岐阜大学教育学部理科教育講座(地学)
理科教材データベース
IT教育支援協議会第3回フォーラム
- 高等教育におけるeラーニングの新展開 -
2004年12月07日


 平成16年12月7日メディア教育開発センターにおいて標記フォーラムが開催された。その様子がSCS配信され、岐阜大学でも視聴することができた。このフォーラムの基調講演・報告では、清水康隆理事長が「効果的な遠隔教育/e-learning実施の視点」と題する報告を行った。

 現在高等教育におけるe-learningの展開について、ガイドラインの作成作業が行われている。ガイドラインの検討にあたって、先進国であるアメリカの状況が報告された。遠隔教育プログラムは学生数の確保のために導入されるケースが多いが、日本では大学設置基準、通信教育設置基準が定められており、e-learningについても教育の質的確保のためのガイドラインの設定が必要ということであった。

 e-learningの組織的実施では、学習者に対する設問応答、添削指導、質疑応答など、学生の意見交換の場を確保することが不可欠であり、一方的な知識伝達では放送と区別がつかなくなる。遠隔授業とe-learningの違いもICTを活用した双方向性の確保をどのように実現するか、システム的な検討が必要である。

 実際にe-learningによる学習機会の提供では、その位置づけの明確化と必須な機能を備えていることが要求される。すなわち必須の機能とは、(1)授業に関する情報提示機能、(2)チュータリング機能、(3)コミュニケーション機能、(4)メンタリング機能、(5)学習評価機能である。

 アメリカにおけるE-learning教材の開発の体制では、授業開発における分析、設計、開発、実施、評価を担当するインストラクショナルデザイナーというスタッフが確保されているが、日本ではそうしたスタッフの拡充については模索段階である。また、学習者や教員に対する支援体制、さらにはe-learningの運用における責任体制についても今後の課題として残されている。そのためe-learning担当教員が先に述べた必須とされる機能を備えた授業を構想していくことが求められる。

 当面の課題としては、e-learningシステムを立ち上げるための教材開発がある。教材は授業をビデオ化してVODとして学習者に提供することなどが考えられるが、図や写真などの二次使用では著作権の許諾手続きが不可欠であり、授業やカリキュラム開発者はまず著作権に関する深い理解が要求される。

 なお、今後の方向性として、開発した教材を教育情報ナショナルセンターとメディア教育開発センターが協力してデータベース化していくようであるが、その利用にあたっては、学習者との双方向性を確保するなど、e-learning教材による学校間連携が促進されていくことになるという。

 こうした動向に対する個人的な関わり方としては、学習者のインセンティブを高める質の高い授業の提供であり、「理科教材データベース」の開発をさらに推進すると同時に、それを活用した現職教員向けのe-learning教材の開発ではなかろうかと、清水先生の報告を伺いながら考えた。