システムとしての地球

システムとは

多くの構成要素が関係をもって全体を構成しているものを, 〝システム〟 と言う。システムの構成要素を, 〝サブシステム〟 と言う。
たとえば,人間は,多くの器官が集まってできている。つまり,人間というシステムは,それを構成するサブシステムである脳・肺・胃・腸・手足などからできている。
これらの器官は,お互いに深く関係をもって人間の命を維持している。人間の命を維持するには,食べ,呼吸することが必要である。食べ物は口から入り,胃や腸で消化され,栄養分は血液により各器官へ運ばれる。肺は,空気中の酸素を血液に取り込み,血液が運んで来た二酸化炭素を排出する。肝臓や腎臓は,老廃物を処理し体外へ排出する。このように,システムを維持するには,物質やエネルギーのやりとりが必要である。また,生体を正常に機能させるために,感覚器官や神経系が巡らされており,情報もやりとりされる。

システムとしての地球

地球も大きなシステムである。地球を構成するサブシステムは,大気・海洋・地殻・マントル・核などである。
サブシステムのうち,固体でできた核・マントル・地殻をまとめて 〝地圏〟 という。
液体の水の部分を 〝水圏〟 と言う。水圏には海洋,河川水,地下水が含まれる。
水が凍る氷床や万年雪は 〝雪氷圏〟 という。
さらに,大気圏,磁気圏が,これらを取りまいている。
地球を構成するこれらのサブシステムの間にも,物質やエネルギーのやりとりがある。個々のサブシステムの中で変動が起こると,その変動が周辺のサブシステムへと波及する。地球環境は,サブシステムの相互作用によって,動的に維持されている。

気候システム

地球表面の気候を支配する要因を総称して, 〝気候システム〟 と呼ぶ。気候システムの要素には,生物圏 (主に地表の植生)・雪氷圏・雲量・大気組成・エアロゾル・大陸と海洋の分布・海洋循環などがある。
時間が経てば,気候状態も変化する。しかし,気候システムの要素は複雑に関わるので,気候変動のメカニズムも複雑である。
地球が寒冷化すると,冬季に積もった雪氷の一部は万年雪となって,雪氷圏は拡大する。これは太陽光の反射率を大きくするので,さらに地球は寒冷化する。
このように,気候状態の変化が気候システムを変化させ,原因となった変化を増幅するしくみを 〝正のフィードバック〟 という。
一方,気候が温暖になると大気中の水蒸気量が増え,雲量が増して日射を妨げる。このように,当初の変化を抑制させるように作用すのは 〝負のフィードバック〟 である。

生物圏

地圏のごく表層には土壌がある。植物は土壌に根を生やして森林や草原を作る。森林や草原などの生態系にはさまざまな動植物が生息している。地圏の表層部・水圏・大気圏は生物で満ちあふれており,生物圏ともいう。
地球の生物圏は,さまざまな生態系からなる。生態系は,その地域の生物群集と,それを支える水・空気・栄養分などからなる。生物群集は,さまざまな生物種からなり,生物種は個体が集まってできている。
このように生態系の要素には階層性がある。

生物の多様性,生態系,そして地球生態系へ

まず,身近な環境に生息する生物種に注目しよう。続いて個体群の分布を調べよう。さまざまな個体群が集まって生物群集になり,気候風土の違いから地域ごとに特徴ある生態系が成立していることを調べよう。
地球上にはさまざまな生態系があり,それらがまとまって地球生態系を作る。地球生態系の生物は,生物圏をも構成している。

© 2002 Gifu University, Shin‐Ichi Kawakami, Nao Egawa.