岐阜大学教育学部理科教育講座(地学)
理科教材データベース
国際数学・理科教育動向調査の2003年調査(TIMSS2003)の結果
2004年12月16日


 2004年12月14日、国際教育到達度評価学会(IEA)が行っている標記調査結果が公開され、速報として文部科学省のホームページに掲載された[1]。小学4年生と中学2年生が調査対象で、理科の学習内容の理解度、理科が楽しいかといった学習態度、積極性などが調査された。この調査は1995年、1999年にも行われており、理科の学習到達度や態度の経年変化に関するデータとして注目されている。

 到達度については、特に小学4年生の点数が10ポイントも低下し、国別得点でみた順位が下がったことが報道発表され、これまでの「ゆとり教育」路線に対する批判が多くでた。

 しかし、この調査結果をよくみると、理科の勉強が楽しいか、理科の勉強に積極的か、理科の勉強に自信があるかといった態度をみる質問に対しては世界の最下位になっていることはもっと深刻な状況である。さらに、こうした質問にポジティブに答えた子どもの割合が増える一方で、ネガティブに答える子どもの割合が増え、理科が得意で積極的な集団と、まったくの理科嫌いの二極化へ向かう傾向が認められたことは、問題がさらに複雑化しているようにみえる。

 理科離れ、理科嫌いが深刻であるという認識のもとにそうした状況を改善するため、大学や研究機関のアウトリーチ活動、サイエンスパートナーシップ、スーパーサイエンスハイスクールなど、理科教育に熱心な学校や先生、学習意欲の高い子どもたちを支援する多様な取り組みがある。こうした努力によって積極的な子どもが増える一方で、取り残されてしまっている子どもたちがいることを示唆している。

 とりわけ、現行のシステムのなかで、取り残されてしまっているようにみえる子どもたちにはどのように手を差しのべたらよいのか。出前授業などで小中学校の正規の授業に関わって、理科を嫌いになってしまっているこどもたちの心を開くことはできるのか。いろいろとやってみたいが、そのためにはまず多くの学校の先生と出会うなかで、小中学校との連携の道筋をつくる必要だ。

 いずれにしても、この調査を実施した国立教育政策研究所や、大学の理科教育の専門家によって、今回の調査結果が分析され、今後の対策が検討されていくことになるだろうから、今後の動向には目を向けていく必要がある。

[1]http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/16/12/04121301.htm