HR図、恒星の色と光度のプロット
HR
 
「マータ、これまでに星の明るさと色について学んできたね。これだけからでも、星の性質についてとっても大切なことがわかるんだ」
コスモス教授はそう言って、パソコン画面にグラフを表示して見せました。
マータはなんだかむずかしそうな話だったらやだななんて思っています。
コスモス教授は続けます。
「今からもう100年ぐらい前の話だ。デンマークのヘルツシュプルングとアメリカのラッセルという天文学者が、別々に星の明るさと色の関係を研究していたんだ。そしていろんな星のデータを横軸に色、縦軸に明るさをとって表示した。それがこの図なんだ。この図は二人の天文学者のイニシャルをとってHR図と呼ばれている。どの教科書にも出てくるとっても重要な図になっているんだ」
さっきからコスモス教授は大切だとか重要だとか言っています。けれどマータにはよくわからないようです。
そんなマータの様子をみて、コスモス教授はゆっくり話を進めます。
「まず、この図の左上から右下にたくさんデータがあるね。これらは主系列星って呼ばれているんだ。この列の真ん中あたりに太陽がある。だから太陽の仲間の星だって考えればいい。夜空の星はほとんど太陽の仲間なんだね」
マータはちょっと興味が出てきたようです。
「この図の右上に星の集団がある。これらは赤色巨星と呼ばれている。横軸をみると確かに色が赤やオレンジになっているだろう。だから赤色星というのはすぐわかる。巨星は巨大な星という意味なんだが……これにはちょっと説明が必要だね」
そういってコスモス教授はマータの顔を覗き込みました。
マータはそのわけが知りたくてしかたがないように目を輝かせています。
「じゃあ話そう。物体から放射される光の量、すなわち明るさなんだが、それは物体の絶対温度の4乗に比例している。絶対温度っていうのは普通の温度に273度を足したものだったね。ここに100度の物体があるとする。その値を4乗すると、100,000,000という数字になる。物体の温度が1000度の場合は、1,000,000,000,000という数字になる。温度が10倍違うと、エネルギーの違いは10000倍にもなるんだ」
そう言ってコスモス教授は、計算を紙に書いて説明しました。
「わー! ゼロがいっぱい……」
っとマータ。
「まあ……数字のことはともかくとして。温度が高いほど放出される光は強いんだ。いいね」
コスモス教授はマータにわかったかどうか尋ねました。
「うん」
「よし。星の話にもどそう。赤色巨星は温度が低い星だったね。なのに明るいってことはなぜかって考えてみよう」
そう言ってコスモス教授はしばらく間をおきました。
マータはいろいろ考えを巡らしているようです。
コスモス教授はまた話し出しました。
「暗い電球でもたくさん集めれば明るくなるよね。赤色巨星も同じことさ。たくさん電球があるようにみえるってことは……実際には大きいってことなんだがね」
「あっ! そうか」
マータはようやく納得したな表情を見せ、コスモス教授に笑顔を向けました。
「わかったようだね。よかった。では応用問題だ。この図で左下に星の集団がある。これらは白色矮星っていうんだが……」
「表面温度が高いのに……暗い……」
マータはそういってニコッと微笑みを浮かべたのでした。

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