クラウドの作業モデル

クラウド(Preston E. Cloud)。
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クラウド(Preston E. Cloud)。
カリフォルニア大学のクラウド〔Preston E. Cloud, 1905–1991, アメリカの地質学者〕は、地球と生命の歴史における草分け的な研究者として有名です。彼は、パレオバイオロジー*の創設に多大な貢献をしています。なかでも重要な研究は、初期地球に関する作業モデルです。
パレオバイオロジー (paleobiology)
過去の生物に関する学問。
似た名前の学問に〝古生物学(paleontology)〟があるが、これは化石の記載・分類を主とし、むしろ地質学に近い。
クラウドは、〝地球の歴史区分は、地球で起こった重要な事件に基づくべきだ〟と考えました。彼による地球の歴史は、以下のようなものです:
クラウドの作業モデル。Cloudズーム
クラウドの作業モデル。
Cloud
  1. 46億年前微惑星の集積で地球が形成されました。
  2. 35~36億年前に最古の岩石が残されるようになりました。現在発見されている最古の岩石は40億年前ですが、クラウドが論文を発表した1968年や1972年にはまだ発見されていませんでした。彼は、46億年前から、最古の岩石が残されるようになる35~36億年前までを〝冥王代〟と呼びました。
  3. ;32億年前ごろまでに、化学進化によって最初の生命が誕生しました。この段階で生命はみずからエネルギーを獲得し、生存に必要な物質を合成するようになりました。しかし、酸素(O2)を発声する光合成生物は出現しておらず、地球表層には分子状の酸素はないと考えられました。
  4. 26億年前から22億年前ごろにかけて、光合成によって酸素が大量につくられました。しかし、酸素は鉄と結びついて縞状鉄鉱床(BIF)になったたため、地球環境の酸素存在度は低く押さえられていました。
  5. 22億年前から19億年前にかけて、大気は酸化的なものへと遷移していきます。
  6. 19億年まえから6.8億年前にかけては、生物圏は原核生物の時代から真核生物の時代へと移り変わり、大気は酸化的になって赤色砂岩が堆積するようになりました。
  7. 6.8億年前から現在までは、酸素濃度はさらに増加し、生物圏は真核生物から後世動物が主役を占める時代へと移り変わっていきました。クラウドは、これ以後を〝顕生代〟と呼びました。
このようにクラウドは、〝地球表層環境が還元的な状態から酸化的な状態へ遷移するにつれて、堆積岩の特徴が移り変わり、生物圏が進化した〟と考えました。