2005年3月に宇宙航空研究開発機構を定年退官された水谷仁先生が最終講義のときに使われた文章です.
生徒諸君に寄せる
断章一
この四ヶ年間が
わたくしにどんなに楽しかったか
わたくしは毎日を
鳥のように教室でうたってくらした
誓って言うが
わたくしはこの仕事で
疲れをおぼえたことはない
断章三
新しい風のように爽やかな星雲のように
透明に愉快な明日は来る
諸君よ紺いろした北上山地のある稜は
速やかにその形を変じよう
野原の草は俄にその丈を倍加しよう
あらたな樹木や花の群れが、
断章四
諸君よ、紺いろの地平線が膨らみ高まるときに
諸君はそのなかに没することを欲するか
実に諸君はその地平線における
あらゆる形の山岳でなければならない
断章六
新しい時代のコペルニクスよ
余りに重苦しい重力の法則から
この銀河系統を解き放て
新しい時代のダーウィンよ
更に東洋風静観のチャレンジャーに載って
銀河系空間の外にも至って
更にも透明に深く正しい地史と
宮沢賢治「春の修羅」より
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