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金星の動きと形の変化
中学校理科授業における実践


天体望遠鏡を作る

 注文した天体望遠鏡製作キットが中学校に届いた2月下旬に、第2回目の授業が行われた。3年生は3月9日に卒業式を迎える。3時間目のとりまとめの授業は、3学期最後に予定されることになる。

 第2時間目の授業ではまず、双眼鏡による観察結果の交流会がもたれた。一人の生徒が自分のスケッチを黒板に描いて見せた。1回目は、1月上旬で半月よりちょっと太ってみえた。2回目は、2月上旬で、サツマイモのような形だったという。3回目には三日月のように欠け、中央部が輝いていたという。

 しかし、双眼鏡によって、金星の形が見えた生徒は全体の3分の1ぐらいであった。山田は、さらに観察を続けるよう指導したが、生徒のなかにははたしてほんとうに金星の欠けた様子が観察できるのか疑問に思うものもいたようであった。そこで、山田は次のように話題を切りかえた。

 「先日、天体望遠鏡の組み立てセットが全員分届いたので、今日は金星の観察のために組み立てることにします」

 そういって、手作り望遠鏡キットのはいった大きな段ボールを差し出した。生徒たちは、一斉に大きな歓声をあげた。と同時に、どうしてそこまでやるのかといった反応も交じって教室の中はざわめきが止まらない。山田は、生徒たちにどうしてもくっきり欠けた金星の姿を観察して欲しいという願いから、岐阜大学の川上に天体望遠鏡を提供してもらったことを説明した。 天体望遠鏡の製作が始まる。特に対物レンズと取り付け方に注意する必要がある。対物レンズの取り付けるところまで、こまめに指導を行う。あとは、設計図に従った生徒たちの作業の進行にまかせた。作業が始まって約30分、授業時間は終わりの時間に近づいた。時間内にできた生徒はたった二人。休み時間になっても生徒たちは製作作業を続ける。だが、間に合わない。そこで、下校後自宅で制作し、観察をしてもらうよう話をし、授業はうち切った。ものを作ることに慣れていない生徒が結構多かったのだ。


[はじめに]
[1.金星の満ち欠けを観察しよう]
[2.双眼鏡を使ってみませんか]
[3.天体望遠鏡はすごい!]
[4.指導計画]
[5.双眼鏡とにぎりこぶし法でチャレンジ]
[6.天体望遠鏡の組み立てキットがあった]
[7.天体望遠鏡を作る]
[8.やせ細った金星]
[9.まとめの授業]
[10.生徒の反応]
[11.授業をおえて]
[おわりに]