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金星の動きと形の変化
中学校理科授業における実践


双眼鏡を使ってみませんか

 でき上がったホームページに関して、すぐに話し合いがもたれた。このホームページを生徒がみたら、どう思うだろうか。もっと工夫すべき点はないか。受け手側の意見を聞く必要があったのだ。

 「その日、その日の金星の形がわかるようになったのはすごいでしょう」

 と川上がきりだす。

 「これはIT革命のおかげですね。」

 と山田が応えたが、二人の間に大きな温度差があった。山田は日頃の授業の経験から、いつでも、どこでも、全員が取り組めることにこだわっていたのである。

 「レンズを組み合わせて、手作りで望遠鏡はできませんか」

 「うーん。天体望遠鏡を作るのは、結構大変じゃないか?」

 子どものころに、天体望遠鏡の自作を試み、うまくいかなかった思い出のある川上はこの提案に疑問を投げかけた。

 「双眼鏡ではだめですかね?」

 「見えるかもしれないから試してみる価値はあるねえ。ホームセンターとかに置いてある安い双眼鏡で見えるといいなあ」

 「クラス全員が共有できる体験をもつ・・・どうしても必要なら、なんとかしたいね」

 さっそく近くのホームセンターへ行ってみると、一番安い8倍の双眼鏡が2980円。10倍のものが3980円だった。とりあえず、その場で一つづつ購入して、金星を観察してみることにした。

 しかし、双眼鏡を通してみた金星は、天体望遠鏡の画像とはほど遠く、かろうじて円形でないことがわかるかどうかであった。これから金星はもっと大きくなるから、2月下旬には形の確認ができるかもしれない。そう考えてひとクラス分の40個、すぐ手にはいるか問い合わせた。納期まで時間がかかるなら授業に間に合わなくなる。ありがたいことに在庫は充分あり、4〜5日で入荷するという。しかも40個まとめて購入するということで、1個3500円にまで値引きしてもらえることになった。これで一つ観察に弾みがついた。


[はじめに]
[1.金星の満ち欠けを観察しよう]
[2.双眼鏡を使ってみませんか]
[3.天体望遠鏡はすごい!]
[4.指導計画]
[5.双眼鏡とにぎりこぶし法でチャレンジ]
[6.天体望遠鏡の組み立てキットがあった]
[7.天体望遠鏡を作る]
[8.やせ細った金星]
[9.まとめの授業]
[10.生徒の反応]
[11.授業をおえて]
[おわりに]