空白
なぞがいっぱい、生命の始まり
生命とはなんだろう。むかしの人々は、生命の始まりをどう考えたのだろう。
 
★神様が生命を生み出した?
「とすると、むかしの人は、〈いのち〉について、どんなふうに考えていたんだろう……」
マータがそうつぶやくのを聞いて、教授は話しはじめました。
「そうだね。じゃあ、むかしの人間が、〈生命の出現について〉どう考えていたかを話してあげよう。まず最初は、神様が生命をつくったという考え方だった」
「うふっ!」
思わずマータはふき出しました。科学者としての教授の言葉とは思えません。
「いや、笑いごとじゃないんだ。まだ、科学の発達していない時代のことだ、そう考えてもふしぎじゃない。そしてこの考え方は、多くは宗教や神話の形をとって広く行きわたっていった」
「そういわれると、わかります。わたしもどこかで、そう思ってたような気がします」
「つぎに人間が考えたのは、地球の外から生命の種がやってきた、という考え方だったんだ。そしてつぎは、偶然に小さな分子*が集まってできた、という考えだ」
「分子が集まって……?」
「そう。15世紀ごろまでの人間は、たとえばナイル川のにごった水からヘビが生まれてくるとか、きたないゴミからネズミがわき出してくるのだ、といったふうに考えていた。このように、生物でないものから生物が出現するという考え方を〈自然発生説〉とよんでいたんだ」
「いろんなこと考えたんだ、人間は」
「ところが、科学が急速に発達するにつれて、当然この自然発生説は影をひそめていった。その大きなきっかけになったのは、パスツールの実験だったんだよ」
「パスツール……、わたし聞いたことある」
「この人がパスツールさ」
そういって教授は、うす暗い部屋の片すみを指さしました。

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図1 神が生命をつくったという考え方
図2 宇宙のどこかから、生命の種が地球に飛んできたという考え方
図3 小さな分子が、偶然に集まってできたという考え方