ウォーカーらの段階的酸化説

南アフリカ・ベイサル礁(Basal Reef)の、ウラニナイトの岩粒。Walker et al.  1983
画像準備中
南アフリカ・ベイサル礁(Basal Reef)の、ウラニナイトの岩粒。Walker et al. 1983
先カンブリア紀の大気と水圏で、還元(●)/酸化(■)的な環境を示す、堆積物上の指標。Walker et al.  1983ズーム
先カンブリア紀の大気と水圏で、還元()/酸化()的な環境を示す、堆積物上の指標。
Walker et al. 1983
ウォーカーらの段階的進化モデル。Walker et al.  1983ズーム
ウォーカーらの段階的進化モデル。
Walker et al. 1983
クラウドの作業モデルは、1970年代にウォーカーらによって詳細に検討されました。
彼らは、縞状鉄鉱床と赤色砂岩の堆積年代をそれぞれの地域ごとに個別に調べ上げました。その結果、縞状鉄鉱床は、19億年前より前に形成され、赤色砂岩は22億年前以降に形成されたことを確かめました。
彼らはさらに古土壌や砕屑性ウラン鉱床についても形成年代を調べています。古土壌とは、地質時代に地球表層で形成された土壌のことです。地球表層物質には鉄が含まれていますが、酸化的な環境では鉄は酸化鉄鉱物として存在するため、風化作用で溶脱しにくく濃集しますが、還元的環境では風化にともなって失われてしまいます。そこで、古土壌に鉄が濃集しているかどうかで当時大気が酸化的だったか還元的だったか定性的な推定が可能です。
逆にウラニナイトというウラン鉱物も酸化的な環境では水に溶けて失われやすいのですが、還元的な環境では安定で砕屑粒子として堆積物中に残されます。そこで砕屑性ウラン鉱床も大気が酸化的なのか還元的なのかを把握する重要な手がかりと見なされました。
ウォーカーらのとりまとめによると、縞状鉄鉱床や砕屑性ウラン鉱床はだいたい19億年前より古い時代に形成されており、酸化的な環境を示唆する古土壌や赤色砂岩は22億年前以降に形成されていることが示されました。
ここで22億年前から19億年前にかけて還元的な指標と酸化的な指標が共存していることは注目に値します。彼らはこれを次のように解釈しました。
まず19億年前以前に縞状鉄鉱床が大規模に形成されていたことから、当時、海水が還元的で2価の鉄イオンが大量に溶けていたと考えられます。さらに、陸上で堆積した砕屑性ウラン鉱床から、当時まだ大気も還元的で酸素が乏しかったことがわかります。
一方、19億年前以降には縞状鉄鉱床がないことから、海水は酸化的になったことがわかります。また、赤色砂岩の形成から、大気も酸化的になったことがわかります。
中間の22億年前から19億年前にかけては、海洋が酸化的になりました。海洋が酸化するときは、まずストロマトライトが形成される浅層海水が酸化的になり、続いて深層海水が酸化的になったと、ウォーカーらは考えています。
文献
Walker, JGG. 1977. Evolution of the atmosphere. New York, Macmillan.
Walker, JGG; Klein, C; Schidrowski, M; Shopf, JW; Stevenson, DJ; Walter, MR. 1983. “Environmental evolution of the Archean‐Early Proterozoic Earth”. Earth’s Earliest Biosphre. Shopf, JW, ed. Princeton, Princeton University Press.