岐阜大学教育学部理科教育講座(地学)
理科教材データベース
読書週間:小学校での読み聞かせ
-理論社の絵本「宇宙・地球・生命の始まり」-
2004年11月10日

 読書週間に報道発表された調査によると、月に一冊も本を読まない人が増えているという。小学校では、子どもたちにもっと図書に親しんでもらえるようにと、読み聞かせの時間をとっているところも多い。先日、読書週間中に読み聞かせを実施する予定の先生から、標記絵本でやってみたいが、制作者からのコメントが欲しいという問い合わせがあった。

 この絵本には企画段階からたびたび相談を受け、執筆者の榎田政隆さんとも何度も顔をつきあわせて話をしたが、読者からは「絵はとてもきれいなのに・・・文章が難しいので・・・子どもたちにはちょっとむずかしいみたいですよ」という感想をよく伺った。考えてみると、絵は小学生向きなのに、内容は高校生レベルなのだから、そういうリアクションでも仕方がない。

 ところが、この本は絵がきれいなので、子どもたちに見せると結構興味を惹く子が多いという。読み聞かせをする先生も、自分の言葉で語ってあげたら、きっと楽しい時間になるのではないかと思ったに違いない。

 そこで、まず子どもたちが夢中になりそうな恐竜の絶滅の話から始めて、それから天体衝突が頻繁に起こった地球の誕生の話にもっていったらどうかと助言した。その結果がどうだったのか、いまメールでお返事を頂いた。


 教えていただいた様に、恐竜の絶滅説の話の後、生まれて間もない頃の地球上に隕石がたくさん落ちていたという話の進め方にはとてもインパクトがありました。たった一つで恐竜が絶滅してしまうほどの力を持つ隕石がいくつもいくつも落ちていたら、いったい地球はどうなってしまっていたんだろうと、子供たちはかたずを飲んで、めくられる絵本の絵を見つめていました。そして、そんなマグマの海の地球にどうやって生き物が生まれてくることができたのだろうという思いも、深くもつことができたようです。

 途中、驚いたのは、恐竜絶滅が隕石が原因だと知っていた子が8〜9割いたことです。「テレビでそんなふうなのやっていたよ。」とのことで、子供たちも「ゾロリ」を見ているだけではないようです。

 ストロマトライトの話では、オーストラリアで、その上を、大事なものとは知らずにピョンピョン跳んでいて怒られたなんていう経験をした子も居て話は盛り上がりました。

 先生方も、「ぼく達が子供の頃は、恐竜絶滅は気候が寒くなったのが原因っていう話でしたよ。」とか「一巻から読んでみたいです。」と話してくれました。

 短い時間ではありましたが、小さな学校のみんなが一緒になって、悠久の話に心を寄せる豊かな時間が持てたと思います。ありがとうございました。


 メールを読むと、話の展開については、うまくいったことがよくわかる。驚いたのは、恐竜が絶滅したわけを多くの子どもたちがどこかで聞いて知っているということだ。さらに、オーストラリアへストロマトライトを見に行った子どもまでいるとは! いずれにしても、一つの絵本で、話題が広がって、有意義なひとときになった様子がよく伝わってうれしくなった。


関連サイト=理論社絵本のサイト