イスア堆積岩のグラファイト

グリーンランドのイスア地域には、地球の最古の堆積岩が露出している。この堆積岩の堆積年代は37~38億年前と見積もられている。堆積岩といっても長い地質時代のあいだに変形や変成作用をうけている。これらの堆積岩にはグラファイトが含まれているが、それらはもともと生命活動でつくられた有機物に由来するのではないかと考えられた。
Oehler and Smith (1977)は、イスア地域の堆積岩から採集されたグラファイトの炭素同位体比を測定し、-21.4~-26.9‰という値を得ている。これらの値は若い時代の堆積岩中に含まれる有機物の炭素同位体比と同様の値である。この結果は、37億年前に生命活動が存在したことを示唆するのか。Oehler and Smith (1977)は、ずっと後の時代に有機物が混入した可能性を否定できないことや、変成作用で炭素同位体比が変化したことも考えられることから、当時すでに生命が誕生していたという主張はしていない。
続いて、Shidrowski et al. (1979)は、イスア地域の炭酸塩岩の炭素同位体比とグラファイトの炭素同位体比を測定した。炭酸塩岩の炭素同位体比は、-2.5‰であり、若い時代の炭酸塩岩の同位体比と同様の値である。グラファイトについても-5.9~-24.9‰の値をとっており、若い時代の堆積岩中の有機物の同位体比と同様である。
Shidrowski et al. (1979)は、これらの同位体比が生命活動を反映したものであり、当時すでに光合成生物がいた可能性を論じている。しかし、彼らの解釈は、最古の生命活動の痕跡として確実なものとは見なされていなかった。
文献
Oehler, OZ; Smith, JW. 1977. Isotopic composition of reduced and oxidized carbon in Early Archaean rocks from Isua, Greenland. Precambrian Research, 5, 221–228.
Schidrowki, M; Appel, PWU; Eichmann, R; Junge, CE. Carbon isotope geochemistry of the 2.7×109‐yr‐old Isua sediments, West Greenland: implications for the Archaean carbon and oxygen. Geochimica et Cosmochimica Acta, 43, 1979, 189–199.