「マータ。細胞が生命の基本の単位だということは、わかってもらえたかな?」
コスモス教授は、マータを見ながら、確認するようにいいました。
「生き物のからだは、細胞でできているということね」
おうむ返しにそう答えると、コスモス教授が、 「細胞ができてくるまでにも、また、いろいろあったんだ。まず、生き物として始まったのが原核細胞からなんだが……」
「なんだか、むずかしい言葉」
「ごめん。くわしく説明しようとすれば、ついむずかしい言葉を使うようになるんだよ。ここでは、生命の最初のころに、原核細胞という状態があったことだけでもおぼえていてくれればいい。
まあ、そんな状態から、わたしたちがいま細胞とよんでいるものが完成していったのだが、その道のりについて、リン・マーグリスという科学者が、わかりやすい説明をしている。
リン・マーグリスは、細胞は単独に生まれたのではなくて、いろいろなバクテリア(細菌)が、おたがいに寄生しているうちに、同じ膜の中でいっしょに生きる(共生する)ほうが便利だと気づきはじめて、そして細胞を完成させていった、と考えたんだ。
たとえば、植物細胞の場合は、葉緑体*をとり入れて、光合成*を始めるようになったというわけだ。植物は動けないから、自分の体内で栄養分をつくる必要があるからね」
「ふぁー! いのちが完成するまでには、いろんなものが関係してきたんだ!」
「それと、マータ、忘れていけないのは、生命が生まれてくるまでには、何億年もかかっているということ。そして、その生命が出現してから、人間のようにたくさんの細胞でできた生物(多細胞生物)が現われるまでには、さらに多くの時間がついやされてきたんだよ」
「何億年……ですか。気が遠くなりそう」
マータは、自分のからだが細胞でできるまでの何十億年という時間のことを想像していました。