ここは立山。山頂に近い標高(2500メートル。
目の前に雲海がひろがり、その雲の間に、いまオレンジ色の光をかがやかせながら、太陽がしずんでいきます。
マータは山小屋のテラスに出て、まっ赤にもえる太陽を、じっと見つめていました。
(なんてすばらしいんだろう!)
時のたつのも忘(れ、マータは引きこまれるように、その情景(に見入っていました。
やがて、白みがかった空をくぎっていた黒い山かげが、またたくまに消えると、いつのまにか、頭上の夜空に星がかがやきはじめていました。
「あっ、星だ!」
マータは、思わず声をあげました。
「あっ、あっちにも……、こっちにも……」
かぞえているうちに、かぞえきれなくなってきました。見るまに空一面が、星の海に変わっていきます。
〈星がふるような〉という言葉を聞いたことがありますが、じっさいにそんな星空を見るのは、マータははじめてでした。
こんなにたくさんの星が、この空のどこにかくされていたのでしょう。マータは、おどろきのあまり言葉も出ず、ただじっと星のきらめきを見つめつづけていました。
(このたくさんの星は、いつ、どうやって生まれたのかしら?)
星を見つめているうちに、マータの心に、強い疑問(がわいてきました。
と同時に、星空の中へすいこまれていくような、心細い気持ちにもなってきたのです。
(あっ……わたしはいま、どこにいるんだろう)
マータの頭上には、金粉(をしきつめたように、たくさんの星が、そこだけ夜空を帯状(に横ぎっています。