多細胞生物の出現

原生代の終わりに氷河時代があったことは、多くの研究者が注目しました。カンブリア紀は温暖な気候で、多様な動物がそろって出現した時代だと考えられてきました。化石記録に基づいた生物進化を研究していたシンプソンGeorge Gaylord Simpson, 1902–1984, アメリカの古生物学者〕は、カンブリア紀の初めに急激に生物の多様性が増大した現象を〈爆発(explosion)〉と呼び、新しい生息環境の拡大がその原因であるという考えを示していました。
もし原生代の終わりに厳しい氷河時代があり、カンブリア紀になって温暖化したとすると海水準が上昇します。すると浅海性の海が新たに形成されて、多様な動物が生息する新しい環境が出現したのではないかというのです。そこで、1963年にヨーロッパで会議が開かれ、原生代の氷河時代問題が多方面から議論されました。この会議で、ハーランドとルドウィックは、原生代後期の氷河時代と多細胞動物の出現の関連性を議論しています。
原生代末期の氷河時代と多細胞動物の出現の関連性。ズーム
原生代末期の氷河時代と多細胞動物の出現の関連性。
氷河時代の直後に、多くの動物門が出現している。
Harland and Rudwick 1664
文献
Harland, WB; Rudwick MJS. 1964. The Great‐Infra‐Cambrian ice age. Scientific American, 211, 28–36.
Rudwick, MJS. 1964. The Infra‐Cambrian glaciation and the origin of the Cambrian fauna. In problems in palaeontology, Nairin, AEM, ed. Wiley, 150–155.