空白
バージェス峠に眠る動物たち
1909年、カナダのロッキー山脈のバージェスの地層から発見されたアノマロカリス。その復元には日本のテレビスタッフも関わった。
 
★ロッキー山脈に眠っていた化石たち
「アノマロカリスなど、かたい殻やとげをもった生物化石が発見されたのは、ここカナディアンロッキー、正確にはカナダ・ブリティッシュコロンビア州のバージェス峠というところだ。そこでこれらの化石たちは、その名前をとって〈バージェス頁岩*群〉とよばれるようになった」
「バージェス頁岩……」
「そう。頁岩というのは、泥がかたまってできた岩で、うすくはげる特徴をもっているんだ。
このバージェスの化石については、1909年、アメリカのチャールズ・ウォルコット*という学者が発掘し、イギリスの学者たちと発表したんだ。その時代の地層を調べていくと、同じような化石は世界の30か所ちかくから発見されていて、それらの生物たちが当時、どんなに繁栄をほこっていたかを裏づけることになった」
「ふーん。ところで教授、テレビのスタッフが完成させたっていうのは……?」
「おお、そうだったね」
教授は、アノマロカリスの化石を指さしながら、いいました。
「最初この触手の化石を、みんなは1つの生き物だと考えていた。ところが、そのそばから丸い輪のような化石が出てきて、それとどう関わっているのかわからない。
その後、取材をしていたテレビ番組のスタッフのひとりが、もしかして、触手のような働きをしていたのではないか、といいだしたんだ。そこでさっそく、パズルのように組み合わせながら、模型をつくることになった。
イギリスの有名な学者ウィッティントンに、スタッフは相談した。そこで丸い輪のような化石は、どうやら口にあたることもわかった。そうしてできあがったのが、このアノマロカリス(奇妙なエビという意味)の形なんだ」
「すごーい! ばらばらの化石をつなぎ合わせて、生き物の形ができあがっていく……。さぞ、うれしかったでしょうね」
「そりゃあ、うれしかっただろうね」
バージェス頁岩の発見者ウォルコット
1909年、バージェス頁岩生物化石の発見者ウォルコットは、当時高名な地質学者だった。その後イギリスのハリー・ウィッティントンのチームが、バージェスで再調査し、ケンブリッジ大学へもどってからも大学院生デレック・ブリッグスとともに、この化石を徹底的に調べ直した。
その結果、ウォルコットの解釈を訂正して、カンブリア大爆発といってもいいほどの大発見だったことを提起したんだが……。もっとも、この発見がすぐ大ニュースになったわけじゃない。その後、このことを著書にまとめたスティーブン・グールドの『ワンダフルライフ』に負うところが大きかったんだがね。

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見つかった化石 アノマロカリスの口