ホウ素同位体比から大気中の二酸化炭素濃度を復元する
Hemming and Hanson (1992)によると、炭酸塩鉱物のホウ素同位体比から、その鉱物が形成されたときの海水のpHが見積もれる。海水のpHは海水中の重炭酸イオン濃度と関係しており、その値は大気中の二酸化炭素濃度によって決まっている。すなわち、大気中の二酸化炭素濃度まで見積もれる可能性がある。
カリフォルニア大学のSpivack et al. (1993)は、海底堆積物を分析して、このアイデアを実行に移した。彼らは、ODP 803Dで採集された堆積物コアから、間隙水と有孔虫化石を抽出し、それぞれのホウ素同位体比を測定した。
間隙水のホウ素同位体比はほぼ一定で約+34‰だった(図1)。ところが有孔虫化石のホウ素同位体比は、古い時代のものほど同位体比が小さくなっていた(図2)。
これらから、Spiovack et al. (1993)は、2100万年前の海水のpHは7.4で、現在の8.2より酸性だったと見積もった。このことから、当時の大気中の二酸化炭素濃度は現在より4.5倍も高かったことが示唆される。
文献
Sanyal, A; Hemming, NG; Hanson, GN; Broecker, WS. 1995. Evidence for a higher pH in the glacial ocean from boron isotopes in foraminifera. Nature, 373, 234–236. [abstract]
Spivack, AJ; You, CF; Smith, HJ. 1993. Foraminiferal boron isotope ratios as a proxy for surface ocean pH over the past 21 Myr. Nature, 363, 149–151. [abstract]