超大陸の分裂が全球凍結をまねいた

約7億年前、極地から広がった氷床が赤道まで達し、地球表面が全面的に凍結したという全球凍結仮説(Snowball Earth)を巡って、活発な議論が続いている。もし地球が大気のない惑星だったら表面温度はマイナス30度ぐらいまで下がり、全凍結した惑星になってしまう。現在の地球が凍結状態ではないのは、地球には大気がありその中に二酸化炭素などの温室効果ガスが含まれているおかげなのだ。
では、どうして7億年前ごろの地球では、全面凍結におちいったのか。フランスの研究グループが、気候モデルを用いて気候の寒冷化の原因を探る研究を行い、その結果をまとめた論文を3月18日付けの「ネイチャー」に発表した。彼らは、大気中の二酸化炭素濃度が温室効果が効かなくなるレベルまで下がってしまったからであるとし、大陸の配置の変化にともなう水循環を再現し、さらに二酸化炭素濃度の変動をシミュレーションした。
大気中の二酸化炭素濃度の変動は、炭素の循環のしくみに変化が起こることで生じる。大気中の二酸化炭素は、植物の光合成や、有機物の地中への埋没によっても変化するが、そうしたプロセスでの二酸化炭素の出入りは長い時間スケールではほぼバランスしており、大きな変化にはいたらない。氷期-間氷期のような数万年スケールでの変動は、海洋性プランクトンの繁殖と、有機物の沈殿によって引き起こされているが、それとて地球表面が全面的に凍結するような寒冷化には不十分である。
全球凍結のような大規模な気候変動が生じるには、地球深部から脱ガスしてくる量と、海水中の炭酸イオンとカルシウムイオンが結合して炭酸塩岩ができる量のバランスが崩れて、二酸化炭素濃度が著しく低下することが必要だ。こうしたバランスの崩れは、大陸からのカルシウムイオンの供給、すなわち、陸上の岩石の風化や侵食の作用が著しく高まらなくてはならない。フランスの研究グループは、約8億年前の超大陸と、7億5000万年前の超大陸が分裂した2つの時期について計算を行って、全球凍結状態を引き起こすレベルまで二酸化炭素濃度が低下するという結果を導いている。
大陸が細かく分裂すると、各大陸で水循環が活発になり、雨がたくさん降って侵食作用が活発になることが、全球凍結の必要条件の一つであるというわけだ。

© 2002 Gifu University, Shin‐Ichi Kawakami, Bunji Tojo.