人間活動によって大気中に蓄積される温室効果ガスによって、地球温暖化が進むと予測され、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出規制への動きが始まっている。しかし、二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度は今も上昇を続けており、地球の平均気温の統計データにも温暖化傾向がみられるようになっている。 こうした温暖化が続くと、グリーンランドや南極などの氷床が融解し、海水面が上昇することになる。2003年にハーバード大学の地震学者たちが発見された氷河性地震は、氷河のダイナミクスにおける異変を示しており、地球温暖化による海水面の上昇が予測より早まるのではないかと危惧される。
氷河は大陸斜面をゆっくりと流れ下り、末端部で融解や蒸発によって消耗されると考えられてきた。しかし、温暖化が進むなかで氷河の底を流れる地下水が土砂と混ざって潤滑剤となり氷河を急激にスリップさせて、氷河の急激な流れ出しが発生すれば、氷河や氷床の縮小は大幅に加速するに違いない。こうした氷河の流動における異変は、氷床の縮小の加速化を促すのではないかというわけだ。 氷河性地震の発生頻度は今後も高まっていくのだろうか。氷河性地震の発生をモニターしていくことは、地球温暖化に対する氷床の応答がどのように進行しているかを把握するうえで、貴重な情報を提供するものと期待される。 [1] Ekstrom, G. et al. (2003) Science, 302, 602. {2} Ekstrom, G. et al. (2006) Science, 311, 1756. |