生物の多様性とは

地球上の生物はさまざまな環境に生息している。地域を決め,そこにいる生物を調べよう。どんな調べ方をしたらいいだろうか。

種を単位に生物の分布を調べる

まず,特定の生物の,個体数や分布を調べることができる。 〝特定の生物〟 という意味は, 〝生物の種〟 である。種は,交配によって子孫を作ることができる集団である。ある地域に生息するさまざまな生物種の分布を調べ,個体数を数える。

生物種の多さを尺度として生物の多様性を調べる


同じく2種からなる群生だが,Ⅱのほうが多様性が高い。
生物の多様性は,ある地域に生物種が多くいるほど高い。たとえば10種類の魚がいる川と,100種類の魚がいる川では,100種類の魚がいる川の方が生物多様性が高い。
しかし,多様性は生物種の数だけでは決まらない。たとえば,図のような,生物種の数が同じ2つの地域を比較しよう。個体数は同じだが,Ⅰは99%が生物種Aでり,1%が生物種Bである。Ⅱは,AもBも50%ずつである。Ⅱの方が生物の多様性が高い。
さらに,生物種の多さだけではなく,それらの生物種の間の関わり合いを考えることもできる。多くの生物種がいても,それらが無関係に生きている生態系と,それぞれの生物種がほかの多くの生物種の生存に依存している生態系とでは,生態系としての成り立ちが大きく異なる。
すなわち,生物の多様性を調べるには,生物種だけでなく,それぞれの個体数や生活を調べ,さまざまな生物どうしの関わり合いや棲み分けのしくみを理解しなければならない。

生物種の多様性と安定性

地球上で最も生物の多様性の高い地域は,熱帯雨林である。
なぜ熱帯雨林の生物多様性は高いのか。この疑問には,2つの対立する仮説がある。
  • 赤道地域は1年を通じて気温や降水量の変動が小さく,氷期と間氷期のような大きな気候変動が起こっても,気温の揺らぎが小さかった。この安定な気候状態で生物は繁栄し,多様性が高くなった。
  • 実際に,歴史時代に大きな環境変化が起こった地域では,生物多様性が高く,安定していた地域では低い。生物の多様性には,適度な擾乱が必要である。
では,環境が大きく変動する極地や砂漠の生態系は安定なのか。それとも不安定なのか。また,河川や海洋の生態系は,どうだろう。

生態系の過去・現在・未来

現在,さまざまな環境に多様な生物種が適応し,生態系を作る。それらの生態系の現在の姿は,これまでの長い歴史の中で生み出されたものである。将来,地球上の生物の多様性や生態系がどう移り変わっていくかを考えるには,現在の生態系を時間の流れの中で理解する必要がある。
ここでは,生物の多様性や生態系について, 「理科総合B」 の学習を通じて考えていくべき課題を述べた。問題意識を持って学習を進めよう。

© 2002 Gifu University, Shin‐Ichi Kawakami, Nao Egawa.