ふき出す熱水のなぞ
いまでは地球の内部から、まるで火山の噴火口や温泉の噴き出し口のように、
海底でも地球内部からの熱水(黒い煙のようなもの=ブラックスモーカー)がふき出している。
★深海にも熱水噴出孔が!
「きみの疑問に答える前に、まず、これを見て
もらおう」
コスモス教授がとびらを開けると、そこには部屋いっぱいに、はじめて見る海底のようすがひろがっていました。
「うわっ、すごい!」
「これが、深海にある熱水噴出孔*だ」
教授が指さしたところには、とてつもなく大きな筒状の岩のかたまりがあって、その先からは、黒い煙のようなものが勢いよくふき出しています。
「現在でも、海底にはこのような熱水噴出孔がたくさんあって、その周りには独特な生物が見られるんだ。あとで原始の海の部屋へ案内するけど、地球の原始の海には、黒煙をふき出す噴出孔がいっぱいあって、海は有毒な硫化水素*などの物質であふれていた。まさに猛毒の海だった。
ところがおどろくことに、そこから、生命が出現したのではないかと考えられているんだよ」
マータは、地底から熱水をふき出していた温泉のことを思い出していました。
「そんな猛毒の海から、イオウシバも生まれたんですか……」
「イオウシバの出現した状況というのは、生命の始まりそのものとはちがうけれど、それに近い環境だったことはたしかだろうね」
「……ということは?」
「わたしたちのからだをつくっているたんぱく質は、ふつう、温度が60℃だとこわれるけれど、このバクテリアは70℃の高温でも生きていける。そのためには、体内に特殊な仕かけをもっているんだ。
温泉の熱水は、硫化水素という有毒な気体がふくまれていて、この硫化水素をエネルギー源にして生きていると考えられているんだね」
「毒を食べて生きるなんて、とても信じられない。……生命ってふしぎですね」
マータは、しみじみといいました。
「生命の誕生については、まだまだ、わからないことが多すぎるんだ。人間がものを考えはじめてからの、最大の疑問といっていいだろうね」