マルサス対ボーズラップ

世界人口の変遷ズーム
世界人口の変遷
  • (a) 人口と時間の関係。
  • (b) 人口を対数にした片対数グラフ。
  • (c) 人口、時間とも対数にした両対数グラフ。
  • (c)では人口増加はかなりなめらかになっているが、10000年前から1000年前には、人口が急増している。この増加は、農耕が始まり食糧供給が増加・安定したためである。
    Cohen 1995
    1798年、マルサス(Malthus)は、 “食糧生産は線形にしか増大しないが、人口は指数関数的に増大するので、いつか人口増加は食糧生産を追い越す” と主張した。これに対し、ボーズラップ(Boserup)は、食糧の増産が人口増加を可能にしたと反論した。どちらの言い分が正しいのか。この問いに対しては、過去の歴史を振り返れば検討できる (図) (Evans, 1999)。
    1860年以降の人口増加、農耕地と灌漑地域の拡大、窒素肥料の投入量、小麦と米の単位面積当たりの収穫量の変遷。ズーム
    1860年以降の人口増加、農耕地と灌漑地域の拡大、窒素肥料の投入量、小麦と米の単位面積当たりの収穫量の変遷。
    Evans 1999
    約1万年前、狩猟・採集生活をしていた時代の世界人口はわずか100万人だった。8000年前頃から世界各地で農耕が始まり、定住生活が始まった。農耕地が拡大するとともに人口は増加し、西暦0年には人口は2億人になった。さらなる農耕地の拡大、集約的な農業、家畜の使用などによって、食糧生産と人口は共に増加し、産業革命を迎えた18世紀、人口は10億人を越えた。20世紀前半には世界人口は30億人を越え、食料の需要も増えたが、主に農地の拡大がそれに応じ、マルサスの悪夢は回避された。1960年代以降も指数関数的に人口は増え続けたが、農地はそれほど増えなかった。しかし、肥料、品種改良、灌漑の拡大によって、食糧の増産は続いている (図)。ただしこの間に数回、いくつかの国で飢饉が起こり、人口が急減した。地域レベルでは、マルサスの悪夢が現実化している。