空白
オゾン層ってなあに?
 
(みんな、あんなに楽しそうに泳いでるけど、太陽の紫外線とか、オゾン層の破壊とか……、ほんとうにだいじょうぶなんだろうか?)
そう思うとマータは、そのことをもっと知りたくなってきました。
そういえば以前、ミラクルミュージアムのコスモス教授が、大むかし地球には空気中に酸素のなかった時代があって、そのころの大気は二酸化炭素や窒素だったと話してくれたのを、マータは思い出したのです。
「オゾン層って、いったいなんだろう?」
目の前にひろがる、海と太陽と波の音に向かって、マータは思わずつぶやきました。
そのときです。深い海の底からひびいてくるような声が聞こえてきたのです。
「うふふ。マータの今度の疑問はオゾン層かい?」
時間の化身ルタンでした。
「あ、ルタンお願い! オゾン層ってなあに? もっとくわしく教えて!」
「ああ。そうだな……その話の前に、まず酸素のことから入ろうか。オゾンというのは、酸素の兄弟分みたいなもんだからな。
いまから20数億年前、太陽の光を利用して生きる生物・シアノバクテリア*が出現して、はじめて海中に酸素をはき出しはじめたことは、前に話したね」
「ええ。その酸素によって、海が汚染されていったって……」
「その酸素の汚染によって、生物の中には死滅するものも多かったが、やがて生物はその酸素を使って、たくさんのエネルギーをつくりだす仕組みを開発しはじめた。以来生物の、おどろくべき変化が始まっていったんだったね」
「あ、そうそう。それがエディアカラ生物群やカンブリア紀の大爆発*・バージェス頁岩の生物たちなんだ」
「よくおぼえてるじゃないかマータ。そうして、その海中に栄えた生物たちは、やがて次つぎと陸へ上がっていく……」
「あっ、そうだ、そのことを知りたかったの! この前のつづきを!」
「よし、その話はコスモス教授に聞くといい」
そういい残して、ルタンの声はきゅうに途絶えてしまいました。
「あ、待ってルタン!」
マータはさけびましたが、それっきり、ルタン館長の声は聞こえてきません。

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写真=シアノバクテリアによるストロマトライトの海(オーストラリア)