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金星の動きと形の変化
中学校理科授業における実践


天体望遠鏡の組み立てキットがあった

双眼鏡による金星の観察の授業が中学校で始まる一方で、生徒たちを交えた天体望遠鏡観察の時のように、木星や土星もくっきり見えたらどんなにかすばらしいと川上は考えていた。まだホームページには金星の画像しかないが、将来的には木星、土星、火星や月の画像も掲載していけば中学校現場で役に立つのではないか。しかも、願わくば金星の場合と同様に、それらの惑星の動きがわかるようなものを。それには、新たな機材を揃える必要があった。

すぐに、天体望遠鏡とCCDカメラの接続用のアダプターについて、川上は天体望遠鏡を扱っている業者に電話で問い合わせをすることにした。そのとき、偶然にも天体望遠鏡の自作にまで話がひろがった。

「夏休みのイベントで、親子で天体望遠鏡を自作する企画があり、子供達にはたいへん好評になっていますよ」

「へー。手軽に天体望遠鏡を作ることができるんですか」
「なんでしたらイベントの担当者をご紹介しましょうか」
「ぜひ、お願いします」

そういって電話を切ったあと、すぐにインターネットの検索で「天体望遠鏡の自作」と入力してみた。

いくつかのホームページをわたりあるいているうちに、天体望遠鏡の自作キットを販売している業者が見つかった。商品リストを見ると、なんと直径4センチの屈折式望遠鏡が1台2500円と書いてある。ホームセンターで取り寄せた10倍の双眼鏡よりずっと安いではないか。しかも、倍率は35倍。これなら木星の衛星や土星の輪までみえることになる。あまりの安さに大きなショックを受けた。

「しまった!もう少し早く知っていたら・・・こちらを購入したのに」

そう思ったがあとの祭りだ。すぐに業者に電話を入れ、とりあえず2台購入した。

商品が届くと、自宅に持ち帰り小学校4年生の子どもといっしょになって、その日のうちに望遠鏡を組み立てる。そしてすぐ表へ出て木星、土星をみる。確かに衛星までくっきり見える。土星の輪も充分みえる。こんなに安い望遠鏡でここまで見えるとは・・・

「これはいける。授業でも使うっきゃない。」

手痛い出費であるが、そう腹に決めた。翌日朝一番に在庫を問い合わせ、40台注文をだす。

この話を山田にすると、双眼鏡について生徒たちの意外な反応が返ってきた。生徒たちの話によると、双眼鏡では金星の形がはっきり確認できないというのだ。この話を聞いて川上はちょっとがっかりした。

「でも、天体望遠鏡を作れるなんて、夢のような話じゃないですか。これはきっと手ごたえのある授業になりますよ」

山田はそう言って川上を元気づけた。


[はじめに]
[1.金星の満ち欠けを観察しよう]
[2.双眼鏡を使ってみませんか]
[3.天体望遠鏡はすごい!]
[4.指導計画]
[5.双眼鏡とにぎりこぶし法でチャレンジ]
[6.天体望遠鏡の組み立てキットがあった]
[7.天体望遠鏡を作る]
[8.やせ細った金星]
[9.まとめの授業]
[10.生徒の反応]
[11.授業をおえて]
[おわりに]