持続可能な未来

人口問題は、千年持続への脅威である。このままでは、2100年には世界人口は100億人を越える。新たに増える40億人を養うためには、食糧生産を80%増やさなくてはならない。
農地を広げようとすれば、さらに辺境を開発し、熱帯林などを破壊しなければならない。しかも、人口増加は都市化を引き起こし、優良な農地が失われる。農業生産性を上げるという選択もある。大量の肥料と水とを投入し、遺伝子組み替えをも導入して生産性の向上が進められている。だが、さらに80%も生産性を上げることが可能なのか。これは科学技術の課題だが、植物学・昆虫学・微生物学などの生命科学はどこまで対応できるかという、千年持続学への挑戦課題でもある。
一方、問題解決のためには別のアプローチもある。今後の人口増加は、インド、中国などの発展途上国の問題で、先進国では逆に人口が減る。食べ物が豊富にあって食べ残しが生ゴミになる豊かな先進国と、その日の食べ物に困る貧しい発展途上国の間で富や食糧を再分配すれば、人口増加地域で蔓延している飢餓と貧困を緩和できる。そうすれば、80%もの食糧増産は必要ない。
千年持続学のもう一つの課題は、これまでの南北問題の呪縛から人々を解放し、100億人の人類全体が 〝地球市民〟 として共通のアイデンティティを持ち、人類全体が地球環境を合理的に管理する社会の構築である。この課題は、千年持続学の中の人間力の開発にかかる。