大陸地殻の歴史

現在の地球では,大陸の面積は表面の30%である。大陸と海洋の比率は昔も今も変わらなかったのか。それとも,大陸は時代とともに次第に成長してきたのか。

図1. 大陸地殻の堆積の時間的変遷。
(Reymer and Schubert, 1984, Tectonics, 3, 63–77. © 1984 the American Geophysical Union)
図1.はx,さまざまな研究者が求めた大陸地殻の堆積の時間的変遷を示したものです。研究者ごとに,大陸成長の歴史が大きく異なる。
この図で,FやAで示された曲線は,地球が誕生してまもないころに現在の大きさまで成長した (A),あるいは,初期のころの方が大陸の体積は大きかった (F) ことを示す。これは,カナダのファイフやアームストロングの説だ。
大陸地殻は,風化や雨水によって侵食された。その一部は海洋底まで運ばれ,プレートの沈み込みにともなってマントルへ循環した。曲線Fでは,地球が若いときほど,内部が高温でプレート運動も活発だったため,過去には大陸が新たに生み出されるよりも削られるほうが多く,大陸は小さくなってゆく。また,曲線Aでは,新たに生まれる大陸地殻とほぼ同じ量の地殻物質が侵食によって失われている。
一方,この図でH&Rで示された曲線は,アメリカのハーレイとランドが提示された大陸成長曲線である。彼らは,大陸地殻を構成する岩体の年代測定データと露出面積をもとに,大陸地殻の年齢分布を求めた。それを成長曲線で表示したものが曲線H&Rである。この推定方法では,現在地球表面に分布している地殻は,そのまま大陸の成長の記録を表しているという仮定に基づいている。つまり,侵食で大陸地殻が失われることを無視している。
実際の大陸地殻の成長曲線は,上述の両極端な考えの中間だったはずだ。ほかの説では,時間とともに大陸が成長を続けてきた。注目したいのは,大陸が特定の時代に急成長している点である。M&Tによると30億–25億年前,N&DやP&Aによると30億–25億年前に,大陸が急成長した。

図2. ジルコン粒子のウラン‐鉛年代測定法で得られた年代値の頻度分布。
(川上紳一. 縞々学 リズムから地球史に迫る. 東京, 東京大学出版会, 1995. p.213)
最近になって,変成作用や風化作用に強い鉱物であるジルコンの粒子に対し,ウラン‐鉛法を用いて,岩石の年齢を精密に測定できるようになった。この手法で得られる年代の頻度分布図を描いた (図2.) x。
これを見ると,約27億年前・19億年前・7–5億年前の3箇所に鋭いピークがある。この3つは,大陸が急激に成長した時代だろう。7–5億年前のピークは,汎アフリカ造山運動 (アフリカの周辺部で大陸衝突が起こり,ゴンドワナ大陸が形成されるときに起こった) に対応している。
大陸が急速に成長した,27億年前・19億年前・7–5億年前に,地球環境や生物進化に起こった事件を調べよう。
参考文献
Reymer and Schubert, 1984, Tectonics, 3, 63–77.
川上紳一. 縞々学 リズムから地球史に迫る. 東京, 東京大学出版会, 1995.

© 2002 Gifu University, Shin‐Ichi Kawakami, Nao Egawa.