縞状鉄鉱床の成因

クラウドとその後継者たちは、火成活動のほとんどない安定大陸の陸棚に大規模な縞状鉄鉱床(BIF; banded iron formation)が形成されていることを重視しました。ほとんどの研究者は、鉄は陸上の岩石の風化か、海底の熱水活動でマントルから供給されたかのどちらかと考えていましたが、いずれにしても安定陸棚まで運ばれてくるためには水に溶けやすい状態だったはずです。そのためには鉄は還元的な二価鉄イオンFe2+である必要があり、海水が還元的だったと見なされたのでした(たとえば、Klein and Beukes, 1992)。
一方、大本らは、縞状鉄鉱床は海洋のいたるところが還元的である必要はなく、一部の海盆で海水が安定成層して還元的な環境が実現したと考えました。
縞状鉄鉱床の生成モデル (大本, 1993)
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縞状鉄鉱床の生成モデル (大本, 1993)
文献
Klein, C; Beukes, NJ. 1992. “Proterozoic iron‐formations”. Proterozoic Crustal Evolution. Condie, KC, ed. Amsterdam, Elsevier Scientific Publishing, 383–418.
大本洋. 1993. 大気はいつ酸素に富むようになったか? 科学. 64, 360–370.