ビヤクネスの仮説


ビャクネスの仮説。
(from 川上紳一. 縞々学 リズムから地球史に迫る. 東京, 東京大学出版会, 1995)
1969年になって,海洋変動であるエル・ニーニョ現象と,大気圧変動である南方振動を結びつける仮説が気象学者ビヤクネスによって発表された。以後,エル・ニーニョ現象と南方振動は密接に関連しているとされ,2つの頭文字をとってENSOと呼ばれる。
ビヤクネスは,ペルー沖の海水が低温なのは,貿易風によって暖まった表層海水が西へ運ばれ,そこへフンボルト海流が流れ込むからだと考えた。貿易風によって西太平洋と東太平洋の表層海水温に差ができ,温暖な西太平洋で上昇気流が,寒冷な東太平洋では下降流が発生する。地上付近の貿易風は,気圧の高い東太平洋から西太平洋への大気の流れであり,上空では逆の西風が吹く。ビヤクネスは,このような赤道面に沿う循環が存在すると考えた。この循環が活発な時期と停滞した時期が繰り返し訪れると,ウォーカー卿の発見した南方振動が説明できる。そこで,ビヤクネスはウォーカー卿にちなんでこの大気循環をウォーカー循環と名づけた。ビヤクネスによって,エル・ニーニョ現象と南方振動は,大気海洋システムの変動の現れだという理解が広まり,エル・ニーニョ現象の総合的な研究の発展に多大な影響を与えた。
ラ・ニーニャ現象:
ビヤクネスの仮説によると,南方振動はウォーカー循環の強弱が引き起こしている。貿易風が弱まるとエル・ニーニョ現象が現れるが,逆に貿易風が強まるとペルー沖の海水温は低温になる。低温状態がとくに強まった状態は,エル・ニーニョ現象に対して,ラ・ニーニャ現象と呼ばれる。ラ・ニーニャはスペイン語で女の子という意味である。
参考文献
Bjerknes, J. (1969) Atmospheric teleconnections from the equatorial Pacific. Mon. Weather Rev., 97, 163–172.

© 2002 Gifu University, Shin‐Ichi Kawakami, Nao Egawa.