星空の下の少女(マータ)
すべて命あるもの
 
★ヒトも自然も同じ仲間なかま
マータは、まるでゆめからさめたような面持おももちで、
山小屋のテラスにたたずんでいました。
気がつくと、もとの、降るような星々が周りをとりまいています。
「楽しかったかい?」
ふいにルタンの声が、星空からしました。
「あっ、ルタン!……わたし、すごくふしぎだったの!」
納得なっとくのいかないことがあったのかい?」
「ううん、そうじゃなくて……。この宇宙うちゅうがビッグバンから始まって、それで宇宙は星だらけで、その中の銀河ぎんがのひとつに太陽が生まれて、そして地球が生まれた。そういうことが、どうしてわかったのかってことが……」
「うん、そのことか。隕石いんせき化石かせき分析ぶんせきしたり、宇宙探査たんさ衛星えいせいを打ち上げたり、宇宙のしくみをときあかすさまざまな方法を、人間は考え出した。それも、ほんの40年前まではわかっていなかったことをね。たしかに人間は、すごいことをやる。
でも人間だって、宇宙のガスやちりから生まれたモノだからね。時間と環境かんきょうによって、この先どのように変化していくかはわからない。そのことを、人間はもっともっと、大切に考えなくてはいけないね」
ルタンの話が終わると、先ほどから気にしていたことが、マータの口をついて出ました。
「あの……、最後にもうひとつ教えてくれる?」
「おや、いったいなにかな?」
おどけた声で、ルタンはマータに先をうながしました。
「この宇宙には、地球以外には生き物はいないの?」
ルタンはこの質問しつもんを待っていたように、
「E.T.のことだね。そう、広大こうだいな宇宙のどこかにいる可能性かのうせいはある。だが、いまのところ地球以外の星に、生命の痕跡こんせき*は見つかっていないんだ」
「じゃあ、命をもつのは人間だけってこと?」
「E.T.――地球外生命体が見つかっていない、という意味では、そういうことになるね。
これは、生命が活動している星は、われわれの知るかぎり、この地球だけってことなんだ。
でも、ここでわすれてはいけないこと。それは、この地球という小さな星の上には、われわれ人間だけでなく、動物も植物も、生命あるものすべてがすんでいるということなんだ。だから、なにが必要で、なにが必要でないかを、人間の勝手な考えだけで決めることはできないんだよ。星も雲も、大気だって全部、〈命あるもの〉と考える必要がある」
ルタンはこういって、言葉を切りました。
うなずきながらルタンの話に聞き入っていたマータが、目をかがやかせて、
「そうなんだ……だんだんわかってきた!」
といったとき、
「ではまたね、マータ!」
と、ルタンの声が、遠ざかっていきました。
「あっ……!」
思わずマータは、声の消えていったほうを見やりました。
降るような星は、ますますかがやきをまして、夜空をおおいつくしています。
マータのむねに、感動がつきあげていました。
こうしてあらためて星を見あげていると、その一つひとつに、それぞれの命があるのだという言葉のわけが、じんわりとつたわってきたのです。
そして、宇宙や地球について、もっともっと知りたい、とマータは心から思うのでした。

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