空白
とつぜん現れた生き物たち
発生と絶滅をくり返してきた生命のかたちは、単細胞生物から多細胞生物へ、そしていよいよ、からだにかたい殻をもった生物が出現した。
 
★カンブリア紀の夜明け
目の前にゆらぐ海草のような生物を見ながら、地球に生まれた生命が、30億年もかけてやっとここまできたことに、マータはおどろいていました。
マータはその生物たちに目を向けたまま、教授にたずねました。
「何億年もの進化*をこうして見ると、生物の形も大きさも、ずいぶん変化してきたんですね……」「そのとおり。生物の形態はしだいに複雑になり、大きさも、このエディアカラの生物のなかには、なんと1mもあるものも現われてきたんだ」
「単細胞生物から、多細胞生物へ進化したからですか?」
「いや、そうばかりとはいえない。それに、単細胞から多細胞へ変化したのではないかといわれてはいても、まだそう言い切るだけの根拠はないんだ。
それと、前にも話したように、こうした生物群は絶滅をくり返していて、1つの〈いのち〉から生まれてきたのか、あるいはその時代のまったく別の〈いのち〉から生れたのかは、まだなぞにつつまれている」
「そういえば、エディアカラの生物も絶滅したのでしたね」
「そう、よくおぼえてるね。そうして、その1000万年後に現われたのが、この生物群だ」
そういったコスモス教授とマータの前に、えたいの知れない生物のうごめいている、海底が現われてきました。エビともムカデとも、ヒトデともつかない、さまざまな形をした動物が、海底をはったり海中を泳ぎまわっているのです。
「うわっ! なんですか、これ?」
「これが脊椎動物の祖先、カンブリア紀の生物群だ」
「なんだか、気持ち悪ぃーい」
「気持ち悪がってる場合じゃない。これこそ、現在の生物の祖先たち、からだに殻をもった生物なんだよ」
「これが!? いやだあ! でも、なぜ、こんなふうに変化していったんですか?」
「何億年という間に、地球上の大陸は、大きく集まったり離れたりしながら、地殻変動をくり返していた。その影響で気候も、はげしい寒暖の変化をくり返す。そうした地球環境の変化が、生物にも大きな影響をあたえていったことは、十分想像できるね」
「生きのびるのは、たいへんだったんだ」
「そうだね。おそらく、その変化にうまく対応できたものだけが生きのびることができたのだろう。それは、いまでは想像もつかない、生きるためのものすごい戦いだっただろうね」

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ネクトカリス
ふしぎなキメラ動物
ディノミスクス
サンゴに似た柄をもつ花のような動物
アユシェアイア
新しい種類か有爪類かもしれない
ハルキゲニア
バージェス動物の中で最大のミステリー、新しい種
ハベリア
たくさんのこぶでおおわれた背甲をもっている
エディアカラ生物
カンブリア紀生物
図=カンブリア紀の生物群