空白

 
★化石のもつなぞ
いそいで家に帰ったマータは、自分の部屋へとびこむと、カバンから石のかけらをとり出しました。先日、隕石を見つけたときのように、机の上に置いて、じっと見つめていました。
「……どう見てもこの石、なにかの化石にちがいないわ。だって、ほかの石とちがって、規則正しい模様がついているし、それに……」
思わずそうつぶやいたときでした。
「それに……なんだい? どんな考えが浮かんできたのかな?」
天からひびいてきたのは、聞きおぼえのある、ミラクルミュージアムのルタン館長の声でした。 いつものことですが、姿は見えません。ところが、マータの疑問が大きくふくらんでくると、まるでそれを待っていたかのように、ルタン館長が声をかけてくれるのです。
それはまるで、夢をみているような時間です。でも夢ではありません。もし夢だったら、ルタン館長の化身であるコスモス教授が、マータの疑問にわかりやすく、はっきりと答えてくれたり、その答えを「夢がさめても」おぼえているはずはないのですから。そして今度の疑問は、マータの手ひらに実際にある、石のかけらなのです。
「あ、ルタン! やっぱりきてくれたのね」
「さて、マータ、こんどはどんな疑問をもったのな?」
ちょっとふざけて、ルタンがいいました。
「この石、もしかして、貝の化石じゃないかなって……」
「ほう。なぜ貝だと?」
「それに、こっちは植物の化石じゃないかしら。葉っぱのような形をしたものがあるみたいだから……」
「それ、どこで見つけたの?」
「造成地の崖。いろんな地層が重なってて……その下の黒っぽい土の中」
「そうか。それなら一度、調べてみる必要がありそうだな」
「うれしい!」
「よーし、わかった!」
いつものように、よくひびく低い声でそういうと、ルタンの声が急に遠ざかっていきました。

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