決める。全体でやる。パネルでやる。グループに分かれてやる等
 iii)役割を決める。(議長、記録係その他)それぞれの役割の任務を決める。
 iv)話し合いを行うときの注意を聞く。問題の中心を外れないこと。短時間に要領よく話す。
人の話をよく聞く。全員が話すようにする。
 v)話し合いをする。
 vi)結論を出す。
(12)報告
a.意義 
i)研究や作業にまとまりをつけ、理解を確実にすることができる。
 ii)評価をするよい機会となる。
 iii)報告を聞くことによって啓発されたり、理解を深めたりする。
 iv)次のような能力を養うことができる。
(a)記録・図表を作る。
(b)事実から推論する。
(c)資料を使う。

b.適 用
 i. 研究作業にまとまりをつける場合
 ii. 個人やグループの研究を他のものに知らせる場合
c.方 法
 i.報告の必要と興味をもたせる。
 ii.報告のしかたを決める。
  (a)手段ー口・文・絵・作品・図表・スライド等
  (b)形式ー発表会・展覧会・掲示等
 iii.計画に基いて、報告の準備をする。
 iv.報告をする。
 v.報告事項について話合いをする。質問する。
 vi.批評する。(評価)
(13)遊 び
a. 意 義
 i.遊びの興味は深く、この興味を満足しようとする強い要求をもとにして、問題解決が自然に行われる。
 ii.製作・観察・読書などの活動が自然に取り入れられ、理解と能力とを総合的に身につけることができる。
 iii.科学的なものの考え方や、これまで学習したことがどのように役だつかを知ることができる。
b. 適 用
 i.主客未分化の低学年で、理解・能力・態度を総合的に身につける必要のある場合
 ii.その遊びが、いろいろな活動を含み、指導目標にかない、こどもが興味をもって希望するものであった場合
c. 方 法
 i.遊びの目標をしっかりつかむ。
 ii.遊びの計画をたてる。
  (a)遊び方をどのようにするのかの話合いをする。
  (b)遊びに必要な道具について話合いをして決める。
  (c)グループに分ける。
  (d)必要な道具を用意する。
iii.遊びを行う。
  (a)個人またはグループごとに、いろいろくふうして遊ぶ。
  (b)必要に応じて、個人またはグループごとに、あるいは全部を集めて遊びの方法について指導する。
  (c)よい遊び方を行っているものがあったら、他のグループまたは個人に知らせてやる。
(14)デモンストレーション
a. 意 義
 i.自分たちの意見や理解した事がらを多くの人に問い、意見を修正したり、理解を確実にしたりすることができる。
 ii.これまでのいろいろな経験をまとめ、体系化することができる。
 iii.研究の結果をお互に知らせ合うことから、総合的な理解が得られる。
 iv.進んだ科学の研究が、多くの人の協力によって行われることが理解できる。
 v.デモンストレーションによって、次のような能力や態度が養われる。
  (a)協力する態度     (f)企画する能力
  (b)批判的な態度     (g)総合的に判断する能力
  (c)計画的に行動する態度 (h)資料・木材を集め活用する能力
  (d)余暇を利用する態度  (i)整理整とんする能力
  (e)問題をつかむ態度   (j)記録・図形を作る能力 
b.適 用
 i.グループやクラス全体の研究をまとめ、これを発表する場合 
 ii. 広く研究のための資料を集め、これをクラス全体の問題解決に活用する場合
 iii. 学芸会・こども会その他の集合に、研究や実験などの展覧や公開をする場合
 iv. 研究の結論の正否をクラス全体のこどもに問い、その問題に関心をもたせるとともに、できるだけ多くのこどもに理解をもたせる。
c. 方 法 
 i. デモンストレーションの目的をはっきりとつかむ。
 ii. 計画をしっかりたてる。
  (a) デモンストレーションを行う期日
  (b) デモンストレーションの方法
     口頭の発表会・展覧会・劇・公開実験など
  (c) 仕事の順序および分担
  (d) 準 備
       必要な材料・必要な道具・それらの集め方・使い方等
 iii.計画に基づいて作業や練習をする。
 iv.デモンストレーションを行う。
  口頭で発表する。劇をする。実験をする。展覧会・展示会を開く。
 v.デモンストレーションの結果を反省する。
  (a) デモンストレーションを見たり聞いたりした人たちは、どのような意見をもっていたか。
  (b) いろいろな意見のうちどれをとりあげ、またどのようなことを今後の問題としたらよいか。
   

第6章 評価の方法

第7章 小学校における理科の材料と施設

付録

T 理科の目標

U 能力の目標

A.見る能力と考える能力
事実をありのままに見る能力
比較観察する能力
数量的に見る能力
問題をつかむ能力
企画する能力
原理を応用する能力
事実から推論する能力
筋道のとおった考え方をする能力
分析的に判断する能力
総合的に判断する能力
普遍化する能力
B. 技術的能力
飼育栽培する能力
整理整とんする能力
記録・図表を作る能力
資料・材料を集める能力
資料・材料を使う能力
工作する能力
機械・器具を使う能力
結果を予想する能力

V 態度の目標

環境に興味を持つ態度

自ら進んで究明する態度

注意深く正確に行動する態度

根気よく物事をやりとげる態度

余暇を利用する態度

健康安全に身を保つ態度(習慣)

自然の美・調和や恵みを感得する態度

生命を尊び生物を愛育する態度

W 単元の指導に必要な材料

第1・2学年
第2・3学年
第4・5学年
第5・6学年

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