星空の下で振り向く少女(マータ)
ふりそそぐ星の世界で
 
「あれが天の川だよ」
ふと、だれかの声がしたように思いました。
マータの目は、その星の帯をはさんでひときわ美しくかがやく星に、くぎづけになっていたのです。
また、だれかの声がしました。
「天の川の西側の岸のふちに、白くかがやく明るい星があるだろう?あれが姫星ひめぼし。ちょうどその反対の東の岸のふちに、やっぱり白くかがやく明るい星が見えるね。ひこ星だ。その2つの星が年1回、七夕たなばたの日だけに会えるという伝説は知ってるね?」
こんどは、はっきり聞こえます。マータは、はっとわれに返りました。周りを見まわしたけれど、だれもいません。
「あなた、だーれ?どこにいるの?」
「はっはっはっ、わたしの名はルタン。きみには、わたしの姿すがたは見えない」
低くて太い声が、星空にひびきました。
マータは、その見えないだれかに向かっていいました。
「ルタン!? へんな名前。あなたはなぜ見えないの?」
「ルタンとは、時間のこと。だから姿は見えないんだ。きみはマータだろ?いい名だね。女の子らしい」
「そうよ。でも、そんなことより、なぜ、そんなに星のことを知っているの?わたしも、こんなにたくさんの、いろんな星のこと知りたい」
「ほんとうに知りたいのなら、これから話してあげてもいいぞ」
「そりゃ、知りたいわ!はじめてこんな星を見たんだもの」
「よーし、きまった!」

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