北米大陸


図1.北米大陸の年代値。
(エンジェルとエンジェルの1970年の研究にもとづく)
1960年代にRb-Sr法による岩石の絶対年代測定が盛んに行われるようになった。大陸地殻の形成年代分布が明らかにされると、それに基づいて新しい形成発達モデルが提唱された。とりわけ、北米大陸については、年代値が大陸の中心から縁辺部へと時代とともに大陸が成長していくようすが描き出され、多くの教科書で取り上げられた(図1)。
1980年代になると、ジルコンという鉱物粒子を用いて、岩石の精密な年代測定が行われるようになった。次々と得られる測定データは、詳細な構造地質図の作成作業とあいまって、1960年代の大陸成長モデルをくつがえした。こうしたデータを詳細にとりまとめたポール・ホフマンという地質学者は、"United plate of America"(多数のプレートが合体してアメリカができあがったという意味)と題する大論文を発表し、新しい研究の成果を総括した(図2)。
北米大陸は、太古代の地質体とそれをとりまく原生代の造山帯で特徴づけられる。太古代の地質体はクラトンと呼ばれているもので、北米大陸には、スペリオル、ハーン、ラエ、スレーブ、ワイオミングといったクラトンが存在している。
アメリカ大陸の骨組みの中心ともいえるトランス・ハドソン造山帯は、南東に位置するスペリオルクラトンと、北西部に位置するハーンやラエクラトンの衝突でできた造山帯である。これらのクラトンが合体する前にマニケアン海という名前の海洋が存在したものと考えられている。この造山帯の形成年代は18億年前であると推定されている。スペリオルクラトンの南縁にあるぺノケアン造山帯は、19-18億年前にマーシュフェルド地塊との衝突でできたものである。カナダ北西部を北北東-南南西方向に走るタルトソン-テロン造山帯は、スレーブ地塊とラエ地塊の衝突でできたものである。その西のウォプメイ造山帯も19億年前ごろにスレーブ地塊とホター地塊の衝突でできた。さらに、カナダ東部には、トーンガット、ニューケベック、ウンガバ、フォックスなどの造山帯があるが、これらも18億年前ごろの大陸地殻の衝突帯である。

図2.北米大陸の地質。
(ホフマンの1989年の研究にもとづく)
こうした地質構造から、北米大陸の形成過程は次のようにまとめられる。まず、太古代にスペリオル、ハーン、スレーブなどの小規模な地殻が多数形成された。これらは太古代のグリーンストーンベルトと呼ばれる玄武岩、タービダイト(砂岩、泥岩)からなり、プレートの沈み込み帯にできる弧状列島のような地殻として形成されたと考えられる。こうした弧状列島のような小規模大陸は、20-18億年前にプレートの沈み込みにともなって次々と衝突し、北米大陸の原形が形づくられた。このような大陸形成モデルは、1960年代に描かれた成長モデルとは全く異なるものであり、研究が進展するにつれて地球に関する見方が大きく変わっていくものであることを示している。

© 2005 Gifu University, Shin‐Ichi Kawakami, Bunji Tojo.