岐阜大学教育学部理科教育講座(地学)
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アルゼンチンと中国における翼竜の卵化石の発見
2004年12月06日


 恐竜は中生代に繁栄した大型動物であるが、この時代には空を飛ぶ爬虫類である翼竜や、海中で生活する爬虫類である魚竜も大型化しており、その繁栄ぶりは恐竜類に見劣りしない。英国の科学雑誌「ネイチャー」の2004年12月2日に翼竜の卵化石に関する短い論文が2つ掲載された。これまでに翼竜の卵はほとんど発見されておらず、翼竜がどのような生き物だったのかを探る新たな情報が得られた。

 ロスアンゼルス科学博物館のL.M. Chiappeらは、アルゼンチン中央部に露出する1億2100万年前の白亜紀前期の地層から産出された翼竜類の一種プテロダウストロの卵化石を報告している[1]。この卵には孵化直前の個体が含まれており、骨格の特徴からこの地域に特徴的に産出する翼竜プテロダウストロのものであることがわかった。電子顕微鏡で卵の殻を構成する鉱物を分析したところ、厚さ30ミクロンの単層のカルサイトからできており、恐竜やカメ類と類似した特長を備えているが、ヤモリなどのトカゲの仲間とは異なるものであることが明らかにされた。

 一方、南京大学のQiang Jiらは、1億2100万年前の儀県層から発見された翼竜の卵化石を記載している[2]。卵に含まれる翼竜の骨格の計測から、この卵がベイピアオプテルス(Beipiaopterus)という種のものであると解釈された。こちらの卵は硬い殻ではなく革のようなものであり、現生爬虫類のものとよく似ているという。

 2種類の卵化石は、同じ時期の翼竜のものであるが、種によって卵の殻のつくりに大きな違いがみられることは、翼竜にも多様な種が生息していたことが示唆される。

[1] Chiappe, L. M., L. Codorniu, G. Grellet-Tinner, and D. Rivarola (2004) Argentinian unhatched pterosaur fossil. Nature, 432, 571-572.
[2] Qiang Ji, S.-A. Ji, Y.-N. Cheng, H-L. You, J.-C. Lu, Y.-Q. Liu, and C.-X. Yuan (2004) Pterosaur egg with a leathery shell. Nature, 432, 572.