岐阜大学教育学部理科教育講座(地学)
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千年持続学:フランツ・アルト氏講演会
エコロジーだけが経済を救う
2004年11月07日

 2004年11月6日午後1時30分から4時30分まで、岐阜県水産会館において、NPO法人「地球の未来」主催の標記講演会(*)が開催された。会場は100名を越す参加者でほぼ満席であった。アルト氏はドイツの著名な環境ジャーナリストであり、北京で開催された「世界風力発電会議」のあと、日本に立ち寄り岐阜での講演が実現した(**)。

 講演はまず世界各地で頻発する異常気象による災害についてのコメントから始まった。それが地球温暖化の影響が出始めているためであり、温暖化が経済的な問題になりつつあることを指摘した。続いて、この温暖化の原因が化石燃料の消費によるものであることを述べた。さらに、最大の二酸化炭素発生源である石油については、今後枯渇へ向かっていくものと考えられ、経済的魅力に乏しいことを欧州共同体(EU)のエネルギー供給予測や、シェル石油と大英石油(BP)の行った将来予測について引用しながら説明した。そして、2050年にはエネルギー供給が化石燃料から太陽光発電、風力発電などの自然エネルギーへと大きく転換されるというヴィジョンを示した。

 講演の後半はそうしたヴィジョンへ向けて先進的な取り組みが紹介された。太陽光パネルで装飾された美しい教会、太陽の動きに合わせて回転する奇抜な発想の住宅など、自然エネルギーを利用した先進的な建築物や町ぐるみの取り組みに関する興味深い事例がいくつも提示された。

 もっとも重要なことは、ドイツではエネルギー供給が市場化されており、個人や事業者が太陽光発電や風力発電で生みだした余剰電力の買い取り制度ができていることである。こうした制度が実現したことで、ドイツでは太陽光発電や風力発電が市場原理の下で急速に普及しつつあるようだ。

 パネルディスカッションでは、どうしてこうした制度を導入することができたのかという質問があった。日本でそうした制度が導入されないのは国のエネルギー政策など、いくつも理由が考えられそうだ。

 いずれにしても、長期的にはコストが高くつく原子力エネルギーや原料が高くなっていく火力発電による電力料金は高くなる一方である。「最低でも10年ぐらいの長期的な視点に立って、アクションを起こすことが大切です。」パネルディスカッションのコーディネータを務めた駒宮博男さんは、そう述べてこの講演会を締めくくった。

(*)講演タイトルと同じ題目の著書が洋泉社から出版されている。

(**)講演はドイツ語で行われ、村上敦氏が同時通訳を行った。


関連サイト=環境にやさしいエネルギー