30億年・生命の旅
地球上に生命の痕跡が現われておよそ30億年、単細胞生物*の
時代をへて、ようやく多細胞生物*が誕生した。
★むかし、たしかに生きていた!
「さあ、その石、よく見せてごらん」
コスモス教授は、マータから小石をうけとると、じっと見つめました。マータは、胸をドキドキさせながら、その教授の顔を見つめます。
教授が、おもむろに口を開きました。
「うーん、まちがいなく化石だ。やったねマータ」
マータの頭の中が、ぼーっとなりました。
「この化石は、生命が誕生したころより、うんとあとの化石だね。だって、この前見たエディアカラの化石とくらべて、しっかりした殻があるのがわかるだろう。おそらく何万年か前のものだろうね」
「えーっ、何万年前も……?」
ひと言で何万年といっても、マータにはピンときません。それよりも、自分の拾った石のかけらが化石だと聞いて、夢のような気持ちです。
「だが、ほんとうにそうかどうかは、拾った場所の地層の年代を調べてみないとね」
「その地層、どうやって調べるんですか?」
「そのことは、あとでくわしくふれるとしよう。ただ、化石というのは生きた証拠だから、生命そのものなんだな。しかも、何万年ものむかしに、実際に生きていた生物だと思うと、ふしぎな気持ちにならないかい? マータ」
「ふしぎっていうより、信じられない気持ちだわ。この化石のころの生物って、どんな生き物がいたの?」
「ちょっと待って! その話に入る前に、約40億年前、地上に最初の生命体が出現してから、その〈生命の旅〉をざっとふり返っておこうかね」
コスモス教授はそういうと、まるでフィルムをまわすように、めまぐるしく部屋の時間をさかのぼらせていきました。
早送りのコマは、エディアカラの海でぴたりと止まりました。
「おぼえてるかね、マータ」
「ええ、おぼえてるわ」
そこには、いつかマータの見た原始の海が、部屋いっぱいにひろがっていました。
「いまから 6億5000万年前に出現した多細胞生物〈エディアカラ生物群〉だね。おどろくべきことは、原核生物の出現からこの生物群が出現するまで、約30億年もの間、〈いのち〉がひそかに息づいていたということだ」