ウィリアムズ: ;地軸が横倒しだった
ウィリアムズ〔George Ellis Williams, 1963–, オーストラリアの地質学者〕は、“原生代後期まで、地軸の傾きは60°を超えていた”という説を唱えた。
この時代の氷河堆積物は、世界中から発見されているように見えるが、厳密にはそうではなく、当時の高緯度地域からは発見されていない。ウィリアムズはそれを根拠に、“低緯度地域にかぎって氷床が発達した”と考えた。
現在の地球では、低緯度は温暖で、高緯度は寒冷である。しかしこれは、地軸の傾きが少ないからである。
現在の地球は、地軸の傾き角は約23°である。これが54°以上になると、高緯度よりも低緯度のほうが年間平均気温が寒冷になり、低緯度地域に氷床が発達する。
ウィリアムズ仮説で最大の問題は、“6億年前は54°以上あった地軸の傾きが、5億年前には今と同じ23°に減少した”という主張である。このような大規模でかつ急激な地軸の変動は、地球物理学的には考えにくい。ウィリアムズの仮説は1975年に発表されたが、この問題ゆえに、広くは受け入れられていない。
しかし最近、ウィリアムズ仮説に関連して、いくつかの仮説が提案された:
- 固体地球の慣性モーメントの大きさが変化することで自転運動が不安定になり、極移動が起こった。
- 氷床と赤道方向の膨らみがカップリングして大規模な地軸の傾き角の変動が起こりうる。
(Evans, 1998.; Williams et al., 1998)。
これらの仮説は、従来はまったく無関係だった、地球史における生物進化事件と地球ダイナミクスを結び付けるものである。
文献
Williams, DM; Kasting, JF; Frakes, LA. 1998. Low-latitude glaciation and rapid changes in the Earth’s obliquity explained by obliquity‐oblateness feedback. Nature, 396, 453–455.