空白
なぞがいっぱい、生命の始まり
生命はなにからできているかという分析から、 科学者の目は原始の海のなぞへと向けられていった。
 
★生命誕生のなぞにいどむ研究者たち
生命の始まりがどういうことか、おぼろげながらマータにもわかってきました。マータは、自分の頭の中を整理するように、教授にたずねました。「生命の始まりっていうと、いままで人間に近い姿でしか考えてなかったけど、最初はアミノ酸のような有機物だったのね」
「そういうこと。じつは、地球上のすべての生命は、細胞でできている。細胞は袋のようなものなんだ。この細胞をつくっているのが、有機物だというわけだ」
「その細胞が、アミノ酸でできているの?」
「わかってきたねマータ。さてそこで、もう1人大事な科学者の話をしておこう」
教授はそういって、かべに1枚の図を写しだしました。
「モスクワ大学の化学者オパーリンは、原始地球の中でアミノ酸のような簡単な有機物が集まって、たんぱく質のような複雑な有機物ができるには、生命を生み出した海の中は、〈熱くて薄いスープ〉状態だったと主張した。
浅くて水たまりのようなところで、海水が蒸発してスープが濃くなって、小さな分子から、大きな有機物ができやすくなったんだね。それが膜のような形になり、細胞になったんだね。
オパーリンはこの細胞状の粒を〈コアセルべート〉といっているんだがね。この実験からオパーリンは、無機物から有機物が形成され、細胞ができて、生命が発生したのだろうと主張したんだ。 オパーリンはその後、日本でもたくさん実験的研究を行って、説を裏づける多くの証拠を集めているんだ」
「えーっ、日本でも実験してるの?」
「むろん。そして、日本の科学者だって、生命の起源の研究には真剣にとり組んでいるんだ。科学者の柳川弘志は、細胞の祖先はおそらく原始の海でつくられたと考え、高濃度の金属原子をふくんだ海水の中にアミノ酸などを入れて実験し、細胞状のものをつくることに成功した。それを〈マリグラヌール〉とよんでいる。そのほかにも、多くの学者たちがこのテーマにいどんでおり、生命の起源については、いまも世界中でさかんに研究がつづけられているんだよ」
教授の話には、とても熱がこもっていました。
コラムアミノ酸とたんぱく質
人間のからだが、おもにたんぱく質でできていることは、マータも知ってるね。たんぱく質はアミノ酸でできていて、アミノ酸がたんぱく質をつくる元になっているといったほうがいいかな。
たとえば、人のからだの細胞は、62.6%が酸素で、炭素が19.5%、水素が9.3%、残りが窒素などだ。つまり細胞は、これらの4つの元素が中心になってできているんだ。アミノ酸はこの図のように、窒素とつながって、アミノ酸基として炭素に連結する重要な役割を果たしているんだよ。

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オパーリンの考えた生命の始まり
コアセルベート
たんぱく質
水の分子
コロイド
コアセルベート
マリグラヌール(柳川弘志)