エル・ニーニョ現象と世界経済


海水温変動(SST Anomaly),イワシの漁獲量(Anchovy Catch),大豆価格(Soy Price)の関係。
(Barber (1988) 原図,Enfield (1989) El Niño, Past and present. Rev. Geophys. 27, 159–187より転載))

関連事項:エル・ニーニョとマグロの漁獲量。ENSOサイクルにより西太平洋の温暖海域のシフトはマグロ漁にも影響を与えている。

漁獲量の時空間変化。
(from Lehodey et al., 1997, Nature, 389, 715–718)
1960年代まで,エルニーニョ現象は,ペルー周辺の人々と,一部の気象学者,海洋学者に知られていたにすぎなかった。1972年から翌年に発生したエルニーニョによって,エルニーニョ現象は,世界的にそして専門家以外の人々にも注目されるようになった。ペルー沖の海水温が上昇して,プランクトンが死滅した結果,ペルー沖でのイワシの収穫が著しく落ち込んだのである。ペルー産のイワシは米国に輸出され,大豆などの農作物の生産における飼料として使われていたのである。イワシの不漁は,大豆生産の落ち込みを引き起こし,国際市場における大豆の高騰をまねいた。その原因として始めてエルニーニョ現象が注目されたわけである。今日では,エルニーニョ現象は,世界各地の異常気象の要因として,多くの人々の関心を集めるようになっている。

参考文献
Lehodey, P.; Bertignac, M.; Hampton, J.;Lewis, A. and Picaut, J. (1997) “El Niño‐Southern Oscillation and tuna in the western Pacific” Nature, 389, 715–718.

© 2002 Gifu University, Shin‐Ichi Kawakami, Nao Egawa.