炭素同位体比から生命活動がわかるか

炭素には、質量数12と13の2種類の安定同位体がある。その存在度の比は98.90 ∶ 1.10だが、大気中の二酸化炭素、生物骨格を構成する炭素、生物体を形成する炭素で同位体比にいくぶん差がある。安定同位体地球化学の分野では、炭素同位体組成を、ベレムナイトの化石の炭素同位体比からのずれの千分率で表す。この表示法では、大気中の二酸化炭素は-7‰で、海水から沈殿する炭酸塩岩はほぼ0‰となる。
生物が二酸化炭素と水から有機物を合成するとき、環境中の炭素のうち質量数の小さい方を選択的に利用する傾向がある。実際、さまざまな生物体を構成する有機物の炭素同位体比を測定すると、大気や海水組成から大きく負の値へとずれていることがわかる(図)。
岩石中に含まれる有機物が生物の死骸からもたらされたものか、生命活動を介さない反応によって作られたかを検討する1つの方法に、有機物の炭素同位体比を測定する方法がある。すなわち、-20~-30‰に達するような大きな負の値をもつ有機物は生命活動によって作られた可能性がある。ただし、有機物の炭素同位体比は、地中に埋没してから続成作用などを被ると初期の値とは異なる値になる場合がるので、詳細な検討が必要とされる。
炭素同位体比の図。(NHK books)Botany Department, University of the Witwatersrand, Johannesburg
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炭素同位体比の図。(NHK books)
Botany Department, University of the Witwatersrand, Johannesburg