地球温暖化問題にどう取り組むべきか

人類が直面する最大の課題は、発展途上国の人口の急増である。1960年代までは、農地の拡大による食糧増産が、人口増加を支えてきた。1960年以降は、農地拡大ではなく、農薬や肥料の散布、灌漑、品種改良が、食糧増産をもたらし、人口増かを可能にした。2050年の世界人口は100億人と予測され、それに見合う80%の食糧増産が求められる(Evans, 1999)。
地球温暖化が進むと、海水準の上昇により農地は消失し、地下水水位の低下や河川の渇水も起こる。地球温暖化だけでも、食糧生産を低下させるに十分である(Rosenzweig and Parry, 1994)。さらに、都市化、肥料の原料になる地下資源の枯渇、水資源の枯渇が、食料生産を低下させる。
さて、地球温暖化問題に対する人々の認識には、楽観論と悲観論とがある。
最も楽観的な人々は、“気候変動はいつの時代にも起こるので、敢えて温暖化防止に取り組む必要はない”と言う。そこまで楽観的でないが、“気候変動は人間社会にプラス要因とマイナス要因があって、どちらか判断できないので静観して研究の進展を待つ”という人々もいる。アメリカ政府はこの立場を鮮明にし、京都議定書の批准したヨーロッパ各国から反感を買る。
一方、将来の気候変動に悲観的な立場にたつ人々は、“人間活動が生態系のバランスを後戻りができないほどに崩してしまったので、今すぐにでも安定な状態へ戻すべきだ”と訴える。しかし、地球史的にみると、気候は必ずしも安定ではなく、何回もの大変動を繰り返している。“人間活動が地球環境に〝後戻りできない危機〟をもたらしていると”いう意見には、説得力はない。しかし、あまりにも急激な気候変動には生態系の適応が追いつけなかったことも確かなので、変化を緩めるべきだとする意見には、科学的に根拠がある。しかし、どれだけ変化を弛めれば被害が無くなるかを示せないので、大きな行動を促しにくい。
千年持続学の立場から地球温暖化を見ると、変化のスピードよりも、“地球の気候の安定したとき、100億人を越える人口を維持できるか”が重要である。将来、大気中のCO2濃度が現在の4倍に達する。その時、人類は、恐竜の繁栄した白亜紀のような温暖な気候に適応しなければならない。人口増加により、さらに食糧増産が必要だが、肥料・農薬・灌漑などは持続可能ではない。気候変動が食料生産に与える影響は、楽観視できない。
文献
Rosenzweig, CE; Parry, M. 1994. Potential Impact of Climate Change on World Food Supply. Nature. 367, 133–138. [abstract]