海水中のホウ素同位体比

pHに対するB(OH)3とB(OH)4-の割合(A)と、ホウ素同位体分別(B)。ズーム
pHに対するB(OH)3とB(OH)4の割合(A)と、ホウ素同位体分別(B)。
Hemming and Hanson. 1992. p.538. (Fig.1)
海水のpHと有孔虫のホウ素同位体比との関係。ズーム
海水のpHと有孔虫のホウ素同位体比との関係。
pK*は海水中のホウ酸の解離定数。それぞれの値は、海表と深海のもの。
Reprinted by permission from Nature Sanyal et al. 1995 Fifure 1 copyright 1995 Macmillan Publishers Ltd.
ホウ素には、質量数10と11の2つの天然同位体がある。ホウ素は海水中ではB(OH)4とB(OH)3として存在しているが、その相対存在度はpHに大きく作用される。B(OH)4には質量数の小さい10Bに富む傾向があり、B(OH)3に対するB(OH)4の分別は、-19.8‰である。したがって有孔虫の炭酸塩骨格に取り込まれているB(OH)4の同位体比を測定すれば、その値から水のpHを逆算できる。
図1(a)は、pHに対するB(OH)3とB(OH)4の割合で、(b)はそれぞれのホウ素同位体比がpHとともにどのように変化するかである。現在の海水のホウ素同位体比は+40‰で、炭酸塩鉱物のホウ素同位体比は+22~+23‰である。この値は炭酸塩鉱物の種類によらない。(Hemming and Hanson 1992)。
サンプルホウ素同位体比
δ11B ∕ ‰
ホウ素濃度
w ∕ ppm
海水タヴェミア・キー (フロリダ)+39.94.56
フロリダ湾+39.94.76
ロング・アイランド湾+40.13.60
アラゴナイトマルキクメイシ属+24.761.9
Siderastnea+23.656.4
ミドリイシ属+23.862.1
Agaricia+23.550.4
ハマサンゴ属+24.455.6
Gardineria+23.864.4
ジョルターズ・キーのオーイド+21.826.9
カイコス海台のオーイド+21.624.5
クサビライシ属+24.556.6
サボテングサ属+22.023.6
ツキガイ属+20.212.4
イボヤギモドキ属+24.868.2
高Mgカルサイトウニ+22.940.2
イシノミ+22.454.8
殻をつくる紅藻+23.050.9
カルサイトThecidellina(全殻)+21.525.7
Thecidellina(外殻)+22.548.8
海水と炭酸塩鉱物の炭素同位体比。
原典で複数のデータがあるもののうち、中間値のみを記したものがある。
Hemming and Hanson. 1992. p.538
文献
Hemming, NG; Hanson, GN. 1992. Boron isotopic composition and concentration in modern marine carbonates. Geochimica et Cosmochimica Acta, 56, 537–543.
Sanyal, A; Hemming, NG; Hanson, GN; Broecker, WS. 1995. Evidence for a higher pH in the glacial ocean from boron isotopes in foraminifera. Nature, 373, 234–236. [abstract]