プレート・テクトニクス

ウェーゲナー[解説]は,大西洋を隔てた南北アメリカ大陸とアフリカ大陸の海岸線が似ていることから, 〝大陸移動説〟 を着想した。彼は,氷河堆積物や化石が,大洋を隔てた南アメリカ,アフリカ,インド,オーストラリアなどに分布することを示し,かつて大陸が陸続きだったことを立証しようとした。ウェーゲナーは,一連の考察を 『大陸と海洋の起源』 に著し,大陸が不動だとする常識に挑戦した。しかし,当時のほとんどの地質学者は大陸移動説に反対した。

レイキャネス海嶺周辺 (アイスランド沖) の海底磁場の縞模様。
(川上紳一. 縞々学 リズムから地球史に迫る. 東京, 東京大学出版会, 1995. p.216)

海洋低拡大が海底磁場の縞模様を作る。
(川上紳一. 縞々学 リズムから地球史に迫る. 東京, 東京大学出版会, 1995. p.216)
1960年代には,海洋底の研究が進んだ。まず,巨大な海底山脈である中央海嶺が発見された。その後,海洋の磁気探査がなされ,海嶺の軸に平行な縞状の地磁気異常が発見された。この縞模様は,地球磁場の反転と同じパターンを示していた。また,海底堆積物の年代を測ると,海底は海嶺軸から離れるほど古くなっていた。これらの事実から, “海嶺で新しい地殻が生まれ,それが両側に拡大していく” とする海洋拡大説が生まれた。
海洋底拡大説と大陸移動説は体系化されて, 〝プレート・テクトニクス〟 という考えかたが生まれた。プレート・テクトニクスによれば,地球の表面は十数枚のプレート (硬い岩盤) に分かれていて,その相対運動が大地形を作る。大洋の中央海嶺は,プレートの生まれる場所だった。
カナダのウィルソンは,中央海嶺を横切る断層で,隣り合うプレートが擦れ違っていることに気づき,この断層を 〝トランスフォーム断層〟 と名づけた。トランスフォーム断層で起こる地震は,プレート内の横ずれ断層で起こる地震と,圧縮・伸張の向きが逆であることが示された。これは,ウィルソンの説でないと説明できない。
また,プレートがマントルへ潜り込む地域には,アンデス山脈のような巨大な造山山脈や,その海側を平行に走る海溝がある。西太平洋地域では,海溝の陸側は,アリューシャン列島,千島列島,伊豆‐小笠原弧のような弧状列島が分布する。こうして,日本列島の変動をプレートの沈みと関係して議論できるようになった。

© 2002 Gifu University, Shin‐Ichi Kawakami, Nao Egawa.