最古の陸上植物化石

オルドビス紀の痕跡

陸上植物はオルドビス紀に出現していたかもしれない。
オルドビス紀の地層からスポロポーレニンが発見された。スポロポーレニンは,胞子を覆う物質であり,当時,胞子を作る植物が出現していたことになる。
また,胞子の化石も見つかっていて,特徴的な三稜形の模様が認められる。しかし,現在の陸上植物の胞子は1個の母細胞が4個に分裂する減数分裂でできるため,四面体形をしている。
さらに,オルドビス紀の地層から,分解耐性のあるクチクラを持つ組織も見つかって。
これらの痕跡は,陸上植物にみられる特徴を備えているが,それらがどんな植物だったのかはわかっていない。

クックソニア


クックソニア (Cooksonia)
とその胞子のう
(西田 治文. 植物のたどってきた道. 東京, 日本放送出版協会, 1998. p.53)
形状が確認できる最古の陸上植物は,4億1000万年前のシルル紀中期に発見されたクックソニアである。大きさは数cmにすぎないが,直径1.5 mmという細い茎が枝分かれしている様子がはっきりとわかる。その先端には胞子のうがある。気孔も存在する。
通道組織には仮道管のような肥厚がなく,維管束植物ではないと。

ライニー植物群

スコットランドのライニー・チャートは,デボン紀前期の約4億年前の地層だ。
20世紀の初めにこの地層から,原始的な体制の植物化石が2種類発見された。小型のものは,リニア・グウィンヴォーニイ[学名],大型のものはリニア・マヨール[学名]と命名された。その後,ホルネオフィトン・リグニエリ[学名],アステロキシロン・マッキエイ[学名]が発見された。
いずれも葉も根もなく,枝分かれした軸とその先端の胞子のうからなる。これらは維管束植物だと解釈された。

アグラオフィトン (Aglaophyton)
(アグラオフィトン・マヨール)
(西田 治文. 植物のたどってきた道. 東京, 日本放送出版協会, 1998. p.56)

リニア (Rhynia)
(リニア・グウィンヴォーニイ)
(西田 治文. 植物のたどってきた道. 東京, 日本放送出版協会, 1998. p.56)

ホルネオフィトン (Horneophyton)
(ホルネオフィトン・リグニエリ)
(西田 治文. 植物のたどってきた道. 東京, 日本放送出版協会, 1998. p.56)
1980年にエドワーズ[解説]が,これらの化石を再検討した。その結果,リニア・グウィンヴォーニイは,はっきりした肥厚のある仮道管があり,維管束植物だった。
一方,リニア・マヨールの断面には仮道管が認められず,維管束をもたない植物だった。そのため,この植物は別属に分類され,アグラオフィトン・マヨール[学名]となった。また,ホルネオフィトン・リグニエリにも,仮道管はない。
こうした研究を受けて,非維管束植物をリニア状植物,維管束をもつ植物化石をリニア類と呼んでいる。
リニア類の仮道管を縦に切ると,細胞壁に分解耐性のある二次肥厚があるが,その肥厚は薄く,仮道管の接する壁はスポンジ状である。この仮道管はS型仮道管と呼ばれる。

トリメロフィトン類(Trimerophytopsida)


プシロフィトン (Psilophyton)
(西田 治文. 植物のたどってきた道. 東京, 日本放送出版協会, 1998. p.30)
プシロフィトン (図),トリメロフィトン[学名],ペルティカ,イビカが属する。主軸と側枝が分化しているが,葉はない。 〝トリメロフィトン〟 は,枝が3つに分岐することから名づけられた。
プシロフィトンは,1857年にカナダの東部でドーソン[解説]が発見した。これ以降,化石記録に基づき陸上植物の起源が研究されるようになった。横走する地下茎と直立する地上茎からなる。茎は細く,まだらな刺状突起があるだけで葉や根はない。プシロフィトンの胞子のうは縦長の紡錘形で,茎の先端にあり,胞子のうの片側に縦に裂け目がはいる。
トリメロフィトンの仮道管は,G型仮道管と呼ばれており,肥厚が厚く,スポンジ状構造はみられない。G型仮道管はS型仮道管から発達したようだ。
リニア類からトリメロフィトン類が,トリメロフィトン類からシダ植物が進化した。
参考文献
西田治文 (1998) 植物のたどってきた道,NHKブックス。
戸部 博 (1994) 植物自然史,朝倉書店。

© 2002 Gifu University, Shin‐Ichi Kawakami, Nao Egawa.