震度調査

ここでは、岐阜大学教育学部理科教育(地学)の過去になされた卒論の中身を 少し紹介します。

Contents

震度とは?
震度が詳しく分かってない地震
震度分布調査

震度とは?


震度はある地点での地震動の強さの程度を、人間の感覚や周囲の物体・構造物、 さらには自然界への影響から、いくつかの段階に分けて表示したものです。日 本では気象庁震度階(1995改正)の0〜7階級(5と6は弱・強に分けられる)を もちいています。
今は地震が起こるとすぐに震度がニュースなどでで放送されます。それは、今 の気象庁が用いている震度が、地震計の種類の一つである加速度計の記録から 計算して出される「計測震度」だからです。地震が起こった際にすぐに震度が 分かると、被害の程度を知ることや、防災に役に立ちます。
しかし、この「計測震度が用いられるようになったのは1991年からです。それ 以前は地震後に気象台や測候所の職員が実際のゆれ具合を調査し、気象庁震度 階(下図)にしたがって判定したものです。
気象庁震度階(1949)
階級 説明 参考事項
0 無感。人体に感じないで地震計に記録 される程度。 吊り下げ物のわずかにゆれるのが目視 されたり、カタカタと音が聞こえても、体にゆれを感じなければ無感である。
1 微震。静止している人や、特に地震に 注意深い人だけに感ずる程度の地震。 静かにしている場合にゆれをわずかに 感じ、その時間も長くない。立っていては感じない場合が多い。
2 軽震。大ぜいの人が感じる程度のもの で、戸障子がわずかに動くのがわかる程度の地震。 吊り下げ物の動くのがわかり、立って いてもゆれを感じるが、動いている場合にはほとんど感じない。眠っていても目をさます ことがある。
3 弱震。家屋がゆれ、戸障子がガタガタ と鳴動し、電灯のような吊り下げ物は相当ゆれ、器内の水面の動くのがわかる程度の地震。 ちょっと驚くほどに感じ、眠っている 人も目をさますが、戸外に飛び出すまでもないし、恐怖感はない。戸外にいる人もかなり の人に感じるが、歩いている場合感じない人もいる。
4 中震。家屋の動揺が激しく、すわりの 悪い花びんなどは倒れ、器内の水はあふれ出る。また歩いている人にも感じられ、多くの 人は戸外に飛び出す程度の地震。 眠っている人は飛び起き、恐怖感を覚 える。電柱・立ち木などがゆれるのがわかる。一般の家屋の瓦がずれるのがあっても、まだ 被害らしいものは出ない。軽いめまいを覚える。
5 強震。壁に割れ目が入り、墓石・石灯籠 が倒れたり、煙突・石垣などが破損する程度の地震。 立っていることはかなり難しい。一般家 屋に軽微な被害が出はじめる。軟弱な地盤では割れたりくずれたりする。す わりの悪い家具は倒れる。
6 烈震。家屋の倒壊は30%以下で、山崩れ が起き、地割れを生じ、多くの人が立っていることができない程度の地震。 歩行は難しく、はわないと動けない。
7 激震。家屋の倒壊は30%以上に及び、山崩れ、 地割れ、断層などを生じる。  


震度の詳しく分かっていない地震


終戦(1945)の直前・直後の時期、疲弊した日本を続けざまに大地震が襲いました。 M8クラスの海溝沿いの地震である東南海地震(1944)や南 海地震(1946)。内陸直下型の地震としては鳥取地震(1943)や三河地震(1945)、福 井地震(1948)などです。当時は地震観測どころではない状態で、資料も少なく、どの ような震度分布を持つ地震だったのか分かっていないところもありました。過去の地震 の正確なデーターは、地震防災には不可欠な情報です。これらの空白を震度分布調査に よって少しずつ明らかにする試みがなされました。

震度分布調査


さまざまな震度分布調査の形式が考えられますが、ここでは地学科の過去の卒業論文であ る、春田(1993)・北川(1994)による1944年東南海地震の震度分布調査を参考に話を進 めます。震度分布調査は既存資料調査とアンケート調査からなります。

既存資料調査
地震発生当時、またはその後に書かれた資料から地震関係の資料を探します。県史・各市 町村史・学校史・気象台資料などが対象となります。既存資料の記述内容から各地の震度 が確定すれば最も正確でしょうが、戦時中やその後の混乱期のため紛失や、時間の経過に ともなって焼却などされ震度を確定するにいたる資料を集めることは難しいです。

アンケート調査
対象となる地震を体験した人にアンケートをとり、その記憶から震度を確定する方法です。 アンケートにも、体験した人と直接会いアンケートにそって被災情報を聞きながら記入す る面接法とアンケートを配布して各自記入してもらう質問用紙法があります。面接法はよ り詳しく当時のことを聞くことができますが、時間がかかり多くのデーターを取ることが 困難です。それに対し質問用紙法は一度にたくさんの人に答えてもらえますが、一つ一つ のデーターの信頼度は落ちます。お互いの長所を生かしつつ組み合わせていく必要があり ます。またこの調査は人の記憶に頼るところが大きいため、印象の強いものは良く覚えら れ、時間がたつにしたがって過大評価される、印象の薄い物は忘れられ、過小評価される、 といったことも考えられます。

このようにして復元された過去の地震の震度分布の一つを示します。

1994年東南海地震震度分布(北川1994に加筆)


参考文献
春田桜子(1993),1994年東南海地震による岐阜県南部の震度分布について,岐阜大学教育学 部地学研究室卒業論文1993.MS
北川ちづる(1994), 1994年東南海地震による震度分布について,岐阜大学教育学 部地学研究室卒業論文1994.MS
川崎一朗・島村英紀・朝田敏(1993),サイレントアースクェイク,東京大学出版会
安藤雅孝・早川由紀夫・平林和朗(1996),地震と火山,東海大学出版会