★マータの見つけた“化石”
その日マータは、学校から造成地をまわって帰りました。
大きくえぐられた造成地の崖は、いくつかの層がむきに出しになっています。ひょっとすると、ゆうべの雨で流された崖あとから、土器のかけらでも見つからないかなという、かすかな期待もあったのです。
マータは先日、通学路の橋のたもとで隕石
らしいものを見つけてから、石ころひとつでも、なにか気になってしまうのです。
今日も、下のほうにある黒ずんだ縞状の層を見ていたマータの目は、平らな石に張りついている模様に、釘づけになりました。
「ん……?」
板状の黒ずんだ石のかけらには、魚のうろこのような、線状の模様があります。貝がらのようだし、植物の葉にも似た模様です。
「ねえ、ねえ、これ……化石*じゃない?」
マータは、いっしょにいた友だちに見せました。「えーっ! 化石?」
のぞきこんだ友だちは、
「これって、貝がらじゃない?」
「そうみたい。あ、こっちのは葉っぱかしら? そうだ、葉っぱの化石かもしれない。もし化石だとしたら、大むかしの生き物。この石ころの中に、むかし生きていた動物か植物の〈いのち〉があるってことだわ!」
その2つの小石を胸に押し当てて、マータは思わずさけびました。
「むかし生きてたものの、いのち?」
友だちも、マータにつられて、にっこりとしました。
「きっとそうよ。……そうだ! ルタンに聞いてみよっと」
「えっ!? いま、なんていったのマータ?」
友だちが、ふしぎそうに見つめました。
「ああ、いえ……こちらの話」
マータは、なんと説明していいかわからずに、その石のかけらを、カバンの中にそっと入れました。