岐阜大学教育学部理科教育講座(地学)
理科教材データベース
小学校理科授業「流れる水の働き」における教材開発と授業実践
−2004年11月12日岐阜大学附属小学校での実践―
2004年11月19日

 11月12日に岐阜大学附属小学校で中間研究発表会が開催され、県内外から多くの見学者が訪れた。今回の理科部会での発表の目玉は大門佳孝教諭が取り組んだ流れる水の働きを実験的に調べる授業実践であった。

 流れる水の学習内容の一つに、カーブした河川で堆積物がたまるところはどこかを理解することがある。カーブした河川では外側ほど流れが速く、カーブの内側に堆積物がたまることが教科書に書かれている。そうした性質を実際にカーブした河川モデルをつくり、上流側に置いた砂が流水でどのように運ばれるかを観察する。比較のため、直線的な河川モデルもつくって、河川の屈曲の影響を理解させようというねらいで実験装置が組み立てられた。

 授業ではたくさんの装置を屋上に準備し、グループごとに実験に取り組んだ。私の見学したグループでは、水の流れによって砂は運ばれていき、カーブを曲がったあとで砂が堆積した。これは実験前に子どもたち提示したどの予想とも食い違っていた。子どもたちは何回も実験を繰り返したが、なんどやっても似た場所に砂が堆積した。実験後の交流会では、ほかのグループの子どもたちも同様の結果を発表した。大門教諭は、次の授業では実際に長良川の上流まで子どもたちを連れて行って、河川の堆積物がどのような場所に堆積しているかを調べるという。

 今回見られた実験結果は、河川の屈曲モデルを人為的につくったため、流れのパターンが不自然で砂の堆積は水が流れるパターンに調和するように河川形態を変えようという働きによるものである。実際の河川でも流路は時間的に変化していくことが自然である。実験ではさまざまな現象がみられるため、観察力のある子どもはいろいろなことを発見する可能性がある。そうした発見を子どもたちが成し遂げたとき、それが実際の河川ではどのように作用しているのか、教師が適切に説明してあげることで、子どもたちの学習意欲や観察力はどんどん高まっていくのではなかろうか。

 今回導入した流水実験装置は、そうしたダイナミックな授業実践を可能にするツールとしてのポテンシャルを秘めているといえそうだ。そのためには、まず河川の形状、傾斜、砂の粒度などを変化させて、より洗練された実験装置を見つける研究が必要である。そのうえで、多くの学校で同様の授業が取り入れられるよう、簡単で安価な装置づくりを工夫していくことが望まれる。