岐阜大学教育学部理科教育講座(地学)
理科教材データベース
岐阜大学キャンパスビオトープ実験
「チョウの楽園」
2004年9月30日

 日本にはたくさんのチョウが棲息している。チョウの幼虫が食べる植物は種類によって違っている。モンシロチョウはキャベツ、アゲハはミカンやサンショウ。そんなことはどこかで見聞きしてたいていの人は知っている。しかし、実際にそれらを植えて花壇をつくりチョウがやってくるか調べたという話を聴いてハッとした。2004年3月JT生命誌研究館を訪れたとき、ビルの4階に小さい花壇をつくってチョウの観察を行ったのだという。これはたいへん面白い!

 チョウは小学3年生で学習する。植物の栽培も小学3年や4年生でヘチマやアサガオの栽培がある。せっかく昆虫と植物を学習するなら、チョウの食草を育てればいいのに。しかし、学習指導要領にそんなことは書かれていないので、そうした教育実践はほとんどない。だったら小学校に食草をもちこんで、よい教材であることを子どもたちといっしょに観察して実証しようではないか。これはきっとうまくいきそうな予感がする。どのような植物を植えたらよいか、チョウに詳しい駒宮さんに相談しながら「チョウの楽園」を構想していった。

 5月の連休が過ぎたころ、大学の敷地内にある畑にチョウの食草と花を植え、やってくるチョウを観察し始めた。モンシロチョウ、キチョウ、アゲハ・・・大学内で見かけたチョウの種類は少しずつ増え、いまでは20種類を越えた。大学周辺では50種類以上見つかった。次は、たまごや幼虫を見つけて、成長のようすを観察することだ。

 ツマグロヒョウモンの食草はスミレやパンジーである。パンジーなら大学の玄関わきに職員の育てているプランターがいくつも並んでいる。通りがかるたびに見ていたが、なかなか幼虫はみつからない。ある日葉についている幼虫を偶然発見!一匹見つけたら瞬く間に20匹ぐらい見つかった。やはり一度見ないと、たくさんいても見つからない(見えない)ものなのだ。自分の目で見つけることが大切なことを改めて実感する。次はカタバミにいるはずのヤマトシジミの幼虫を探す。これもなかなか見つからなかったが、葉のうらにいる小さいアオムシを発見した。この幼虫の成長はじっくり観察させてもらったが、無事チョウになって舞っていった。

 「チョウの楽園」に6月に植えたウマノスズクサがようやく葉を広げてきた。いま研究室には、たまごから孵ったばかりのジャコウアゲハの幼虫が10匹いる。来年はジャコウアゲハが飛び交うキャンパスになればと願いつつ、毎日成長を見守っている。
(NPO法人「地球の未来」ニュースレター第4号より)