2005年3月に宇宙航空研究開発機構を定年退官された水谷仁先生が最終講義のときに使われた文章です.
ローマ文化は、ギリシア的な面に対する本能的反作用であった。
かれらは安定性に対する物質的な条件を非常に強く固執したので、没利的な研究というギリシアの伝統は断ち切られてしまった。
こうしてローマは一番繁栄していたときでさえ、科学を奨励することはなかった。
ルクレチウスはこの荒野の中で熱心に説教していた。
どんな研究も、それが直接有益なものでない限り、奨励されることはなかった。
振り子は他の端へ振られたのである。
ここで人類は第二の基本的な教訓を学んだのである。
すなわち、国民が直接明白に有用なもの以外はなんら顧慮しないと決めた場合、その国民自体の有用な時代は既に余命いくばくもないのである。
G.サートン著平田寛訳「古代中世 科学文化史T」岩波書店,p.15/16より
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